国際海洋情報(2021年10月20日号)

1.比でプラごみを建築資材にリサイクル

国連環境計画によれば、年間約3億トンのプラスチックごみが世界全体で発生しているうえに、パンデミックの影響でプラスチック製のマスク・手袋・持ち帰り食品用の使い捨てプラスチック容器・オンラインショッピング増加に伴うプラスチック製の緩衝材の増加で、プラスチックごみの量はさらに増加している。オックスフォード大学による研究では、世界の海洋ごみの8割は海洋にアジア地域の河川から流れ込んでおり、中でもフィリッピンはその約1/3を占めている。比政府はこうした現状に対して、有効なプラスチックごみ減少・収拾のための政策的な手段を講じていないが、プラスチックフラミンゴと呼ばれるリサイクル事業者のグループは、プラスチックボトル・使い捨てプラスチックの包装材などを回収して、プラスチック製の建設材にリサイクルする活動を進めており、これまでに100トン以上のプラスチックごみをリサイクルしたが、今後、他のNGOと協力して、台風で損傷した家屋をこのリサイクルした建材で修繕する事業の実施も検討している。

原文

October 25, 2021, Reuters


2.英国:洗濯水に含まれるマイクロファイバーによる海洋汚染の防止

英国国会の有志議員が海洋に流れ込むマイクロプラスチックの35%は、洗濯水に含まれるマイクロファイバーであることを踏まえ、マイクロファーバーの海洋流出を防止するための規制案を提案する報告書を発表したところその対策の概要は以下のとおり。①拡大生産者責任(Extended Producer Responsibility: EPR)の枠組みを2023年から衣料製品にも拡大する。②全ての新品の家庭用・業務用洗濯機にマイクロファイバーを補足できるフィルターを設置することを義務付ける法律・基準を作成し、2025年から義務化する。③洗濯水や排水処理施設から流れ出すマイクロファイバーが環境に与える影響について、国民に対する知識啓もう活動を重点的に実施する。④洗濯機・フィルター製造事業者が、マイクロファイバーごみの正しいリサイクル・処分方法を、洗濯機の使用者に対して周知することを義務付ける。⑤英国の事業者が事業性のあるマイクロファイバーリサイクル事業を行えるように、Innovate UK基金を通じて、マイクロファイバーのリサイクル技術の開発に対し、インセンティブを与えて奨励する。

原文

October 26, 2021, CMS Law-Now 


3.UNEP:Emission Gap Report 2021を発表

10月26日、国連環境計画(UNEP)は、標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①地球の気温上昇を産業革命以前と比較して1.5℃以内に抑制するというパリ協定の目的を達成するためには、同協定締結後、各国が約束した自主的な国家排出削減目標(NDCs)に従って排出されるGHG総量と比較して、更に55%を削減しなくてはならないが、COP 26を前に、各国が排出削減目標を引き上げ、再提出された新しいNDCsによっても、2030年までにわずかに7.5%分の削減量が追加されるにすぎないことがわかり、パリ協定の目標達成からは大きく乖離していることが分かった。②この結果、改訂後のNDCsに従えば、2030年までに地球の気温が産業革命以前と比べて、2.7℃上昇することが予測される。③2050年までに炭素中立を果たすことを各国が合意し、その目標達成のためにしっかりとした2030年までのGHG排出削減結果を作成すれば、2030年までの気温上昇を2.2℃に抑制することができる。

原文

October 26, 2021, UNEP


4.UMAS:A Strategy for the Transition to Zero-Emission Shipping

英国ロンドン大学UMASがGetting to Zero Emissionのために標記報告書を作成し、発表したところその概要は以下のとおり。①海運が化石燃料依存から脱却するのは可能であるが、現在のエネルギーミックスに関する政策を大幅かつ迅速に変更する必要がある。②一方で、 風力の利用などによる既存の技術を用いた船舶の運航効率の最大化が必要であり、効率化なしでは、ゼロエミッションへの移行はより割高で困難かつ混乱することになる。③IMOにより世界的な規制が変更される前の呼び水として、海運業界のリーダーシップ・連携・早い段階での投資が初期段階においては重要な役割を果たす。④また、各国レベル・地域レベルなどあらゆるレベルの規制改革がIMOの政策転換を補完・促進することになる。⑤大規模なゼロエミ燃料(SZEF)への移行には、新造船だけでなく、既存の船舶についてもSZEFが使用できるような改修が必要となる。 

原文

October, 2021, UMAS 


国内ニュース

1.日本郵船:アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の実証事業を開始
原文

10月26日、日本郵船


Webinar情報

1.COP 26: Virtual Ocean Pavilion
October 31-November 12
https://cop26oceanpavilion.vfairs.com/en/registration-form

2.UN Conference Ocean Decade Kickoff Conference for the Western Pacific
November 25-26
https://www.ioc-westpac.org/decade-kickoff-conference/registration/