国際海洋情報(2021年8月2日号)

1.Allianz Safety & Shipping Review 2021が発表

Allianzが標記報告書を発表し、コンテナ船大型化のリスクについて分析しているところ、その概要は以下のとおり。①コンテナ船の大型化により、港内における運航上の制限・火災・海上におけるコンテナ喪失・事故発生時の前例のない複雑で高額なサルベージ作業などのリスクが高まっている。②2020年に全損となった貨物船は18隻で、全体の1/3以上を占め、過去10年間で見ると、全損した船舶の4割が貨物船となった。③3月のスエズ運河における閉塞事故に見るように、コンテナ船の大型化は、規模の経済と燃料の節約という意味で海運会社にはメリットがある一方で、世界的なサプライチェーンとしては、こうした大型船の事故による海上輸送の混乱とリスクに備えなくてはならなくなっている。④海運からのCO₂削減の要請にこたえるため、コンテナ船だけでなく、自動車輸送船・バラ積貨物船等の大型化傾向は今後も継続すると考えられるが、港湾のインフラの面では、航路をより深く浚渫したり、ウルトラ大型船が着岸できるように岸壁を拡大したとしても、船舶の大型化のペースに港湾インフラの拡充のペースが追い付かない状況にある。

原文

August 4, 2021, Allianz


2.FMC:8船社に対していくつかのサーチャージの正当性について緊急査問を実施

「混雑サーチャージ」などを荷主に課し、または課すと最近宣言した8つの海運会社(CMA CGM/Hapag-Lloyd/HMM/Matson/MSC/OOCL/SM Line/Zim)が、不公正にサーチャージを課しているという複数の苦情を受け付けた米国連邦海事委員会(FMC)は、8社に対し、サーチャージが法令に従って適正に運用されていることを証明する文書を同委員会の法令執行局(Bureau of Enforcement: BoE)に8月13日までに提出することを命じる緊急査問を発動した。海運会社は、料金や運賃を変更する30日前までに荷主に告知する義務など、運賃・料金の変更に関する特別の要件を遵守しなければならないが、FMCは船社から提出される文書を受けて、サーチャージの課金に当たって適切な告知がなされたか、サーチャージの目的が明確に定められているか、どんな条件が満たされればサーチャージが課されることになるか明確に定められているか、サーチャージをやめる条件が明確に示されているかなどについて審査を実施する予定。

原文

August 4, 2021, FMC


3.米副大統領:南シナ海問題でベトナムとシンガポールとの連携を強化へ

南シナ海における国際法の順守・同地域における米国のリーダーシップの強化・安全保障に関する連携の強化のため、米国副大統領は今月ベトナムとシンガポールを訪問する。ベトナムは、南シナ海問題で最もはっきりと中国に対して反発しており、ハリス副大統領は、ベトナム戦争後初めて同国を訪問する米国副大統領となる。中国による南シナ海の軍拡活動や多数の海景局の巡視船や中国の漁船をけん制するため、南シナ海の周辺国はおおむね米国の南シナ海における軍事的プレゼンスを歓迎している。米海軍は継続的に「航行の自由作戦」を実行しているものの、作戦によって中国を委縮させるには至っていない。ベトナムには米国の防衛大臣が先週訪問して、安全保障上の連携強化を促したばかり。

原文

August 3, 2021, Reuters


4.気温が5.2℃上昇すれば海洋性動物の多くが絶滅

8月4日、Nature Communicationsに発表された研究報告によれば、気候変動は生物多様性に大きな影響を及ぼすが、これまでの研究では、何度気温が上昇すれば、どれだけ生物が絶滅するか数量的な関係は明らかになっていなかった。本研究では、過去4,5億年の情報をもとに、気温変化の程度と海洋性生物の絶滅との関係を分析し、両者の間に明確な関連性があり、例えば顕世代の大規模な生物絶滅は、100万年間に気温が5.2℃から10℃大きく変動したことに強く関連付けられることが分かった。このことから、現在のペースで産業革命以前と比較して気温が5.2℃上昇すれば、顕世代と同様に、大部分の海洋性生物が絶滅する可能性があることがわかった。

原文

August 4, 2021, Nature Communication


国内ニュース

1.艦艇・官公庁船建造「三菱重工マリタイムシステムズ」発足へ
原文

8月2日、三菱重工業


2.川崎汽船:世界初の船上CO₂回収装置を石炭運搬船に試験搭載
原文

8月5日、川崎汽船