国際海洋情報(2021年9月14日号)

1.英国船主協会も2050年海運炭素中立化をIMOに要求

英国船主協会は、英国政府の決定に従い、IMOに対して、2050年までの海運のCO₂削減目標を50%から100%に引き上げることを要求する。英国船主協会のChief Executiveは「英国船主協会は海運環境問題の先頭に立って大胆な行動をとるときが来た。2050年までに海運から排出されるCO₂を半減するだけでは足りず、IMOとして炭素中立に合意することが不可欠である。」と語り、同協会の会長は「気候変動は人類にとって最大の脅威であり、海運業界の全員が排出削減のためできることはすべてやるべきで、IMOに2050年までの炭素中立目標を掲げることを求め、海運業界が真剣に責任を果たすことを示すべきである。」と語った。英国政府が最近発表した第6次排出枠の割り当て(Carbon Budget)の対象に初めて海運が含まれることとなり、「交通脱炭素化計画」のなかでも、2050年までに海運も炭素中立化することが求められている。

原文
September 12, 2021,英国船主協会

2.世界銀行:気候変動によって生じる移民問題に関する報告書を発表

世界銀行はGroundswell Part 2と題して、気候変動によって生じる移民問題に関する報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①気候変動による生活に必要な水資源の減少・作物の生産性の減少・海面上昇などの影響によって、今後30年間、気候変動を原因とする国内移民の数が増加することが見込まれ、迅速な対策を講じる必要がある。②気候変動は世界の中でも最も貧困で脆弱な地域に大きな打撃を与え、当該地域の経済発展を台無しにし、最悪の場合、居住すら不可能としている。③今後50年間、これらの地域でどのような速度で国内移民が発生するかは、人類が今後数年間に協力して、グリーンで自然災害に強い包括的な開発に努め、パリ協定に従い、いかに迅速にCO₂の排出削減に取り組むかにかかっている。

原文

September 13, 2021, 世界銀行


3.英国政府:洋上風力発電建設のために約340億円を追加補助

英国政府は再生可能エネルギーの拡大のため差額精算契約(Contracts for Difference: CfD)を通じて、第4回目のオークションで、再生可能エネルギー全体として2.65億ポンド(約403億円)の追加補助を実施する。このうち、洋上風力発電については、2030年までに洋上風力発電量を40GWに引き上げることを目指して、着底式洋上風力発電事業に対し2億ポンド(約304億円)が配分される。また、浮体式洋上風力・波力・潮力・地熱といったまだ技術開発が必要な再生可能エネルギーに対しては5500万ポンド(約84億円)が配分され、このうち2400万ポンド(約36億円)は浮体式洋上風力発電の技術開発に対して与えられる。陸上風力発電や太陽光発電に対するCfDは、技術的に確立されているとして2015年に打ち切られていたが、今回これらの分野に対しても1000万ポンド(約15億円)分CfDが復活配分されることとなった。

原文

September 13, 2021, Offshore Wind Biz


4.Global Methane Pledge:2030年までにメタンの排出量を30%削減

メタンはCO₂に次ぐGHGで、エネルギー・農業・廃棄物処理産業から多く排出されているが、米国とEUは、パリ協定の1.5℃気温上昇抑制目標を実現するため、2030年までにメタンの排出量を2020年実績比で30%削減することに合意し、COP 26を目前に控えて、他の主要経済国にもGlobal Methane Pledgeに加わることを17日にも正式に共同で要請する。メタンはCO₂に比べて強力なGHGだが、大気中に存在できる期間が短いので、メタンの排出量の抑制は、地球温暖化対策として即効性が期待できると8月に公表されたIPCCの報告書でも指摘されている。17日には、中国・ロシア・インド・ブラジル・サウジアラビア・ノルウェー・カタール・英国・NZ・南アなどを含む主要GHG排出国が会議を開催するが、この場で、米国とEUが共同で提案する見込み。エネルギー分野でメタン排出の主原因となっているパイプラインや貯蔵施設からの漏出は低コストで修繕することが可能と専門家は指摘している。

原文

September 14, 2021, Reuters