国際海洋情報(2021年8月30日号)

1.米国が中国に海外の石炭関連事業への金融支援の停止を要求

中国が2013年に一帯一路を開始して以来はじめて、中国は今年に入ってから海外の石炭関連の事業への投融資を凍結しているが、米国の気候問題担当のケリー大統領特使は、来週中国を訪問して、海外の石炭関連事業に対する金融支援を停止することを中国政府が正式に宣言するよう求める予定。しかし、中国政府は西欧諸国の圧力に屈する形でこのような対策を取ることは好まず、あくまで中国政府独自の方針として気候変動問題に対処していきたいと考えており、この問題については、今後も継続して石炭に依存していきたいとする途上国の理解者として振る舞いたいとの思惑もある。バイデン政権はこれまでも中国に対して、国際的な気候変動対策に関わる基準に中国も従うよう圧力をかけ続けており、ケリー特使は、中国が現在公約している「2030年までにCO₂の排出量をピークアウトさせ、2060年までに炭素中立を達成する。」という目標を、中国政府がさらに上方修正することを期待している。

原文

August 27, 2021, The Hill


2.英国のCrown Estate等が洋上風力発電が海洋生態系に与える調査を開始

英国は既に世界第1位の洋上風力発電国だが、英国政府はさらに2030年までに洋上風力発電の総発電量を40GWにまで拡大することを目標としているところから、国立環境研究協会(NERC)・Crown Estate・環境食料地方省(DEFRA)は700万ポンド(約11億円)と4年をかけて、洋上風力発電の急速な開発と気候変動・漁業活動が複合して海洋生態系に与える影響について大規模な調査を開始することを発表した。研究は洋上風力発電施設の開発によって、海洋生物の個体数や異なる種類の生物間の関係がどのような影響を受けるか、こうした海洋生態系への影響をよりよく把握するために、どのような革新的な技術が活用できるかについて研究を実施する。この研究結果によって、海洋資源量を維持し、海洋環境の回復を図りながら、2050年までに炭素中立を実現するためには、どのように英国の海域を管理すればよいかについて、政策決定者の適正な判断を支援する。

原文

August 23, 2021, The Crown Estate


3.マースクの脱炭素戦略による輸送コスト上昇の影響

マースクは炭素中立メタノールを燃料とすることができる大型コンテナ船を14億ドルをかけて8隻発注したが、この新型船は同規模のコンテナ船と比較して、建造費が約15%高いうえに、燃料の炭素中立メタノールは、通常の船舶燃料に比べて2倍以上のコストとなるので、新型船を使用した場合の運賃は当然高くなる見込みで、AmazonやUnileverのような特定の環境意識の高い余裕のある大手荷主は、喜んで割高の炭素中立輸送を選択するとしても、余裕のない荷主は通常の輸送方法を選択する可能性がある。ただし、水素協議会によれば、例えば、東南アジア諸国で生産された60ドルのジーンズを米国にメタノール燃料船で輸送した場合に、割高な輸送コストがジーンズの小売価格に反映する割合はわずか29セントだけで、思ったほど、製品価格上不利にはならないという試算もある。

原文

August 26, 2021, Reuters


国内ニュース

1.JERA: 国内LNG発電所における水素利用実証事業
原文

8月26日、JERA


2.三菱重工:Total Energiesと液化CO₂輸送船の開発を開始
原文

8月26日、三菱重工