国際海洋情報(2021年9月17日号)

1.国連:気候変動に関するUnited in Science 2021報告書を発表

国際気象機関(WMO)・Global Carbon Budget・IPCCなど気候変動問題にかかわる国連の諸機関が共同で標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①大気中のCO₂・メタン・酸化窒素の濃度は継続して上昇しており、WMOの観測によれば、北半球におけるCO₂濃度は、大部分の観測地点において、2020年には410ppm以上、2021年前半には415ppm以上となっている。②2019年における世界全体におけるGHG排出量は史上最高の43Gtとなり、パリ協定の交渉が始まった1990年代初期と比べると、56%増加している。③2017-2021年の世界平均気温は、2021年初頭のラニーニャ現象の影響で、2016-2020年の平均気温と比べて少し下がった。2016-2020年の間の北極海の最小海氷面積の平均は、1981-2010年の平均と比較して28%狭くなった。

原文
September 16, 2021, WMO

2.UNSG:先進国の真剣な取り組みがない限り今世紀末までに気温が2.7℃上昇

国連事務総長(UNSG)は、9月17日、バイデン大統領が主催した「エネルギー気候変動問題に関する主要国フォーラム(FME)」において、標記発言を行った。今週は気候変動枠組条約事務局が作成した191の加盟国の最新の気候変動問題に関する国家気候変動行動計画(NDCs)を取りまとめた報告書が発表されたが、EU諸国や米国を含む113か国が既存のNDCsをより野心的なものに改定し、この結果、これらの諸国が排出するGHGが対2010年実績比で、2030年までに12%減少することが見込まれている。UNSGはこの程度の排出削減では足りず、2030年までに世界全体でGHGの排出量を45%削減する必要があると強調した。仮に、191か国が現在の政策を続ければ、2030年までにGHG排出量は対2010年実績比で約16%増加し、この結果今世紀末までに地球の気温は産業革命以前と比べて、2.7℃上昇するとIPCCは予測している。

原文

September 17, 2021, 国連


3.米連邦海事委員会:不平申し立て手続きに関するガイダンスを近日中に発表

米国連邦海事委員会(FMC)は、9月15日Dyeコミッショナーによるコンテナの超過保管料金と返却延滞料金請求に関する二つの提案について投票の結果承認した。第一の提案は、両料金の不当な請求に関し、荷主や貨物自動車運送事業者など、誰がFMCに対して異議申し立てを行えるか。船主側から異議申立人に対する報復行為を制限するために、異議申立が棄却された際に、どのような場合に船社が負担した法律費用を異議申立人に請求できるかに関するガイドラインを発表する。第二の提案は、規則変更に関する事前告知(Advanced Notice of Proposed Rulemaking: ANPRM)を近日中に発表して、①両料金の請求に当たり一定の情報の提供を、FMCが船社と海事ターミナルオペレーター(Maritime Terminal Operators: MTOs)に義務付けるべきか。②両料金の請求をどのような条件で行うかについて、船社とMTOsが条件を順守するようFMCが要請すべきか。について意見を公募する。

原文

September 15, 2021, FMC


4.IMO CCC 7:燃料電池動力船に関する暫定ガイドライン案を採択

IMOの第7回貨物運送小委員会(CCC 7)は、9月16日、船舶内において燃料電池を用いた電力・熱エネルギーの安全性と信頼性を確保するために、燃料電池搭載船の消防装置やガス・臭気探知装置に関する暫定ガイドライン案を採択した。IMOのGHG当初戦略に基き海運の脱炭素化を達成するために、新たな代替燃料の導入に必要な措置を講ずるための施策の一環として、今回のガイドライン案は作成された。採択された案は、次回海上安全員会(MSC)で審議された上で、2022年4月のMSCで正式に承認される予定。

原文

September 16, 2021, IMO