国際海洋情報(2021年9月27日号)

1.UNSG:安保理で気候変動適応対策と平和構築との関連性について演説

標記演説の概要以下のとおり。①気候変動と環境管理の失敗によって、2020年に移住を余儀なくされた人々の数は、3000万人にのぼり、このうちの9割は気候変動に対応する能力が最も少ない国から出ている。さらにこれらの気候難民を受け入れている国の多くもまた、気候変動の影響を受けている途上国で、受け入れ国の国民と予算を圧迫しており、気候難民の問題は多くの周辺国に問題を飛び火させている。②気温上昇を1.5℃以内に抑制するためには、2030年までに全世界的にGHGの排出を45%削減する必要があり、各国はCOP 26を前にしてNDCsを野心的なものに見直すとともに、その目標を達成するために具体的な対策を直ちに開始する必要がある。③こうした気候変動緩和対策とともに、気候変動適応・防災措置にも取り組む必要があり、気候変動対策に関する資金の半分を回すべきである。気候変動適応対策や防災対策なしでは、世界の平和も安全保障も維持できない。

原文
September 23, 2021, 国連

2.アジア開発銀行:東南アジア諸国における石炭火力発電所の早期停止に取り組む

COP 26を前に、アジア開発銀行(ADB)は、東南アジア諸国に建設された石炭火力発電所の早期操業停止を促すためのエネルギー転換メカニズム(Energy Transition Mechanism: ETM)を発表した。具体的には、ADBが官民投資(public-private funding)を活用して、東南アジア諸国にある既存の石炭火力発電所を買い上げて、15年以内に投資を回収して、石炭火力発電所の操業停止時期の繰り上げを図るもの。ADBはETMの他にも、4月に405万ドルの技術協力プログラムを立ち上げ、東南アジア諸国のエネルギー転換を支援している。エネルギー経済・金融分析研究所(IEEFA)の報告書によれば、ETMの仕組みを利用して、インドネシア・フィリッピン・ベトナム内の既存の石炭火力発電所の半数を買い上げるためには、330億から550億ドルの資金を調達する必要があるが、現在ADBが用意しているコロナ復興基金は200億ドルで、またASEANがエネルギー転換促進のために用意しているASEAN Catalytic Green Finance Facilityも17億ドルにすぎないので、ETMの実現にはさらなる資金調達が必要となる。

原文

September 24, 2021, IEEFA


3.英国海軍:対北朝鮮制裁措置違反行為の監視を実施

英国海軍のフリゲート艦HMS RichmondはQueen Elizabeth空母打撃群から離れて、2017年に国連で採択された対北朝鮮燃料・石油製品禁輸制裁措置の履行状況を監視するため、東シナ海で活動した。同艦は、国連制裁違反に明らかに反する船舶について、ビデオや写真を撮影して、国連Enforcement Coordination Cell (ECC)に制裁違反の証拠として提供した。監視活動は9月上旬に終了したが、2019年以来、英国海軍が監視・制裁実施措置に参加した初めての事例となった。

原文

September 26, 2021, 英国政府


4.異常気象に晒されるリスクに関する世代間の不公平

地球温暖化が進む中で、熱波などの異常気象の回数・強度・継続期間・被害地域の広さなども今後数十年にわたり継続して上昇し、若者たちは、年を取った世代に比べて、一生の間で異常気象に遭遇する回数が増え、こうした世代間の不公平が、若者たちの気候変動問題に関連する抗議行動を促し、最近の気候変動問題に関する訴訟においても取り上げられている。研究では、2020年に生まれた子供は、現在の気候変動に関する政策が維持された場合、1960年に生まれた大人と比べて、一生の間に異常気象に遭遇する確率が2倍から7倍に増えることが明確となり、若者世代の安全性への脅威を減らすためには、急激なGHG排出の削減が必要となることが分かった。

原文

September 26, 2021, Science