国際海洋情報(2021年9月6日号)

1.ガスプロムネフチとソヴコムフロトが北極海海運の効率化で連携

露の石油企業のガスプロムネフチと露海運最大手のソヴコムフロトの両首脳は、東方経済会議の場で、北極海の海上輸送の効率化のために、デジタル技術と低炭素代替燃料の分野で連携していくことを確認する文書に署名した。ソヴコムフロトのタンカーは、ガスプロムネフチの運営する北極海のプリラスロムノエ油田とヤマル半島のNovoportovskoye油田から生産された原油を通年で輸送しており、ガスプロムネフチの技術者が開発した世界初の北極海における物流管理システムであるKapitanを利用して運航している。このシステムを利用して、最適航路を選択し、燃料を節約し、砕氷船の伴走を必要とする機会を減らし、荷待ち時間の短縮を図ることによって、最大で12%の運航コストを削減できる。さらに、LNG・水素・アンモニア・メタノールなどの代替燃料についてもソヴコムフロトの既存船を利用しながら、共同で試行を進めていく。

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September 4, 2021, Hellenic Shipping News

2.EU:排出権取引価格が史上最高の60ユーロを超える

8月30日、EUの排出権取引価格は、史上最高の60ユーロ(約7800円)を超え、この結果、電力価格も9月1日、140ユーロ(約18000円)/MWhに上昇した。ポーランドとスペインは直ちに排出権取引価格の上昇が急激すぎると表明したが、この価格上昇については、7月に欧州委員会が提案した排出権取引制度の見直しの議論の際に、EU加盟国間で議論される見込み。欧州委員会の排出権取引市場担当局長は、この高値は、天然ガス価格の高騰などによる一時的な要因によるもので、長続きはしないと強調している。取引価格の急騰に対応して、取引価格の上限制度を導入すべきという議論もあるが、取引市場に介入することは、脱炭素化のペースを落とすだけのことであり、取引価格の高騰によって各国政府の収入も増えるので、増えた収入を財源として、排出権取引価格の急騰によって影響を受ける者に対して、各国政府が自らの判断で必要に応じ補償をする方が良いとの反論もある。

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September 3, 2021, Euractiv


3.Fit for 55パッケージについて欧州議会運輸委員会で討議

欧州委員会運輸省(DG MOVE)の次長は欧州議会運輸委員会(TRAN)で7月に欧州委員会が提案したFit for 55(2030年までにGHGの排出を55%削減するという目標)を説明し、討議が行われた。Fit for 55の最終的な法制化作業には、TRANも含めいくつかの関係する委員会も参加する見込み。なお、以下のリンクの中に、Fit for 55が、陸上・航空・海上輸送に与える影響を簡単にまとめたfactsheetが含まれているので参照されてください。

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September 2, 2021, 欧州議会


4.WMO:2020年中の大気汚染がわずかに改善するも短期で終了

世界気象機関は、9月3日、Air Quality and Climate Bulletinを発表したところその概要は以下のとおり。①大気中のPM2.5の量は、アフリカ・南米・南アジアでは最大40%減少し、欧州と北米でもわずかに減少した。②コロナによるロックダウンが実施された地域では、PM2.5の量をはじめとして、大気の汚染度が大幅に改善した。③大気中の窒素酸化物の量も、2015-2019年の平均値と比べると、2020年においては、世界のほとんどの個所で、最大で7割減少した。④大気汚染は死亡を早める最大の環境要因で、9月1日に、米国の研究者たちが発表した報告書によれば、インドの国民の約4割は大気汚染によって、平均寿命を9年以上縮めている。⑤経済の復興により、2020年の大気汚染の改善は短期間で終わったため、健康改善にはほとんど影響を与えない。

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September 3, Reuters