国際海洋情報(2021年7月1日号)

1.マースクが現代尾浦造船所に再生可能メタノールを燃料とするコンテナ船を発注

マースクと現代尾浦造船所はVLSFOと再生可能メタノールの両方の燃料を使用できる全長172mで2100TEUのフィーダーコンテナ船の建造契約を締結したと発表した。同船はデンマーク籍となり、2023年半ばに竣工し、マースクの子会社のSealand欧州がバルト海で運航するボスニア湾と北部欧州の都市間のフィーダー航路に就航させる予定で、物流チェーンを完全に炭素中立としたいとする荷主の要請にこたえることが可能となる。メタノールを燃料とする機関は、MAN Energy Solutionと現代エンジン機械等が開発・製造し、米国船級協会が認証する。マースクの大手荷主の過半数は、自社製品のサプライチェーンも含む「科学に基づいた野心的なゼロエミッション計画」を設定し、または設定作業中であり、マースクはこうした大手荷主のゼロエミッション計画に対応していく必要がある。

原文

July 1, 2021, Maersk


2.ネプチューン宣言:船員交代の状況は引き続き悪化

世界経済フォーラムが主体となって採択されたネプチューン宣言では、同宣言に参加し世界の海運部門の9万人以上の船員を管理する信頼できる10の船舶管理者から集めた船員交代問題の現況に関する情報を本年5月から「ネプチューン宣言船員交代指標」として、毎月発表しており、7月の最新状況の概要は以下のとおり。①船上で労働契約が切れた後も引き続き勤務している船員の割合は8.8%で、前月実績(7.2%)と比べて、22%悪化した。②これに伴い、船上で11か月以上継続勤務している船員の比率も1.0%となり前月実績(0.4%)と比べて、2.5倍と急増した。③原因としては、コロナの感染が引き続き拡大し、特に重要な船員供給国で新たな変異種が拡大したため、重要な船員の交代拠点港を持つ国の政府が船員の移動制限を強化した結果、特にアジア地域における船員交代が制約されたためと考えられる。④米国をはじめ一部の欧州諸国では外国人船員に対するワクチン接種も開始されたが、(外国人)船員は引き続きワクチン接種を受けることが困難な状況にある。

原文

July 2021, 世界経済フォーラム


3.「最後の海氷域」も気候変動によって大幅に縮小

グリーンランドの北方沿海域からカナダの北極海の諸島域まで広がる約2000㎢の広大な海域は、最低でも5年の多年生の海氷から構成され、海氷の厚さも約4mと厚いので、「最後の海氷域」と呼ばれ、氷上で子育てや狩猟を行う白熊のような生物にとっては、保護区の役割を果たしてきた。しかし、この最後の海氷域の東部に当たるワンデル海では、2020年の夏季に海氷の50%を失い、観測開始以来、最小の夏季海氷面積を記録した。過去数十年の間、北極海の海流によって、最後の海氷域に海氷が集められて海氷域が拡大してきたが、2020年には、北向きの風が吹いて、海氷をグリーンランドよりさらに北方に押しやり、海面が露出する裂け目から太陽光によって海水が温められ、この温められた海水が最後の海氷域の底の氷を溶かして、氷を薄くしたのが原因でないかとワシントン大学の極域科学センターの研究者たちは推測している。

原文

July 2, 2021, Live Science


4.パリMoU:2020年PSC年次報告書を発表

パリMoUが2020年ポートステートコントロール(PSC)年次報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①2020年は世界的なパンデミックの影響で、パリMoUによるPSC検査・入港禁止命令・出港禁止命令・改善命令の件数はすべて減少した。②入港禁止命令については、2020年に7件の命令が出され、2019年には27件の命令が出されたので、件数としては大幅に減少した。過去3年間では、55隻の船に入港禁止命令が出されている。これを旗国別にみると、モルドヴァ・タンザニア・トーゴ籍の船が最も多かった。③出向禁止命令が出された船舶の割合は、2019年の2.96%から2020年には2.81%とわかずに減少した。出向禁止命令の対象となりうる不具合の件数は1942件で、2019年の2964件から減少した。④旗国別の成績分けでは、問題のない「白」の国は、2019年の41国から39国に微減した。大きな問題がある「黒」の国の数も、2019年の13国から9国に減少した結果、やや問題のある「灰色」の国が16か国から22か国に増加した。

原文

July 1, 2021, Paris MoU