国際海洋情報(2021年7月28日号)

1.ライアンエアが顧客が排出する「炭素計算ソフト」を発表

欧州最大の格安航空会社であるライアンエアは環境問題に関心が高い顧客向けに、航空機が排出するCO₂をオフセットするために、旅客が自主的に2ユーロを寄付できる制度を既に導入しているが、旅客がライアンエアの利用によって実際に排出するCO₂の量を計算する「炭素計算」ソフトを開発し、旅客が正確にカーボンをオフセットできる仕組みを近日中に導入する。同社は顧客が支払うオフセットの資金を利用して、トルコにおける風力発電事業・ポルトガルのファロの植林事業・ウガンダにエネルギー効率の良い調理ストーブを支給する事業・マラウィに安全な飲料水を提供することによって、水を煮沸消毒する必要をなくしてエネルギーを節約する事業に投資して、カーボンオフセットを実施している。同社は2050年までの炭素中立を目標として、このほかにも持続可能な航空燃料の使用量を増やし、より環境にやさしい航空機の導入に投資するとしている。

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July 30, 2021, Euractiv


2.IRENA:「海洋再生可能エネルギー:開発のための行動アジェンダ」を発表

標記報告書の概要は以下のとおり。①洋上風力(固定式/浮体式)・浮体式太陽発電をはじめとして海洋はエネルギー転換に必要な再生可能エネルギーの無尽蔵の供給源である。②G20諸国はこうした海洋再生可能エネルギーの重要性に着目して、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)に、世界的に海洋再生可能エネルギーを展開するための行動アジェンダを提案するように要請した。③IRENAが作成した地球の気温上昇を1.5℃以内に抑制するためのシナリオに従えば、洋上風力発電は、2020年の34GWから、2030年には380GW、2050年には2000GW以上に拡大するとともに、他の海洋再生可能エネルギーは2050年までに350GWの規模まで拡大する。④本報告書では、国連海洋法に従った海洋管理の強化、国家海洋空間計画の中に海洋再生可能エネルギーを適切に位置づけること、送電のための海中送電ケーブルや既存の送電網との連結などに関するインフラ整備に対する計画の迅速な策定と財政支援などを含む50の項目について提言を行っている。

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July 23, IRENA


3.中国・インドなど延長された締切までに改訂NDCsを提出せず

パリ協定では、加盟国は2020年中に自主的に決定したCO₂排出計画(NDCs)の見直しを実行し国連に提出することとされているが、コロナの影響で昨年末の期限までに見直されたNDCsを提出した国は、世界のCO₂排出量の約3割を排出するEUと英国を含む75か国のみで、提出された改訂NDCsを合計しても、世界のCO₂排出量を2010年実績比で、2030年までにわずかに0.5%削減する効果しかなく、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑制するという目標達成のためには程遠い状況となっている。このような状況を受けて、国連変動枠組条約事務局は、改訂されたNDCsの提出期限を7月末まで延長していたが、延長された期限までにNDCsを提出したのは、米・加の他は、ギニア・イスラエル・オマーンなどの中小国が中心で、合計110か国となる一方、CO₂大量排出国である中国・インド・サウジアラビア・南アなどは提出を見送った。

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July 31, 2021, Climate Home News


4.米上院:総額1兆ドルのインフラ整備法案を提出

米国上院で、道路・橋梁・港湾・高速インターネット等のインフラの整備に1兆ドルを支出する過去数十年間で最大規模のバイデン政権にとっても最優先事項の公共投資法案が超党派で提出された。この法案は5年間で既に決定されていた4500億ドルの投資に加えて、5500億ドルを新たに道路・鉄道・電気自動車の充電施設に投資するもの。この法案が上院で承認されれば、下院に回るが、下院の民主党はこのインフラ整備法案と教育・保育・気候変動問題等の「人間のインフラ」に3.5兆投資する法案とセットで審議する見込みで、民主党は財源確保のために法人税と年収40万ドル以上の高額所得者の所得税を引き上げることを提案しているが、共和党は増税に反対している状況。インフラ整備の規模について、バイデン政権は当初2兆ドル規模を模索していたが、共和党が無駄で不必要な部分を削減すべきとして主張し、半分の規模となった。

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August 1, 2021, Reuters