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週刊国際海洋情報(2021年10月3日号)今週の10大ニュース

1.UNSG:安保理で気候変動適応対策と平和構築との関連性について演説

標記演説の概要以下のとおり。①気候変動と環境管理の失敗によって、2020年に移住を余儀なくされた人々の数は、3000万人にのぼり、このうちの9割は気候変動に対応する能力が最も少ない国から出ている。さらにこれらの気候難民を受け入れている国の多くもまた、気候変動の影響を受けている途上国で、受け入れ国の国民と予算を圧迫しており、気候難民の問題は多くの周辺国に問題を飛び火させている。②気温上昇を1.5℃以内に抑制するためには、2030年までに全世界的にGHGの排出を45%削減する必要があり、各国はCOP 26を前にしてNDCsを野心的なものに見直すとともに、その目標を達成するために具体的な対策を直ちに開始する必要がある。③こうした気候変動緩和対策とともに、気候変動適応・防災措置にも取り組む必要があり、気候変動対策に関する資金の半分を回すべきである。気候変動適応対策や防災対策なしでは、世界の平和も安全保障も維持できない。

原文
September 23, 2021, 国連

2.異常気象に晒されるリスクに関する世代間の不公平

地球温暖化が進む中で、熱波などの異常気象の回数・強度・継続期間・被害地域の広さなども今後数十年にわたり継続して上昇し、若者たちは、年を取った世代に比べて、一生の間で異常気象に遭遇する回数が増え、こうした世代間の不公平が、若者たちの気候変動問題に関連する抗議行動を促し、最近の気候変動問題に関する訴訟においても取り上げられている。研究では、2020年に生まれた子供は、現在の気候変動に関する政策が維持された場合、1960年に生まれた大人と比べて、一生の間に異常気象に遭遇する確率が2倍から7倍に増えることが明確となり、若者世代の安全性への脅威を減らすためには、急激なGHG排出の削減が必要となることが分かった。

原文

September 26, 2021, Science


3.中国国内の電力供給不足・環境規制の強化により2021年の経済成長が下押し

9月28日、ゴールドマンサックスは、中国国内の深刻な電力供給不足によって、工業生産量が大きく落ち込むとして、2021年の同国の経済成長率の見通しを+8.2%から+7.8%に下方修正した。環境規制の強化と発電量の減少と電力価格の高騰によって、中国全土で工業生産が落ちており、いくつかの州では、住民に対して冬季の電力と暖房を保証しなくてはいけない状況となっている。ゴールドマンサックスによれば、中国の産業活動のうち最大で44%が電力不足の影響を受け、年間GDP 成長率に換算して、第3四半期に1%、第4四半期に2%の下押し効果があると分析している。中国の経済はすでに、不動産価格の下落・不動産大手の恒大産業の資金繰りの悪化の影響を受けており、第4半期の見通しは、中国政府による恒大産業救済方針や強化された環境規制をどの程度厳しく適用するかという対応によって、大きく上振れも下振れもする見込み。

原文

September 28, 2021, Reuters


4.国際海運業界団体がBWM条約の経験集積期間の延長をMEPCに提案

2017年9月8日に発効したバラスト水管理(BWM)条約においては、条約発効後、BWMSを実際に使用してみた結果を集める経験集積期間(Experience-Building Phase: EBP)が設置され、当該期間中に集められた情報をもとに、条約の見直しをすることが想定されている。EBPは具体的には、情報収集期間・情報分析期間・条約の見直し検討期間の3段階に分かれており、情報を体系的に収集するために、IMOは世界海事情報システム(GISIS)上にデータベースを設置している。IMOによって承認されたBWMSを適正に船舶に設置・使用したにもかかわらず、D-2規則に定める基準に合致しない排水を行った場合には、EBP期間中には、経過措置として、罰則を受けることはないが、EBPの期限が切れるとこうした経過措置は認められなくなる。一方で、条約発効後EBPのプロセスは当初予定したペースで進んでおらず、ほぼ3年間の遅れが生じている。条約発効時には、加盟国やPort Statesは十分な量の情報を取集し、IMO GISISにも十分な情報が集まる予定であったが、現状ではわずか5か国から約200隻分の情報しか提供されていないことから、次の情報分析の段階に進むのが困難な状況にある。以上のことから、国際海運業界団体としては、EBPの期間を最低でも2年間、2024年の秋まで延長することをMEPCに提案する。

原文

September 27, 2021, BIMCO


5.世界最大の洋上風力発電開発事業者が日本市場に参入

9月29日、スコットランドのエネルギー事業者のSSE社の子会社のSSE Renewables社は、2.08億ドルを投資して、日本の再生エネルギー事業最大手のパシフィコ・エナジー社と共同事業(SSE社の持ち分は80%)を立ち上げたと発表した。日本は脱炭素化とエネルギー自給率の向上の観点から、2030年までに洋上風力総発電量を10GW、2040年までに同30-45GWに拡大するという明確な国家目標を立てており、こうした日本の成長市場に参入することによって、SSE Renewable社の長期的な成長戦略を拡充・多元化することを支援する。SSE Renewable社は英国とアイルランドで現在7GW分の洋上風力発電事業を計画する最大の事業者で、全世界でも最も多くの洋上風力発電施設を建設中で、2020年代後半には、毎年、最低1GWずつ洋上風力発電能力を増加させて、2030年までに合計で年間30TWhの発電力を持つことを目指している。

原文

September 29, 2021, SSE


6.EUにおけるSAFs規制の強化により2050年までに航空運賃が8%上昇

欧州委員会は、2050年までの炭素中立を達成するために、2030年までに炭素の排出量を半減させるとし、航空分野についても、航空燃料のケロシンに対する非課税措置の撤廃・EU域内の航空輸送が対象となっている排出権取引制度について無料の排出枠の撤廃・EU域内の空港で給油される航空機燃料の一定割合を持続可能な航空燃料(SAFs)にすることを義務付けることなどを提案している。最後のSAFs使用義務だけでも、SAFsは既存のケロシンと比べて、2倍から5倍高いため、2030年までに航空機燃料コストを3%引き上げ、結果として航空運賃に対しても1%の上昇要因となると欧州委員会は見込んでおり、さらに、2050年までには、航空運賃を8%上昇させる影響を及ぼすと分析しているが、欧州の航空会社と航空利用客は当該負担増を受け入れる準備ができているとも欧州委員会の担当者は語っている。

原文

October 1, 2021, Euractiv


7.CSIS報告書:Russia’s Climate Gamble

戦略国際問題研究所(CSIS)が、ロシアの北極戦略に気候変動が及ぼすリスクを分析した標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①ロシアは経済的にも軍事的にも北極圏の開発を進めているが、気候変動がもたらすロシア北極圏の軍事施設に対する物理的な影響、世界的なエネルギー転換や脱炭素化の動きがロシア北極圏の資源開発に与える影響を本報告書では検討する。②ロシア政府は気候の温暖化はロシアの北極政策にとって好ましいものととらえており、ヤマルLNG事業の成功に続いて、北極海北航路の迅速な開発やヴォストク石油開発事業など新たな巨大事業に乗り出そうとしている。③ロシアはこうした新たな経済権益を守るために、新たな基地の建設を含む北極圏における軍事力の強化を図っており、軍事演習やミサイルの発射テストを増加させている。④しかし、北極海の温暖化は世界平均の3倍で進む一方、世界的な、特に欧州諸国の脱炭素化の動きが、ロシアの北極圏における資源開発・軍事戦略の将来的な成功に大きな影を投げかけている。

原文

September 24, 2021, CSIS


8.McKinsey:2050年までに主要産業のメタン排出を46%削減することが可能

9月23日、マッキンゼーが「メタン排出量の削減:いかにして(主要排出)5分野が気候変動危機に対処できるか」とする報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①世間ではCO₂の削減が着目されているが、メタンはCO₂に次ぐGHGで、産業革命以来発生した地球温暖化の3割に寄与している。②過去20年間、メタンの排出量は約25%増加したが、パリ協定の目的を達成するためには、今後メタンの排出量を年率2%削減する必要がある。③マッキンゼーの今回の調査では、既存の技術を前提に妥当なコストで、メタンの排出源となっている主要5分野から排出されるメタンの量を、気温上昇を1.5℃以内に抑制することが可能となる2030年までに20%、2050年までに46%削減することが可能であることが判明した。③主要5分野とは、農業、石油・ガス業界、石炭採掘、固形廃棄物処理、排水処理の5分野で、合計で全体の98%の排出量を占めているが、各分野において、経済的に実施可能な削減方策がある。

原文

September 23, 2021, McKinsey


9.ICS:2050年海運炭素中立化支持を正式に表明

国際海運会議所(ICS)は、次回MEPC提出文書として、正式に2050年までに海運の炭素中立化を目標とすることを支持する文書をIMOに提出した。炭素中立化の手段としては、従来から提案されていた研究開発基金のための条約に基づく法的拘束力を持つ燃料課金に加えて、コストが割高な代替燃料への転換を促進するための、炭素税が含まれている。一方で、IMO加盟国に対しては、今次MEPCにおける国際海事研究基金(IMRF)設立の承認と、地域的ではない全世界共通の市場原則に基づく促進措置(MBM)の検討を要請している。海運業界・燃料供給事業者・造船事業者・舶用工業事業者が一致して、代替燃料や脱炭素化技術の促進・拡大のために、MEPCで2050年炭素中立化目標を決議することは、産業界の強い決意を対外的に示すこととなる。

原文

October 5, 2021, ICS


10.EU環境大臣会合:NDCsの5年ごとの見直しに合意

11月12日から開始されるCOP 26では、長い間議論されてきたパリ協定の技術的なRule Bookの最終合意が期待されているが、未合意の課題の一つが、加盟国が同じ期間で一斉にNDCsを見直すべきか否かという問題がある。中国やインドは見直し期間を5年にするか10年にするかは加盟国の裁量に委ねるべしと主張し、ポーランドをはじめとするいくつかのEU諸国も同じ立場をとっていた。一方で、米国・アフリカ諸国・小島嶼国などは、見直し期間を全加盟国一律5年とすることで、各国に定期的に目標の引き上げを促すとともに、各国のCO₂削減状況を監視することにも資すると主張していた。EUは10月6日、環境大臣会合において、EUの共通交渉方針として、本件については、米国等とともに、一律5年の見直し期間とすることをCOP 26で主張することを最終合意した。

原文

October 7, 2021, Reuters


その他のニュース

1.気候変動緩和対策
 (ア)COP 26
  ①準備会合
   ミラノで閣僚級のCOP 26事前協議が開催 原文30/09
2.海事環境
 (ア)船舶から排出されるGHGの削減
  ①海事関係者等による共同事業
   マースクが中国船級協会と炭素中立技術と基準作りで連携 原文27/09
  ②2050年までの炭素中立化
   太平洋島嶼国とアジア諸国が2050年海運炭素中立を提案 原文02/10
 (イ)クルーズ船の環境問題
  ①クルーズ事業者の環境問題への対応
   研究報告:クルーズ観光による 環境と人間の健康への影響 原文02/10
3.エネルギー転換
 (ア)石炭火力発電の削減・撤廃
  ①石炭火力発電所の買収・早期操業停止
   ADB:東南アジアにおける石炭火力発電所の早期停止に取り組む 原文24/09
 (イ)電力不足
  ①中国
   中国の電力不足は石炭価格の高騰と供給量の不足が原因 原文28/09
 (ウ)電力価格の高騰
  ①EU
   電力価格の上昇問題の解決がEUの政治的優先課題に 原文07/10
4.再生可能エネルギー
 (ア)再生可能エネルギー一般
  ①エネルギー価格の安定化
   EC委員長:エネルギー価格安定のために更なる再エネ投資が必要 原文06/10
 (イ)投資の促進
  ①アジアインフラ投資銀行
   AIIBとIRENAがアジア諸国のエネルギー転換で連携 原文21/09
5.安全保障
 (ア)北朝鮮
  ①制裁違反行為の監視
   英国海軍:対北朝鮮制裁措置違反行為の監視を実施 原文26/09


Webinar情報

1.UN Conference Ocean Decade Kickoff Conference for the Western Pacific
November 25-26
https://www.ioc-westpac.org/decade-kickoff-conference/registration/


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