国際海洋情報(2021年7月5日号)

1.Drewry:メタノールは中期的に有望な過渡的な代替燃料

(論説)2023年までの短期で見れば、海運分野におけるGHG排出削減は、エネルギー効率の改善・減速運航・LNG燃料の使用といった手段に当面限定されるが、2025年から2040年といった中期的な対策としてみれば、メタノールは水素やアンモニアのようにゼロ炭素燃料ではないものの、海運の脱炭素化のための経過措置的な暫定燃料として、重要な役割を果たすことが期待される。メタノールは、既存の重油燃料と比較して、GHGの排出を削減できる一方で、取り扱い上の安全性の問題もなく、ほとんどの既存の機関で燃料として使用することが可能である。さらに、燃料の供給や貯蔵といった面でも、給油船や貯蔵タンクなどメタノール用に改修するのは簡単で、世界的に既存の燃料供給インフラを利用することが可能である。メタノールはLNGと同じように引火点は低いものの、LNGのように冷却して高圧をかける必要がなく、ほとんど改造なしに普通の燃料タンクに貯蔵できる。

原文

July 5, 2021, Hellenic Shipping News


2.IEA「ガス市場報告書」:2021年の天然ガスの需要は対前年比3.6%と急回復

IEAが2021年から2024年の天然ガス需要を予測する報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①天然ガスの需要は、経済の回復と平年より低い気温によって急回復し、2021年は対前年比3.6%の増加となる見込み。②2022年から2024年の中期で見ると、石油や石炭からのエネルギー転換需要もあるが、平均需要増加率は年率1.7%と緩やかなものとなる見込みだが、2024年にはパンデミック以前の2019年の水準と比較して、7%の需要増となる。③このように需要の増加は緩やかなものとなるが、IEAが既に発表した「2050年までの炭素中立のためのロードマップ」報告書に示された目標達成のための道筋と比べると、さらなるエネルギーの代替と効率化が必要となる。④したがって、天然ガス業界としては、さらに低炭素のガスの開発に努めるとともに、メタンガスをはじめとするGHGの漏出を最小化する必要がある。

原文

July 5, 2021, IEA


3.EUの環境に適応したエネルギーから原子力を除外するよう独等が要求

欧州委員会の共同研究センターが4月2日に提出した報告書においては、原子力を安全なエネルギーと位置付けているが、独・オーストリア・デンマーク・ルクセンブルグ・スペインの環境・エネルギー大臣は連名で欧州委員会に書簡を6月30日に提出し、EUのグリーンファイナンスの分類上、原子力を融資不適格なものに分類するようよう要求した。書簡では、EUの環境に適合したものを分類する規則(Taxonomy Regulation; TR)においては、引き続き融資を受けられる事業の条件として、「著しい害悪をもたらさない(do no significant harm)」という原則があるが、原子力発電所が安全であるとする欧州委員会の評価は根拠が薄弱で、原子力はTRから除外すべきで、仮に原子力をTRの対象として認めれば、TRの統合性・信頼性・有用性が永久に損なわれると主張している。

原文

July 2, 2021, Euractiv


4.ノルウェーで進むフェリーの電動化

ノルウェーは、自動車の電動化でも先陣を切っているが、ここ数年、船舶の分野でもゼロエミッション船の導入を続けている。これらの電動船はほとんどが、山が多く、フェリーが必要不可欠な交通ネットワークとして利用されている同国西岸の内航フェリーとして利用されており、野心的な船舶からのGHG削減策のおかげで、同国は既に世界で一番多く電動船が就航している国となっている。現在、一部でもバッテリーを動力とする船舶は、世界で274隻あるがその約3/4が同国で運航しており、船舶の動力の転換を進めている公民連携組織のGreen Shipping Programmeによれば、完全電動の自動車フェリーは現在31隻あるが、本年末までに隻数が倍増する予定である。ノルウェーの有名なフィヨルドを見て回る観光フェリーも現在電動フェリーに移行中である。

原文

July 3, 2021, gCaptain (Bloomberg)