国際海洋情報(2021年8月31日号)

1.シンガポールが30日以上同国に滞在する外国人船員に対してワクチン接種

シンガポール運輸省は、8月30日、同国内に30日以上滞在し、生活必需品の輸送に従事し、またが旅客フェリーで働く外国人船員を対象に、8月30日からワクチンを有料で接種するSea Crew Vaccination Initiative (Seavax)を開始した。対象には、オフピーク時にシンガポールにドック入りするクルーズ船上のクルー、造船所で修繕を行う煎薬の船員、マリーナに停泊中のヨットの乗員、漁船の乗組員、船舶に日曜金などを供給する船舶の船員、シンガポール内のフェリーの乗務員などが含まれる。

原文

August 30, 2021, The Straits Times


2.豪:太陽光パネルの普及によって企業・家庭のエネルギー自給率が上昇

Australian Energy Market Operator (AEMO)は、8月31日、電力供給信頼性年次報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①本年の4月と8月の2回にわたって、1日の総発電量に占める再生可能エネルギーの比率がこれまで最高の57%に達した。②再生可能発電の整備のペースがこのままの勢いで継続すれば、2025年には、再生可能エネルギーによる発電量が瞬間的に100%となるまで、再生可能エネルギー発電比率が上昇する見込み。③現在計画中の大型太陽光・風力発電施設の建設に加えて、個々の企業と家庭が導入する太陽光発電を併せると、2025年までに、再生可能エネルギーによる総発電量は、現在に比べて、10GW増加する。④2025年までに企業や家庭が個別に追加的に整備する太陽光発電の量は8.9GWとなる見込みで、2026年までに総電力需要量の77%を瞬間的に供給することが可能となる。⑤この結果、電力事業者が供給する電力への依存度が低下して、特に日中の最低需要電力量が低下することが、電力事業者にとっては課題となる。

原文

August 30, 2021, The Guardian


3.シリア最大の精油所から油が地中海に流出しキプロスまで汚染拡大の見通し

シリアの地中海沿岸のバニヤースにある同国最大の石油精製所内の1.5万トンの石油タンクに亀裂が生じ、8月23日から石油が地中海に流失したが、衛星からの観測によれば、油濁の規模は当初考えられていたのよりは大規模で、NYとほぼ同面積である800㎢に拡大し、キプロスの海岸まで約7kmの海域まで汚染が近づいている。キプロスの漁業海事研究省によれば、バニヤースから約130km離れたトルコが支配する北キプロスの再北東端のApostios Andreas岬に24時間以内に到達する見込み。シリアの沿岸部は油濁汚染されているが、同国政府は油濁汚染を処理する十分な技術と装備を持っておらず、隣国のトルコが支援に入っている。東地中海では、本年2月にもイスラエルで大規模油濁事故が発生しており、今回の事故が2番目の大規模油濁事故となる。

原文

September 1, 2021, CNN


4.EEA/EMSA:欧州海上輸送環境報告書を発表

9月1日、欧州環境庁(EEA)と欧州海上安全庁(EMSA)は、初めてとなる欧州海上輸送環境報告書を発表したところ、報告書が指摘している海運が環境に与える影響の主な点は以下のとおり。①GHG:EU及びEEAに2018年に寄港した船舶から排出されたCO₂の量は1.4億トンで、世界全体で船舶から排出されたCO₂総量の18%となった。②大気汚染:2019年に欧州に寄港した船舶が排出した二酸化硫黄の量は163万トンで、世界全体の排出量の16%を占めた。③海中騒音:コンテナ船のプロペラなどから発生する海中騒音は2014年から2019年にかけて、2倍以上に増加した。④外来性生物の持ち込み:1949年以来、EU海域への外来性生物の持ち込みの原因の半分は海運によるもので、海洋生態系に強い悪影響を与える合計で51種類の外来性生物が持ち込まれた。⑤油濁損害:2010年から世界で発生した18件の大規模油濁事故のうち、欧州で発生したのは3件(17%)で、石油の輸送量が増加する中で、欧州域内の油濁事故は減少している。

原文

September 1, 2021, EMSA