国際海洋情報（2021年10月14日号）
１．EU排出権取引制度：ギリシャが欧州委員会に現実的な対応を求める
欧州委員会はこの夏に海運をEUの排出権取引制度の対象とし、2023年から適用を開始し、3年間の経過期間を経て、2026年から本格適用することを提案しているが、EUの船舶の58%を保有するギリシャの首相は、欧州委員会委員長に書簡を送り、海運をEU排出権取引制度の対象に含めるにあたって、現実的な対応を取るように申し入れたところその概要は以下のとおり。①海運会社が排出権を購入することによって得られる収入を加盟国に還元し、海運の脱炭素化のための技術開発などに使うべき。
②現実的・建設的な解決策を得るため、欧州委員会は、直ちに同国並びに海運業界と協議すべき。③排出権取引制度は、競争条件の不均衡が発生しないように、厳格に適用されるべき。
原文
October 20, 2021, Reuters
２．EU首脳会議：エネルギー危機対策の詳細は閣僚級会合に持ち越し
EU首脳は10月21日午後、現在進行中のエネルギー価格の高騰について、先週に欧州委員会から提案された様々な短期的・中長期対策について討議を行う予定。短期的な対策としては、既に仏・伊・西など6か国で導入されている各家庭に対する緊急収入支援・各企業に対する国家補助・特定の税金の減税などが考えられるが、EU首脳は、炭素中立社会への移行方針は堅持しつつ、エネルギー価格の水準を家庭や企業にとって負担可能な水準に維持するための中長期的な対策について、さらに検討するよう欧州委員会と加盟各国に要請する見込み。首脳は欧州投資銀行に対しても、エネルギー価格の乱高下の影響を少なくするために、エネルギー転換を促進するための投資を強化するように求める予定。しかし、今回の首脳会合では結論を先送りし、具体的な議論は10月26日に開催される予定のエネルギー問題担当閣僚会合に先送りする見込み。
原文
October 21, 2021, Euractiv
３．COP 26：中・印を含む新興国が先進国を非難する共同大臣声明を発表
31日から開催されるCOP 26を前に、中国・インド・エジプト・インドネシア・パキスタン・サウジアラビア・ベトナムなど24の新興国の大臣が、（先進国も開発途上国も含めて）すべての国が今世紀半ばまでに炭素中立達成を目標としようとする先進国の方針に反対する声明を発表した。声明では、パリ協定の合意の内容を勝手に書き換え、2050年炭素中立という目標をすべての国に対して押し付けるのは、不公平で気候変動に対する公正さにも欠けるとしている。こうした先進国・途上国共通の目標を押し付ける代わりに、まず先進国が2030年までに完全な脱炭素化を達成することによって、途上国のエネルギー需要に応え、途上国に経済発展する時間的余裕を与えるべきであると主張している。パリ協定では、今世紀の後半に人間により排出されるGHGと（森林や海洋に）吸収されるGHGの量の均衡を取るとされているが、これは単なる精神的な目標で、すべての国が目指すべき目標ではないと主張している。
原文
October 20, 2021, Climate Home News
４．北極海においても進むマイクロプラスチックによる海洋汚染
Science of the Total Environmentalに発表された「シロイルカに捕食される魚の胃の中のマイクロプラスチック：ボフォート海における食物連鎖に関する評価」と題する研究によれば、シロイルカのえさとなる５種類の魚を調べたところ、その21%の胃から、マイクロプラスチックの破片が確認され、その８割が洗濯の際に洗濯水とともに流れ出すマイクロファイバーだった。小さなバクテリアがマイクロファイバーに付着することによって、魚が餌と誤認してマイクロファイバーを食べるものと考えられる。研究者は先住民が捕獲したシロイルカを調査したが、シロイルカは餌としての魚を通じて、年間14.5万個のマイクロプラスチックを体内に取り入れていると考えられる。最近の研究では、北極海の深海底にプラスチックが堆積している可能性があり、シロイルカは水深1000ｍ以上の深海底に長い時間いることが分かっている。
原文
October 21, 2021, CTV News
国内ニュース
Webinar情報
１．UN Conference Ocean Decade Kickoff Conference for the Western Pacific
November 25-26
https://www.ioc-westpac.org/decade-kickoff-conference/registration/
