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週刊国際海洋情報 今週の10大ニュース(2021年8月29日号)

1.UNICEF:世界で10億人の子供が異常気象の影響に晒される

8月20日、UNICEFは、子供たちにとっての気候変動リスクについて初めて包括的に分析した「子供たちの気候変動によるリスクに関する指標」を発表し、指標では、サイクローンや熱波などによる気候・環境面で子供たちが受けるショックと、医療等の基本的なサービスを子供たちがどれだけ受けられるかをもとに算出した子供たちをめぐる環境の脆弱性をもとに、国別のランキング評価を実施した。この結果、33か国に住む約10億人の子供たち(全世界の子供人口22億人の約半分)が、非常にリスクが高い状況で生活していることが判明した。これらの子供たちは複数の気候環境ショックに晒されているうえに、安全な飲み水や衛生環境・健康管理・教育の欠如があいまって、生命にかかわるリスクにさらされている。最もリスクが高い国として、中央アフリカ・チャド・ナイジェリア・ギニア・ギニアビザウがランキングされている。

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August 20, 2021, UNICEF


2.英国:ブルー水素の使用により年間800万トンのCO₂を余分に排出

英国政府が先週発表した水素経済戦略に従い、化石燃料を原料として生産した後に炭素回収貯留(CCS)技術を活用したブルー水素を、再生可能エネルギーから生産されるグリーン水素とともに併用する場合には、グリーン水素だけの場合と比較してガソリン車100万台以上が排出するのと同等な最大で年間800万トンのCO₂を、2050年まで毎年余分に大気中に放出することが分かった。CCSを用いても完全には排気からCO₂を除去するのは困難で、5-15%のCO₂が大気中に放出されるとともに、天然ガス生産時にメタンが漏出するため、こうした排出量の推計となる。同戦略ではブルーとグリーンの水素を併用するとされているが、その割合が明記されていないため、環境団体からは、過度にブルー水素に依存しすぎて、北海における天然ガスの生産や化石燃料の輸入を今後も何十年も続けることによって、何百万トンものCO₂を余分に排出し続けることになるのではないかと懸念している。

原文

August 22, 2021, The Guardian


3.米国のClean Electricity Payment Programについて

現在民主党主導で進められている13.5兆ドルの予算案の中に、電力事業者が毎年販売する電力に占めるゼロ炭素電力の比率を向上させるために、電力業者に対して、金銭的な飴と鞭を駆使する「クリーン電力支払いプログラム:CEPP」が盛り込まれている。もしこの制度がうまく働けば、2030年までに発電量の8割が、風力・太陽光・原子力によるゼロ炭素電力になり、バイデン大統領の2035年までに発電部門を炭素中立化させるという野心的な目標達成手段の中核となる。具体的には、電力事業者がゼロ炭素電力の年間発電目標量に到達すれば、目標を超える分のゼロ炭素電力の販売量に応じて報奨金を受けることができるが、反対に年間目標を達成できない電力事業者は未達成分に応じて反則金を支払うこととなる。ただし、各事業者に対する目標は一律に定められるのではなく、制度開始時の各事業者のゼロ炭素発電比率に応じて、個別に定められる。

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August 23, 2021, MIT Technology Review


4.ロングビーチ港が全電動ゼロエミッションのコンテナターミナルの供用開始

8月20日、ロングビーチ港はMiddle Harborにほぼすべての機械・施設が電気を動力とする、世界で最初のゼロエミッションのコンテナターミナル(LBCT)の供用を開始した。LBCTの開発は総事業費約1.5兆ドルをかけて、10年前の2011年5月に開始され、第1期事業(約61ha)が2016年に、第2期事業(約77ha)が2017年に、そして最終的に7月に総面積121haのLBCTが完成した。年間110万TEUのコンテナを扱う能力があり、周辺のトラック交通量を減らすために、鉄道引き込み線が整備されている。14の最新型のガントリークレーンが設置された全長1280mの岸壁には、最大級の大型コンテナ船が3隻同時に着岸でき、将来的なコンテナ船の大型化にも十分対応可能。着岸するすべての船舶には、岸壁から陸上電力が供給され、船舶着岸中の補助機関からのCO₂排出を削減することができる。またすべての大規模構造物は、Leadership in Energy and Environmental Design (LEED)基準に従って建設され、電力と水の使用量を節減している。

原文

August 20, 2021, ロングビーチ港


5.マースク:新たに炭素中立メタノールを燃料とできる大型コンテナ船を建造

マースクは、現代重工業と、炭素中立メタノールも燃料として使用できる2元機関を搭載した8隻(+4隻オプション)の16000TEUクラスの大型コンテナ船の建造契約を締結し、2024年第1四半期の竣工を目指すと24日発表した。現在同社は、200隻以上の大型コンテナ船を運航しているが、その半分以上について、科学的な根拠に基づいた炭素排出ゼロを目指しており、持続的な成長を掲げるアマゾン・HP・Microsoftなどの気候変動問題に関心の高い荷主企業と炭素を排出しない物流チェーンの達成について連携している。メタノールと低硫黄燃料油(LSFO)を共に船舶燃料として使用できる機関の搭載に伴う追加的なCAPEX(投資資本コスト)は、船舶の建造費の10-15%となる見込み。一方で、これらの大型コンテナ船の運航に必要な炭素中立メタノールの供給を確保することは容易ではなく、引き続き代替燃料事業者との連携を進めていく。

原文

August 24, 2021, Maersk


6.独連邦運輸・デジタルインフラ省がPtL開発プラットフォーム構想の募集開始


独連邦運輸・デジタル省(BMVI)は、航空機・船舶の代替燃料として、再生可能電力と回収されたCO₂を原料とする液体燃料(PtL)を年間最大1万トン生産するための開発プラットフォームの設立・運用作業を取りまとめる科学・研究機関を選定するための募集を8月23日に開始した。PtL開発プラットフォームに対する補助金は、BMVIが2021-2024年の間に、再生可能エネルギー開発支援のために保有する総額15.4億ユーロ(約1990億円)の補助金予算から支出される。応用研究や実証試験を念頭に置いた再生可能燃料技術開発のための最初のガイドラインは、既に5月11日に公表されており、再生可能燃料を生産するための施設を新設し、あるいは既存施設を改修するための投資ガイドラインは、2021年下半期に発表される予定。

原文

August 23, 2021, BMVI


7.中国:地方政府が100GW以上の石炭火力発電所の新規建設を計画

中国政府は、2030年までにCO₂の排出量をピークアウトし、2060年までに炭素中立を達成することを目標としているが、8月25日、Greenpeaceが発表したところによると、中国の省政府は、2021年上半期合計で24の新規石炭火力発電所の建設計画(合計発電量5.2GW)を承認した。これは対前年同期比20%の減少となったものの、これまでの累計で、中国の省政府が計画する新規石炭火力発電所の発電量の合計は、英国全体の総発電量を超える104.8GWとなった。中国政府は石炭消費量の削減を2026年から開始するとし、それまでは、中央政府が新たに稼働する石炭火力発電所の数を管理するとしているが、省政府は中央政府の許可を得ずに石炭火力発電所の新設を進めることができるので、Greenpeaceは石炭火力発電所の新設について、中央政府が省政府をもっときちんと管理できるようにすべきと主張している。

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August 25, 2021, Reuters


8.米国のインフラ法と新予算案で2030年までに米国のCO₂排出量を45%削減


米国上院民主党院内総務は、8月25日、超党派のインフラ法案と民主党の大型予算案を併せると、2030年までに対2005年実績比で、米国内のCO₂排出量を45%削減できる見込みであることを明らかにした。これにその他のバイデン政権の施策や、NY・カリフォルニア・ハワイなどの各州政府の施策を併せれば、2030年までにCO₂の排出量を半減させるというバイデン政権の目標を達成できると語った。中でも、クリーンエネルギー自動車法案と電力業界に対するクリーン電力支払い計画(Clean Electricity Payment Programme)の2大政策だけで、総削減予測量の2/3を捻出できる見込み。

原文

August 25, 2021, The Hill


9.USCG長官:USCGの海軍化は避けるべき

(論説)USCG長官が米国海軍協会誌に標記論文を寄稿しているところその概要は以下のとおり。①本年に入って、中国は海警法を成立させ、同国沿岸警備隊に、外国船に対する乗船・臨検をする権限だけでなく、発砲する権限も与えて、沿岸警備隊の海軍化を進めた。②米国国内では、こうした中国政府の施策を非難する一方で、USCGにもより海軍的な役割を果たすことを期待する声が高まっている。③特に、USCGの巡視船に海兵隊員を乗船させるという構想もあるが、そのような構想は法に基づく国際秩序の番人としての米国やUSCGの評判を落とすことになる。④September 11thの事件以来、USCGの役割は大きく変容し、米国本土を守るだけでなく、海軍とともに、海外において国益を守ることとなった。さらに、中国の海洋進出によって、USCGがさらに海軍的な役割を強化すべきだという議論があるが、極めて短視眼的発想である。⑤USCGの世界的な価値は、世界で12番目に大きい海軍力としてではなく、法の支配を守り、米国の競争国とも相互利益に立ち、紛争を回避する関係を築くことにある。

原文

August 2021, USNI


10.米国東岸の洋上風力発電施設の整備のため今後5年間で2.5万人の訓練が必要

世界風力機構(Global Wind Organization: GWO)によれば、米国東岸に2025年までに計画とおり、合計で9.1GWの洋上風力発電施設を整備するためには、設備の建設・設置・運用・保守管理のために2.5万人を訓練する必要があるほか、設備の購入・製造・輸送のための人員の確保・訓練が必要になると発表した。こうした訓練需要に応えるために、北米の約100の職業訓練校・海事教育機関・大学が、GWOの認証を得て、訓練の準備を開始している。具体的な例としては、New Englandの6州の洋上風力発電施設整備のため、Crowley Maritime CorporationとMassachusetts Maritime Academy (MMA)は、必要な人員の訓練計画を共同で策定し、GWOの認証を受けることとなっている。CrowleyはMMAの訓練中の練習生に対し、奨学金やインターンシップを与えて、洋上風力関連の訓練を受けさせることも計画している。

原文

August 26, 2021, Offshore Wind Biz


その他のニュース

1.    気候変動
 (ア)豪雨・洪水
  ①気候変動との関係
   気温上昇により大雨の頻度と降水量が増加 原文23/08
 (イ)    経済的損害
  ①東南アジア
   積極的な地球温暖化対策を取れば12.5兆ドルの経済効果 原文23/08

2.海事環境
 (ア)IMO 2020
  ①スクラバー
   米ワシントン州:スクラバー排水を暫定的に禁止 原文25/08
3.パンデミック関連
 (ア)クルーズ船の運航
  ①米国
   米クルーズ:デルタ型の猛威でますます厳格化する乗船基準 原文26/08
4.安全保障
 (ア)南シナ海
  ①米国
   副大統領:ベトナムに中国に対して共同で対抗することを約束 原文25/08
5.再生可能エネルギー
 (ア)バイオエネルギー
  ①生ごみ利用のバイオガス
   家庭の生ごみから作られるバイオガスの可能性 原文23/08
(イ)達成目標
 ①仏
  炭素中立達成には原子力だけでなく再生可能エネの拡充が必要 原文26/08
   (ウ)大規模蓄電施設
 ①米国
  EIA: 2023年までに蓄電能力の合計が1万メガワットにまで拡大 原文16/08
6.海賊等個別事案
 (ア)フィリピン
  ①マニラ湾錨泊地における武装強盗
   ReCAAP ISC: マニラ湾錨泊海域における武装強盗に対する警報 原文23/08
7.競争政策
 (ア)国家間の競争条件の平等化
  ①対中国
   相互主義に基き対中国の海運市場競争条件の不平等是正が必要 原文18/08


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