国際海洋情報(2021年9月2日号)

1.米大統領:カルドア山火事でカリフォルニアに非常事態宣言を発令

9月1日、バイデン大統領はカリフォルニア州に対し、非常事態宣言を発令し、連邦政府にカルドア山火事の鎮圧のため、州政府と協力するよう命じた。山火事は8月中旬にシエラ・ネバダ山系で発生し、強い風と乾燥によって拡大し、タホ湖周辺の住宅・ビジネス街に迫っている。今回の命令で国土安全保障省と連邦緊急管理庁が、協力して山火事の鎮圧にあたることが可能となる。

原文

September 2, 2021, Reuters


2.中国が一定の外国船舶の運航に対する規制を強化する改正法を施行

8月27日、中国海事局は、中国が管轄する海域を航行する①潜水艦②原子力船③放射性物質を運送する船舶④石油・化学製品・LNGなどの有害物質を運送する船舶⑤中国の海上交通の安全を脅かす可能性のある外国船舶は、船名・船舶番号・現在位置・衛星電話の番号・輸送している貨物の内容などの情報を、AISが使えないときは、中国が管轄する海域を運航中2時間ごとに中国当局に連絡することを義務付ける改正海上交通安全法を、9月1日より施行すると発表した。この新たな義務を順守しない外国船舶は、中国が管轄する海域から退出することを求められることもある。改正法には、特定の国が対象にされていないものの、東シナ海・南シナ海・台湾海峡に展開する米・英・日の軍艦を念頭に置いていることは明らかであり、同海域において中国と領有権を争うアジア諸国や米国の同盟国と中国の間の緊張を高める可能性がある。

原文

September 1, 2021, Asia Times


3.イラクがOPEC加盟国に再生可能エネルギーへの投資強化を呼びかけ

イラクの副首相兼財務大臣は、9月1日にオンラインで行われたOPECの閣僚会合で、OPEC加盟国に対し、原油・天然ガス輸出への過度の依存を脱却し、太陽光などの再生可能エネルギーへの投資強化を呼びかけた。IEAの事務局長も、気候変動の悪影響を抑止するためには、化石燃料への依存を脱却する必要があり、産油国は再生可能エネルギーの生産が拡大して、原油価格が下がる前に、化石燃料の輸出にのみ依存する経済構造を変換する必要があると語った。OPEC閣僚会合の主たる議題は生産量の調整の可否であったが、11月のCOP 26を前にして、気候変動問題についても討議された模様。IEAが最近発表した報告書では、世界の石油需要が現在の1日当たり9000万バレルから、2050年には、2500万バレルに大きく減少する見込みで、産油国の収入も85%減少する見込みで、今後の人口増加も見込むと、太陽光発電などの再生可能エネルギーに今のうちから投資を行うことが重要とされる。

原文

September 1, 2021, The Guardian


4.UNEP:各国の大気汚染規制法制度を分析した報告書を発表

9月7日の国連International Day of Clean Air for blue skiesに先立ち、国連環境計画は、9月2日、標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①大気汚染は、最大の健康リスクで、世界の人口の92%は、世界健康機関(WHO)が定める大気汚染基準より、劣悪な環境で生活し、特に低所得国に住む女性・子供・老人が影響を受けており、最近の研究では、大気汚染の程度とコロナ感染の関連可能性についても指摘されている。②WHOは大気汚染に関するガイドラインを発表しているものの、それを適用・実施するための世界共通の法的枠組がなく、34%の国では、大気汚染基準が定められていない。大気汚染の基準を定めている国についても、各国の基準を比較するのは困難な状況にある。③さらに、大気汚染基準が定められている国の1/3しか、大気汚染基準を順守することを法的に義務付けておらず、基準を満たしているか排気をモニターすることについても少なくても37%の国で法的に義務付けられていない。④近隣国からの大気汚染についても、国境を越えた大気汚染問題に対処する法的制度がある国は31%にとどまった。

原文

September 2, 2021, UNEP