国際海洋情報(2021年9月7日号)

1.ICS:炭素排出税を提案

国際海運会議所(ICS)は、ゼロ炭素燃料の開発・導入促進のための世界的に受け入れ可能な市場原理措置(MBM)の導入に関する提案を、9月3日IMOに提出した。具体的には、5000GT以上の外航船舶を対象に、排出するCO₂の量に応じて課税する。徴収した税は、IMO環境基金の収入となり、ゼロ炭素燃料と既存のVLSFOの間の価格差を是正し、水素・アンモニアなどの供給インフラを世界の港湾に整備するために使用される。IMO加盟国の負担を最小化し、炭素排出税の迅速な導入を図るためにも、11月に開催されるIMOのMEPCで承認される予定の50億ドル規模の研究開発基金を、炭素排出税の受け入れ基金として利用する。欧州委員会の提案に従い、国際海運をEU排出権取引制度の対象としたとしても、全世界で海運から排出される炭素の量の7.5%しかカバーできず、パリ協定の目標を達成には不十分であるうえ、海上貿易を大幅に複雑化するも,のであり、今回ICSが提案する全世界共通の強制力のある炭素排出課税の方が優れている。

原文

September 6, 2021, ICS


2.英国航空が乗客に持続可能な燃料を購入してもらうシステムを導入

9月7日、英国航空(BA)は、植林などのカーボンオフセット事業に対して、航空機の乗客が投資することができる選択肢を既に提供しているが、さらに乗客が航空機利用に伴うCO₂排出量をオフセットできるように、持続可能航空燃料(SAF)のコストをシェアできるシステムを導入し、COP 26開催期間中には、ロンドンとグラスゴー・エジンバラ間のBAのすべてのフライトでSAFを使用すると発表した。また、炭素中立を目指す企業が、自社の社員が航空機を利用した際のCO₂排出量をオフセットできるよう、企業がSAFのコストをシェアするシステムを、マッキンゼーは昨年に提案していた。航空機の燃料が将来的に、電気や水素に転換できるようになるまでは、SAFの使用が航空のCO₂削減のための重要な切り札になるが、現段階においては、供給量も限られ、コストも高いことから、既存の航空燃料と混焼することも含め、SAFは航空機燃料全体の1%以下を占めているに過ぎない。

原文

September 7, 2021, BNN Bloomberg


3.COP 26:気候変動の影響を強く受ける国々が緊急合意を要請

環境団体は、途上国代表がワクチン接種を受けらえない可能性や英国到着後の検疫期間中の高額な宿泊費を途上国からの代表が支払うことが困難なことを理由にCOP 26の延期を検討することを英国政府に要請しているが、同政府はこうした懸念に対して、途上国の代表だけでなく、NGOのオブザーバーやマスコミも含めて途上国からCOPに出席する人々の検疫期間中の滞在費を英国政府が負担すると発表した。アフリカ・アジア・カリブ海・ラ米・太平洋の気候変動の大きな影響を受ける国々が結成したClimate Vulnerable Forum (CVF)は、マニフェストを発表して、地球温暖化を1.5℃以内に抑制して、地球を安全に保ち、気候変動の危機に直面しているリスクに対して脆弱な人々を保護するべきだとして、COP 26を延期するべきでなく、途上国の代表がオンラインではなく実際に参加できるような支援をしたうえで、停滞している気候変動対策を前に進めるためにClimate Emergency Pactに合意し、すべての国は2025年まで毎年、気候変動対策計画を策定すべきであると主張している。

原文

September 8, 2021, BBC


4.EU:Zero-Emission Waterborne Transportが戦略的研究発明アジェンダを採択

EUは、2021年から2027年の7年間の科学研究イニシアティブであるHorizon Europeの枠組みの中で、Zero-Emission Waterborne Transportに関するパートナーシップ結成に向けて、5月に提案を行ったが、9月7日、このパートナーシップの役員会が初めて開催され、目標達成のための詳細なロードマップを示した戦略的研究発明アジェンダを発表した。中でも、革新的な技術と運用を通じて、GHGや気体・液体のすべての有害汚染物質の排出をなくすよう水運・海運を変革することを先導・促進することをパートナーシップの目的とする。2050年までに水運・海運からの炭素排出ゼロを目指して、全ての主な船種・船型に対応できる経済的に普及が可能な炭素排出ゼロのための解決策を、2030年までに開発し実証することを目指す。

原文

September 9, 2021, Offshore Energy Biz


国内ニュース

1.    川崎汽船:Transition Link Finance Flamework & Transition Link Loan
原文

9月6日、川崎汽船


2.    商船三井・丸紅:露産メタノールを輸送するメタノール燃料船を共同検討
原文

9月8日、商船三井・丸紅