国際海洋情報(2021年8月16日号)

1.地球温暖化:今年の7月は観測史上最も暑い7月に

8月13日、米国海洋大気庁(NOAA)の環境情報国立センターが発表したところによれば、全世界の平均気温で見ると、今年の7月は観測史上最も暑い7月となった。具体的には、①全世界の地表面と海面の気温の平均は20世紀の7月の平均気温である15.8℃を0.93℃上回り16.7℃となり、142年前に観測を開始して以来最高となった。②北半球の地表面の平均気温も、20世紀の平均より1.54℃上回り史上最高となった。③地域的にみると、アジアでは過去最高、欧州でも過去2番目の高温となった。④北極海の海氷の面積は、国立雪氷情報センターによれば、43年前に観測を始めて以来、7月としては4番目に狭い記録となった。⑤南氷洋の海氷面積は、平均より広く、2015年以降最大で、史上8番目に広い面積となった。

原文
August 13, 2021, NOAA

2.Blue HydrogenがGHG削減に有効というのは幻想

コーネル大学の研究者が標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①天然ガスを燃料とし、製造過程から排出されるCO₂を炭素回収貯留(CCS)技術を用いて回収して生産されるBlue Hydrogen(BH)のlifecycle GHG排出量を把握するため、燃焼時に排出されるCO₂だけでなく、漏出されるメタンの量についても検証した。②この結果、メタン漏出量が多いため、CCSを利用しないGrey Hydrogen (GH)と比べて、BHのGHG排出削減効果は9-12%にすぎなかった。③一方で、BHのメタン漏出量を天然ガスの3.5%とした場合、BHのlifecycleで見たGHG排出量は、天然ガスや石炭より20%以上、ディーゼル油より60%も多いことが分かった。④仮に、BHのメタン漏出割合を天然ガスの1.54%と低く見積もっても、BHのlifecycle GHG排出量は、単純に天然ガスを燃焼した場合より多く、GHと比べたGHG削減効果も18-25%にすぎないことが分かった。⑤さらに回収されたCO₂は一切漏出せずに安全に保管されることを前提としているが、そのような貯留技術はいまだに確立されていないこともBH推進の問題点といえる。

原文

August 12, 2021, Wiley Online Library


3.中国の製鉄・発電部門:引き続き石炭火力に積極投資

中国では、今年の第2四半期にはCO₂排出量の増加のペースが鈍化し、指導部は、2060年までの炭素中立を目指して、エネルギーを大量に消費し、CO₂を大量に排出する事業を厳格に管理すると明確に宣言しているにもかかわらず、国営の発電/製鉄企業は、継続して石炭火力を前提とした新規事業を実施・発表している。
Centre for Research on Energy and Clean Air (CREA)とGlobal Energy Monitor (GEM)の共同調査によれば、具体的には、合計で年間3500万トンの銑鉄を生産する能力のある18基の石炭火力高炉と43の石炭火力発電所の新設計画が今年の上半期に発表された。発表された全ての事業計画が承認され完成すれば、オランダが現在排出しているCO₂総量と同等の年間1800万トンのCO₂の排出量が増えることとなる。IPCC報告書の提言に従い、世界的に速やかにGHGの排出量をピークアウトさせるためには、GHG排出量増加の主たる原因を作っている中国において、発電・製鉄部門における石炭火力への投資をやめて、水素などの低・ゼロ炭素エネルギーへの積極投資が不可欠である。

原文

August 13, 2021, CREA


4.排出権の取引価格の上昇に伴って、CCUSの経済的導入可能性が高まる

炭素回収(CCUS)技術は何十年も前に開発され、発電やセメント製造業などのエネルギー多消費型の一部の産業で導入されているが、そのコストは依然として割高で、国際エネルギー機関によれば、1トンのCO₂を回収するために、最大で120ドルのコストがかかっている。したがって、欧州ではCCUSを導入するより、排出権の価格(現在トン当たり約55ユーロ(約7100円))の方が常に安く、これがCCUSの導入が進まない経済的な原因だった。しかし、2020年代半ばには、排出権の取引価格が約100ユーロ(約12900円)に上昇することが予想されることから、CCUSの使用が経済的に現実的となることから、現在すでにCCUSを使用している北米と豪に加えて、英・蘭・ノルウェーで大規模なCCUS事業が開発されており、全世界で計画されているCCUSの総事業数は2019年と比較して6倍の300件に達しているとWood Mackenzieは見積もっている。

原文

August 16, 2021, The Star


国内ニュース

1.中央環境審議会地球環境部会中長期の気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会地球温暖化対策検討ワーキンググループ合同会合(第9回)の開催について(環境省)
原文
8月4日、環境省

2.気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第I作業部会報告書(自然科学的根拠)の公表について(環境省)
原文
8月9日、環境省