国際海洋情報(2021年8月25日号)

1.ReCAAP ISC:マニラ湾錨泊海域における武装強盗に対する警報

2021年1月から8月までの間に、マニラのSouth Harbor錨泊地で、合計8件の武装強盗事件が発生した。特に7月から8月にかけて発生した最近の3件の武装強盗事件では、賊は銃またはナイフで武装し、船員に対し暴力をふるった。7月17日に発生した事件では、賊は当直の船員に対して手作りの銃を突き付け、ラジオを奪ったうえで、当該船員をレールに縛り付けた。8月4日の事件では、賊はナイフで船員を刺そうとしたが、船員はかろうじてナイフを避けたものの、船首楼甲板にロープで縛り付けられた。いずれの事件も倉庫に保管されていた大量の備蓄品が盗まれた。

原文
August 23, 2021, ReCAAP

2.マースク:新たに炭素中立メタノールを燃料とできる大型コンテナ船を建造

マースクは、現代重工業と、炭素中立メタノールも燃料として使用できる2元機関を搭載した8隻(+4隻オプション)の16000TEUクラスの大型コンテナ船の建造契約を締結し、2024年第1四半期の竣工を目指すと24日発表した。現在同社は、200隻以上の大型コンテナ船を運航しているが、その半分以上について、科学的な根拠に基づいた炭素排出ゼロを目指しており、持続的な成長を掲げるアマゾン・HP・Microsoftなどの気候変動問題に関心の高い荷主企業と炭素を排出しない物流チェーンの達成について連携している。メタノールと低硫黄燃料油(LSFO)を共に船舶燃料として使用できる機関の搭載に伴う追加的なCAPEX(投資資本コスト)は、船舶の建造費の10-15%となる見込み。一方で、これらの大型コンテナ船の運航に必要な炭素中立メタノールの供給を確保することは容易ではなく、引き続き代替燃料事業者との連携を進めていく。

原文

August 24, 2021, Maersk


3.独連邦運輸・デジタルインフラ省がPtL開発プラットフォーム構想の募集開始

独連邦運輸・デジタル省(BMVI)は、航空機・船舶の代替燃料として、再生可能電力と回収されたCO₂を原料とする液体燃料(PtL)を年間最大1万トン生産するための開発プラットフォームの設立・運用作業を取りまとめる科学・研究機関を選定するための募集を8月23日に開始した。PtL開発プラットフォームに対する補助金は、BMVIが2021-2024年の間に、再生可能エネルギー開発支援のために保有する総額15.4億ユーロ(約1990億円)の補助金予算から支出される。応用研究や実証試験を念頭に置いた再生可能燃料技術開発のための最初のガイドラインは、既に5月11日に公表されており、再生可能燃料を生産するための施設を新設し、あるいは既存施設を改修するための投資ガイドラインは、2021年下半期に発表される予定。

原文

August 23, 2021, BMVI


4.気温上昇により大雨の頻度と降水量が増加

最近の数か月で、西欧や中国では大規模な洪水が、米国北西部とカナダでは熱波が、ギリシャ・トルコ・シベリア・米国では大規模な山火事などの異常気象が続く中で、政府間気候変動パネル(IPCC)の報告書では、こうした異常気象は人類が排出したGHGによって引き起こされたという否定しがたい証拠があるとしている。8月23日、World Weather Attributionの科学者たちが発表した報告書によれば、上記の今年の異常気象や2020年のシベリアの熱波、2019-2020年の豪の山火事も気候変動がなければ発生したかったとしている。さらに、7月に洪水が発生した独とベルギーを対象に分析した結果、気温が1℃上昇すると、大気に包含できる水蒸気の量が7%増加する結果、気候変動により、大雨が発生する確率は1.2倍から9倍となり、降水量も3%から19%増加することが分かった。

原文

August 23, 2021, The Guardian