国際海洋情報(2021年7月29日号)

1.米荷主がCOSCOとMSCに対し、契約上の義務違反でFMCに提訴

米国の家具メーカーのMCSは、COSCOとMSCが1984年の米海運法に違反しているとして、60万ドルの賠償を求めて、米連邦海事委員会(FMC)に提訴した。訴状によれば、「COSCOとMSCを含む国際コンテナ海運会社は、協力してパンデミックの混乱を悪用して、米国の消費者から不当利得を巻き上げている。具体的には、輸送供給量を絞って、需要過多の状況としたうえで、2年前と比較して、7倍から10倍といった法外な運賃を請求している。さらに、より高いスポットの価格で輸送することを優先して、契約済みの量と価格で製品を輸送することを拒否している。この結果、2020年5月から2021年4月まで、半分以上の製品を契約価格より高いスポット市場価格で輸送することを余儀なくされた。」と主張している。最近バイデン大統領も「世界的なコンテナ海運産業は、少数の外国の船社やアライアンスに牛耳られており、米国の輸出事業者が不利益を受けている。」と語っている。

原文
August 2, 2021, Offshore Energy

2.アジア開発銀行:アジア諸国の石炭発電所の買収・早期運転停止事業を模索

アジア開発銀行(ADB)が中心となり、Citi/HSBC/Prudential/BlackRockなど民間金融・保険機関などが中心となって、インドネシア・フィリッピン・ベトナムで稼働・建設中の火力発電所をPPPの手法で買い取り、通常の運転期間よりはるかに短い15年以内で運転を停止させて、石炭火力発電所が生涯に排出するCO₂の排出量を大幅に削減するとともに、石炭火力発電所を売却したオーナーがその資金で再生可能エネルギー発電に投資するのを支援する仕組みを考案し、既にアジア諸国・EU・国際金融機関と協議を行っている。資金供給者としては、通常の資金回収期間より短い15年以内に、発電所買収資金を回収しなければならないため、類似のインフラ投資事業では、投資家の期待利回りが10-12%であるところ、環境対策という事業の趣旨に賛同して、通常利回りよりかなり低い利益率で投資してくれる投資家から十分な資金を集めることが事業可能性のポイントとなる。

原文

August 3, 2021, Reuters


3.米上院超党派インフラ法案:バイデン政権の気候変動対策が十分に盛り込まれず

予算額1兆ドルの米上院インフラ超党派法案には、1500億ドルのクリーンエネルギー促進予算や学校・港湾などのインフラを嵐や山火事といった異常気象から守るために強靭化する予算が盛り込まれているが、2035年までに米国の発電部門をゼロエミッション化するというバイデン大統領の目指す目的とは、ほど遠いものとなっている。具体的には、バイデン政権の気候変動対策の中核をなし、電力業界に対し、化石燃料の使用をやめ、太陽光・風力・水力といった再生可能エネルギーを使用することを求める「クリーン電力基準(Clean Electricity Standard)」について法案では一切触れられていない。また、バイデン政権が大恐慌の時のニューディール政策と同様に位置づけているCivilian Climate Corp構想(多くの国民に自然保全事業・再生可能エネルギーに関連する新たな仕事を与えて、社会を気候変動による災厄から復興させる構想)についても法案には全く含まれていない。

原文

August 3, 2021, AP


4.米・英・イスラエルがイランのタンカー攻撃に対して報復を言明

イランとイスラエルは、過去数か月間にわたって、互いの運航する船舶に対して攻撃を繰り返してきたが、29日にオマーン沖で発生したイスラエルの海運会社が運航する製品タンカーに対するドローンによる攻撃で、ルーマニア人の船長と英国人の保安要員が死亡したことにより、両国の小競り合いは新たな局面に入った。米国の国務長官は、今回の攻撃が、3日に新たにイランの大統領に就任したライシ師がより戦闘的な姿勢を取ることのサインとはみなさないとしつつも、今回の攻撃はイランが使い捨て爆発型ドローンを用いて実施したと確信しており、米・英・イスラエルは共同でイランに対して報復するだろうと語った。英国首相も、この攻撃は民間船舶に対する看過しがたい残虐な攻撃で、イランは自身の行動に対して責任を取らなくてはならないと述べ、在英イラン大使を外務省に呼んで抗議し、現在UAEに係留中の被害船舶に対して、調査団を派遣した。これに対し、イラン政府は攻撃への同国の関与を否定している。

原文

August 2, 2021, gCaptain(Bloomberg)