国際海洋情報(2021年7月19日号)

1.G20環境大臣会合:最終合意文書における気候変動目標の文言に合意できず

先週ナポリで開催されたG20エネルギー・環境担当大臣会合は、11月にグラスゴーで開催されるCOP 26を100日後に控え、重要な合意が行われる場と考えられていたが、7月23日、ホスト国の伊の環境大臣は最終合意文書における気候変動対策に関する文言に合意できなかったと発表した。重要な文言の合意に失敗したことは、COP 26において意味のある合意を目指す動きに対し水を差した形となった。同大臣は、気候変動対策のうち2つの重要な問題について、最終的に中国とインドが同意を拒否し、この2点は10月に開催されるG20首脳会合で議論されることとなると語った。第一の論点は、石炭火力発電の撤廃で、過半数の国は2025年までの撤廃を主張したが、数か国が反対した。第二の論点は、気温上昇抑制目標で、数か国はパリ協定の目的をさらに引き上げて、気温上昇を1.5℃以内としたうえで、10年以内に気温上昇をピークアウトさせることを要求した。

原文

July 24, 2021, Reuters


2.中国が非公式にインド人船員が乗り込む船舶の入港を禁止

全インド船員組合によれば、中国政府は外国の船主・海運会社に対して、もし中国の港湾に入港したければ、インド人の船員を乗船させないように、3月21日以降水面下で要請を行っている。この禁止措置に対応するため、いくつかの外国船社はインド人船員の代わりに、フィリピン・中国・ベトナム船員の雇い入れを増やしている。さらに同組合は、インド人船員が接種を受けているインド製のワクチンのCovaxinは、まだWHOからワクチンとしての承認を受けていないため、一定数の海運会社は同ワクチンを接種したインド人船員の乗船を拒否している。

原文

July 25, 2021, The Maritime Executive


3.インドネシア:石炭火力発電所でバイマス燃料の混焼を義務付けへ

インドネシアは世界最大の燃料炭の輸出国で、国内的にも総発電量の6割を石炭火力発電に依存しているが、気候変動対策として、石炭への依存を減らすために、石炭火力発電所において、燃料として一定割合のバイオマス燃料の使用を義務付けることを計画中であると、7月23日、同国エネルギー・鉱物資源省が発表した。国営発電企業のPLNは、2060年までの炭素中立を目標に、石炭火力発電所を順次廃止していくと表明し、バイオマス燃料と石炭の混焼については、52の大規模石炭火力発電所で開始し、年間900万トンの燃料炭をバイオマス燃料に置き換えることを計画している。

原文

July 23, 2021, Reuters


4.インマルサット:2050年の船員について研究報告書を発表

標記研究報告書の概要は以下のとおり。①過去20年間に他の産業で起こった技術革新が海運でも発生し、自動化については、航空がたどった過程と同様に、船舶の運航に従事する船員の数は減少し、船舶職員の仕事は自動運航をモニターするだけになるかもしれない。②3Dプリント技術の普及・気候変動・アフリカの人口の拡大などによって、2050年の貿易ルートは現在と大きく異なるものとなる。③新たな船舶運航形態の変化は、船員のメンタル・技能面の課題、船舶機器・安全・法的課題など多くの新たな課題を生む。④このような新たな課題に対応して、船員に対する訓練や福祉も改善していく必要がある。⑤このため、船員関連団体は、個々の船員に対する支援を強化するとともに、福祉水準の向上のための資金の確保に努める必要がある。

原文

July 26, 2021, Inmarsat