国際海洋情報(2021年9月8日号)
1.EU:戦略的未来予想年次報告書2021年版を発表
原文
2.1.5℃目標達成のためには化石燃料の埋蔵量の大部分について開発中止が必要
9月8日、Nature誌に発表された表記研究の概要は以下のとおり。①パリ協定では、地球気温の上昇を、産業革命以前と比較して、できれば1.5℃以内にするという目標が合意されたが、この目標を達成するためには、現在でも世界のエネルギー供給の大部分を占めている化石燃料の使用量を大幅に削減する必要がある。②本研究では1.5℃目標達成の可能性を半分残すために、化石燃料の埋蔵量のうち開発を停止すべき割合を全世界と地域別に算定した。③この結果、2050年までに、石油と天然ガスの埋蔵量の60%と石炭の埋蔵量の90%について、開発を停止する必要がある。④生産量で見れば、石油ガスについては、2050年までに毎年3%ずつ生産量を減少させる必要があり、ほとんどの生産地で、直ちにまたは今後10年以内に減産に転じる必要があり、この結果現在操業中またはこれから操業を計画している大部分の化石燃料事業の採算が取れなくなる可能性がある。
原文
September 8, 2021, Nature
3.中東における石油関連テロ攻撃が今年に入ってから増加
S&P Global Plattsによれば、ペルシャ湾・アラビア半島における石油関連施設・パイプライン・タンカーに対する攻撃は2021年に入って急増している。2017年以来、同地域における攻撃事件は、合計で61件発生しているが、そのうち、今年の1月1日から9月6日までの間に発生した件数が27件となっている。タンカーに対する攻撃は、2017年以来、オマーン湾・紅海・バブエルマンデフ海峡周辺でほとんど発生したが、原油生産に影響を与えるような重要なものはなく、石油価格が大きく高騰することもなかった。
原文
September 8, 2021, S&P Global
4.ロイズ船級協会:海運脱炭素化実現の方策
ロイズ船級協会が標記報告書を発表したところ、実現のために必要な5条件として提言しているのは以下のとおり。①先行的な各国・地域ごとの対策に優先して世界的な共通の対策を取るためには、現在のIMOにおける審議ペースでは遅すぎ、2023年までの暫定的なGHG削減戦略の見直しを早急に進めるべき。②商業的に採算の取れる代替燃料の開発とその供給インフラの整備が不可欠。③脱炭素化のための技術開発には資金の確保が重要だが、海運分野の決断が遅れれば、投資資金は他の環境分野の投資に流れ、決断の遅れは資金コストの上昇を招く。④海運・港湾・サプライチェーンの効率化のためには、情報の共有・分析を可能とする情報の透明化が必要。⑤脱炭素化を進めるには海運の枠を超えた分野横断的な連携が必要。
原文
September 9, 2021, ロイズ船級協会