国際海洋情報(2021年10月8日号)

1.米国政府:7か所の大規模洋上風力発電施設の整備を計画

バイデン大統領は、2030年までに30GWの洋上風力発電施設を建設して、1000万戸以上の家庭に電力を供給することにより、7800万トンのCO₂排出を削減し、7.7万人の新たな雇用を創出する目標を立てているが、担当の内務大臣は、メイン州・ニューヨーク州・大西洋岸中部・カロライナ州・カリフォルニア州・オレゴン州・メキシコ湾の7か所に大規模洋上風力発電施設を建設するための入札を2025年までに実施すると10月13日発表した。洋上風力発電施設の他にも、内務省は連邦政府の他省庁とも連携して、2025年までに陸上の風力・太陽光再生可能発電施設を最低でも25GW建設するとも発表した。漁業団体は、計画されている洋上風力発電施設を米国東岸に建設することにより、ホタテ貝やロブスターなどの高額な水産物の養殖が難しくなるとしており、環境団体も洋上風力発電の大きなタービンによって、多くの鳥類が死ぬ可能性があるとしている。

原文
October 14, 2021, AP

2.世界エネルギー危機:中国・EUの対応

石炭の供給量の不足と天然ガス価格の高騰によってもたらされている世界的なエネルギー危機は、アジアや欧州諸国の政府にとって最重要課題となっているが、停電や停電による工場の生産能力の低下をもたらしている。冬季が近づく中で、電力・エネルギー料金の高騰を抑制するために、EUは今週の首脳会会合で、加盟国諸国に上限価格制度や政府補助の導入を緊急措置として認めることを検討する。世界の工場である中国も、エネルギー危機の影響を最も受けており、最近の数年間は米中貿易紛争のあおりを受けて、米中間のLNG貿易量は現状維持水準にとどまっていたが、中国石油化工や中国海洋石油集団は、米国のLNG輸出事業者とLNGの長期購入契約について交渉に入っている。こうしたエネルギー危機の中で、中国をはじめいくつかの国は、石炭依存にかじを切っており、中国は石炭の増産体制に入っているが、石炭の先物価格は高騰を続け、今年に入ってから3倍に値上がりしている。

原文

October 15, 2021, Reuters


3.G7金融大臣会合:途上国支援・炭素課税について検討

10月13日、ワシントンで開催されたG7金融大臣・中央銀行総裁会合の環境部分の概要は以下のとおり。①COP 26を数週間後に控え、議長国の英国はIMFが提案しているResilience and Sustainable Trustに資金を拠出することを表明し、他国にも拠出を求めた。この信託は、IMFの特別引出権(SDR)準備金を活用して、低所得国や脆弱な中所得国が健康や気候変動問題に取り組み、環境に配慮した持続可能な経済成長ができるよう支援することを目的とする。②CO₂削減のための炭素課税について、各国の制度の整合性をどのように取り、各国がパリ協定に従って、気候変動問題に取り組む中で、carbon leakageが発生しないように、国際的に取り組むことについて、共同で検討を開始する。

原文

October 14, 2021, Edie


4.生物多様性COP 15昆明準備会合:昆明宣言を採択

標記会合の成果の概要は以下のとおり。①途上国における生物多様性保全活動を支援するため、中国政府が2.3億ドルを拠出して、昆明生物多様性基金を創設。日本も日本生物多様性基金に1700万ドルを追加拠出することを表明。②地球環境ファシリティ(GEF)もUNDPとUNEPと協力して、来年のCOP 15で「2020年後の生物多様性の枠組み」が合意されることを前提として、途上国が新枠組を実施するのを迅速に資金面・技術面で支援することを表明。③仏大統領は、気候変動対策資金の30%を生物多様性の保全のために使用することを約束。EUも生物多様性のための海外資金支援を倍増することを約束。合計で12兆ユーロ(約1600兆円)の資産を運用する投資家の連合も、投融資活動を通じて、生物多様性の保護・回復を目指すことを約束。なお、次回準備会合は来年御1月に開催され、来年の4月25日から対面でCOP 15が昆明で開催される予定。

原文

October 13, 2021, 国連


Webinar情報

1.UN Conference Ocean Decade Kickoff Conference for the Western Pacific
November 25-26
https://www.ioc-westpac.org/decade-kickoff-conference/registration/