国際海洋情報(2021年9月21日号)

1.英首相:国連で各国首脳に気候変動に関する途上国支援を要請へ

英国のジョンソン首相は今週国連で各国首脳に、COP 26主催国として積極的に気候変動問題について具体的な約束をするように働きかける予定。先進国は途上国に対して、気候変動対策のために、2020年まで毎年1000億ドルを供与するという約束を既にしているが、2019年においては、796億ドルの供与しかされておらず、2020年も1000億ドルの目標に到達しないことは明らかであると、OECDは発表している。同首相は、この約束を達成することを他の先進国に対して、今週中にNYで説得することは困難だが、COP 26開催前までに説得する可能性は60%あると語った。英国の海外開発研究所によれば、米国のトランプ政権の影響で、1000億ドルのうち米国が負担すべき400億ドルの4%しか米国は現在負担しておらず、気候変動に関する途上国支援予算を含めた民主党の大型予算が議会の承認を得る確たる見通しがまだ立っていないものの、バイデン大統領は21日国連総会で追加的な約束をする可能性はある。

原文
September 20, 2021, BBC

2.欧州港湾協会:Green Guide 2021を発表

欧州港湾協会(ESPO)は、5月28日に開催したESPO Conference Regatta 2021の際に、Green Guide 2021の骨子を既に発表しているが、9月17日、「Greenな未来に向けた欧州の港湾のためのマニュアル」と題した完成版を公表した。本ガイダンスは欧州の港湾をグリーンにするための手法と明確なガイダンスを提供するほか、気候変動によって、欧州の港湾が現在直面している課題について、迅速に対応する方法も示されている。本ガイダンには、EUレベルで引き上げられる気候・環境対策に関する基準に対応して、各港湾が段階的に個々の目標を引き上げていくために、各港湾の行動計画のテンプレートや、港湾の環境を改善するための方策のチェックリストなどが含まれている。今回はGreen Guideと併せて、70を超す港湾の環境問題に関する先進事例を取りまとめたデジタルデータベースが創設されており、データベースは今後継続的に更新される。

原文

September 17, 2021, ESPO


3.UN Global Compact:Ocean Stewardship Coalitionを立ち上げ

9月20日、UN Global Compact:は、生物多様性と気候変動といった二つの危機に対処するためにOcean Stewardship Coalitionを立ち上げ、Blueprint for a Climate-Smart Ocean to Meet 1.5℃を発表し、以下の行動を呼びかけた。①海洋に関する気候変動緩和策や適応策を国家GHG削減行動計画(NDCs)や国家適応計画(NAPs)に位置付ける。②藻場やマングローブといった天然資源が、生物多様性の保全や気候変動の緩和に果たす役割をCOP 26の場を活用して政治的に認識させる。③海洋空間計画の中に緩和策と適応策をきちんと位置付け、適切に設計された海洋保護区の理想的な活用を図る。④気候変動対策と生物多様性の保全を両立させるような生態系を修復・包括する海洋管理を民間部門が実施するよう奨励する。⑤海洋関係の企業は、当該企業のバリューチェーン全体として1.5℃目標を達成するような科学的根拠に基づいた目標(SBTs)を設定し、野心的な気候変動緩和対策を実施する。

原文

September 20, 2021, UN Global Compact


4.ロンドン国際海運週間晩餐会における英国運輸大臣スピーチ

標記スピーチ中、海運の2050年までの炭素中立に関する部分の概要は以下のとおり。①7月に英国政府は「交通脱炭素化計画」を発表して、green shippingへの転換の速度を速めることを表明した。②船舶の償却年数は長いので、長期間にわたって誤った投資をするのを回避するために、海運業界と協力して正しい投資選択をする必要がある。③このため、運輸省の中に、海運の脱炭素化を進めるための新たな組織であるUK SHOREを新設した。④運輸省としては、まず内航海運の船舶について、ゼロエミッションでない船舶の販売を禁止することについて協議を開始する。⑤海運は航空や自動車のように脱炭素化については注目されてこなかったが、海運から排出されるGHGは鉄道とバスから排出されるGHGより多いので、2050年までに外航海運の炭素中立を目標とすることを英国政府として発表した。⑥野心的な目標だが、達成可能な目標である。

原文

September 20, 2021, 英国政府