国際海洋情報(2021年8月11日号)

1.USCG:Cyber Strategic Outlook 2021を発表

米国沿岸警備隊(USCG)は、米国経済と安全保障の基幹となる重要な海事システムに対するサイバー攻撃の脅威の増加に対処するため、8月3日、「サイバー戦略アウトルック(CSO) 2021」を発表した。米国に対するサイバー攻撃は、陸海空からの物理的な伝統的な脅威と比較しても、第2次世界大戦後、米国経済・国防力に対する最大の脅威となっている。過去5年間でもUSCGのネットワークや情報への不正侵入・重要な海事インフラへの攻撃・民主的な選挙に不公正な影響を与えようとする事例が発生しており、サイバー分野が重要な攻撃対象となっている。2021CSOは、①サイバー分野におけるUSCGの役割②サイバー攻撃から海上輸送を防衛③サイバー分野における敵対勢力の発見と対処の3分野に分かれて記述されている。

原文
August 3, 2021, USCG

2.北極海漁業関心国が北極海で共同漁業調査を実施

米・中・日・露・韓・加・デンマーク・ノルウェー・アイスランドの9か国と欧州委員会は、来年初頭に韓国で、北極海に漁獲割り当てを早ければ2022年から導入するための協議を実施する。これらの国々は、既に北極海の公海上で、無制限な漁業を禁止する国際条約に合意し、同条約は6月に発効している。漁獲割り当て交渉の前提として、共同調査を実施し、北極海に生息する魚の種類・現在の漁獲量を把握し、もし漁業資源量が豊富であるとみなされれば、割り当てられ漁獲枠の範囲内で、商業漁業の実施を許可する予定。来年の会議では、違法漁業を監視し、漁業資源を管理する組織の設立や、漁業を巡る紛争処理手続きについても協議を実施し、2023年から2024年までに国際協定を締結することを目標とする。

原文

August 2, 2021, High North News.


3.イタリアのシチリア島で欧州史上最高の48.8℃を観測

イタリア気象当局によれば、8月11日、シチリア島のシラキウス近郊で、世界気象機関(WMO)に認証されれば、欧州で史上最高となる48.8℃を記録した。イタリアの熱波はアフリカから北上してきた高気圧の影響で、この高気圧は北上してイタリア本土を襲う予定。イタリア健康省は、イタリアのいくつかの地方に異常高温の警報を出している。この熱波によって、シチリア・カラブリア・プーリアなどの南部イタリアでは大規模な山火事が発生しており、過去12時間でこれらの地域で300か所以上の山火事が発生していると消防当局は発表している。

原文

August 12, 2021, BBC


4.船員へのワクチン接種率が15.3%にとどまり、船員交代問題は深刻化続く

船員に対するワクチン接種は船員交代問題の解決促進のために重要なので、Neptune Declarationが発表する「船員交代指標」に、「ワクチン接種が終了した船員の比率」が8月から追加されたが、8月の時点で、15.3%の船員しかワクチン接種を受けていないことが分かった。欧州・北米・アジアの海運活動に従事する国々の国民の平均ワクチン接種率が、約50%であることを踏まえると、船員のワクチン接種率は依然として大幅に立ち遅れていることがわかる。「先進国の船員を中心として船員に対するワクチン接種が開始され、米国や欧州の数か国では、寄港する船舶に乗り組む外国人船員に対するワクチン接種も開始されたが、船員交代問題の解決促進のためには、まだまだ多くの国がこうした先行事例に従って、船員に対するワクチン接種に取り組む必要がある。」と世界海事フォーラムのManaging Directorはコメントしている。

原文

August 12, 2021, Global Maritime Forum