国際海洋情報(2021年10月13日号)
1.大手荷主連合が2040年までに使用船舶をゼロ炭素燃料船に限定することを宣言
アマゾン・イケア・ミシュラン・ユニリバーなど世界的な大手荷主企業8社からなるゼロエミ船実現のための荷主連合(Cargo Owners for Zero Emission Vessels: COZEV)は、パリ協定の目標である地球の気温上昇を産業革命前と比較して1.5℃以内に抑制するため、2040年までにこれらの企業の貨物の海上輸送をゼロ炭素燃料船に限定することを目指すことを宣言した。この宣言により、海運企業やゼロ炭素舶用燃料製造事業者による投資が加速化されることを期待している。以上の目的を達成するため、同荷主連合は、運航面・技術面で船舶のエネルギー効率を最大化したうえで、ゼロ炭素燃料の大規模な導入について明確な計画を持つ海運会社と連携し、さらには、こうした連合の目的を理解し、目標の実現を支援することができる3PL事業者とも必要に応じ連携していく。
原文
October 18, 2021, COZEV
2.英国政府:炭素中立戦略を発表
英国政府は、10月19日、炭素中立戦略を発表したところ海運・航空分野の概要は以下のとおり。①英国首相の打ち出した「脱炭素化のための10大政策」の一環として、英国政府は、ゼロエミッション船の開発と港湾の脱炭素化技術開発の実証試験を促すために、本年3月にClean Maritime Demonstration Competition (CDMC)を公募し、55の事業が採用され、英国内外の208の企業が参加して、3350万ポンド(約53億円)が投資されて、2022年3月までに実証試験等が実施されることとなった。②このCDMC公募の成功を踏まえて、運輸省内に新設したUK Shipping Office for Reducing Emissionsが、この事業を複数年度の事業に拡大し、ゼロエミ船と海運脱炭素化に必要なインフラの技術開発・実証試験を促進する。③ゼロエミ航空輸送を世界的にリードし、経済的に競争力のある持続可能な航空燃料(SAF)の開発を進めるために、政府が1.8億ポンド(約280億円)支援して、SAFの製造施設を建設して、2030年までに航空機燃料の1割をSAFに転換することを目指す。
原文
October 19, 2021, 英国政府
3.海運業界・IMOに対して強まるESG金融の圧力
COP 26のコンサルタントを務めるボストンコンサルティンググループ(BCG)のパートナーが標記について語ったところその概要は以下のとおり。①ESG (Environment・Social・ Governance)経営の要請の高まりを受けて、金融機関から海運会社への貸し付けに当たっても、海運会社に対し、CO₂削減に関する計画の策定を求める圧力が強まっている。②BCGの予測では、海運の脱炭素化を達成するためには、2030年までに5000億ドル、2030年から2050年までに1.9兆ドルの投資が必要で、そのうち、1.7兆ドルは代替燃料の開発に向けられる見込み。③ESG基準に基づく融資額は2030年までに海運業界への貸付総額の8割に達する見込み。④2050年までにCO₂排出量を半減するというIMOの現在の目標では、金融機関としてもESG融資のための健全なバランスシートを保つことはできないので、IMO加盟国にさらなる目標の引き上げを求めていく。
原文
October 19, 2021, Reuters
4.UNEP:2030年の化石燃料生産量は1.5℃目標達成許容限度量の2倍以上
UNEPは2019年から世界の主要化石燃料生産国15か国が計画している石油・石炭等の化石燃料の生産量と、パリ協定の目標を達成するために許容できる最大生産量との格差を分析する報告書を作成しているが、10月20日発表された2021年の報告書の概要は以下のとおり。①2030年に主要15か国が生産を計画している化石燃料の生産量は、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑制するために必要な生産許容量の2.1倍、2℃以内に抑制するために必要な生産許容量の1.45倍に達し、生産予定量とパリ協定の目標達成のための生産許容量との格差は減少していない。②個別には、1.5℃目標を達成するために必要な生産許容量と比べて、石炭は3.4倍、石油は1.57倍、天然ガスは1.7倍の生産量が見込まれる。③天然ガスは2040年まで長期的に生産拡大が続くことが予想される。④15か国は、パンデミック発生以来、再生可能エネルギーへの投資額より多額の3000億ドル以上を化石燃料生産のために投資した。
原文
October 20, 2021, UNEP
Webinar情報
1.UN Conference Ocean Decade Kickoff Conference for the Western Pacific
November 25-26
https://www.ioc-westpac.org/decade-kickoff-conference/registration/