国際海洋情報(2021年7月21日号)

1.欧州異常気象:南欧諸国では山火事の対応に追われる

先週、独・蘭・ベルギーを襲った豪雨と洪水とは対照的に、南欧諸国では猛暑と乾燥による山火事への対応に追われている。ギリシャでは、既に約50か所で山火事が発生し、今後も猛暑が続けば山火事の件数はさらに増えるであろうと首相が語り、全国民に対して、山火事のシーズンが終了するまで、山火事に対して十分に警戒するよう呼びかけた。イタリアのサルディニア島では、既に4000ha以上の森林が焼失し、350人の住民が避難する中で、仏と希からも、応援の飛行機が駆けつけて上空から消火活動に当たっている。スペインでは、今年に入ってから全土で、既に35000haが山火事で焼失している。

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July 26, 2021, Reuters


2.南ア:気候変動適応対策について具体的な数値目標を立てることを提案

23日からロンドンで開催された環境大臣レベルの非公式のCOP 26準備会合において、気候適応対策の規模の拡大は、主要議題の5つのうちに1つであったが、南アフリカの環境大臣はCO₂排出削減といった温暖化緩和対策だけでなく、洪水・干ばつ・海面上昇といった異常気象に対して、住民の健康・食料と飲み水の確保・インフラの保全などについて、アフリカや小島嶼国の後進途上国が、適応する能力の向上について客観的な数値目標を立て、具体的には2030年までに50%、2050年までに少なくても90%適応能力を引き上げるという目標を立てるべきであると提案した。パリ協定では、各国の適応能力を高め、気候変動に対する各国の抵抗力を強化することは定められているものの、具体的な目標や達成状況の評価の方法などについて記述されていない。

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July 27, 2021, Climate Home News


3.現代重工:年末までにLNG輸送船を使用して外洋で自律運航実験を実施

現代重工業は、船舶運航の支援のためにKAIST社とともに、Hyundai Intelligent Navigation Assistant System (HiNAS)を開発してきたが、同システムは人工知能(AI)と拡張現実(AR)を利用して、船に設置した赤外線カメラの画像を分析し、夜間とか濃霧など、船員が他の船舶などを視認しにくい環境で、障害物の位置や速度を判定して、航海士を支援することを目的としてきたが、このシステムをさらに改善したVersion 2では、AI自体が船舶の周辺の障害物を自動的に認識して、衝突を回避する自律運航を可能とした。現代重工業はこの改善されたシステムを、現在建造中の全長300mのLNG運搬船に搭載して、太平洋かインド洋で年末までに自律運航実験を実施すると発表した。同船は着岸時の周辺情報を提供するHyundai Berthing Assistant System(HiBAS)も装備して実験を行う。

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July 27, 2021, The Maritime Executive


4.WHOが船員をワクチン優先接種リストに追加

7月16日、WHOはワクチン接種のロードマップを改定し、貨物船に乗務する船員を、ワクチン優先接種のリストに追加した。IMOは以前から、船員のワクチン接種のために、世界中に公正にワクチンを配布することを要請してきたが、WHOの今回の決定に対して歓迎の意を表明した。欧州船主協会(ECSA)と欧州運輸労連(ETF)も、従来から船員に対するワクチンの優先接種を求めてきており、今回のWHOの決定や欧州の複数の国で開始されている船員に対するワクチンの優先接種について歓迎する一方で、まだ船員へのワクチン優先接種を開始していない欧州諸国に対して、船員へのワクチン優先接種を開始するよう求めた。

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July 28, 2021, ECSA