国際海洋情報(2021年6月28日号)
1.北極海(公海)における無規制な漁業を防止する国際協定が発効
6月25日、「中央北極海の公海上における無規制な漁業を防止する国際協定」が発効した。国際協定には、加・露・米・デンマーク・ノルウェー・アイスランドといった北極評議会加盟国ばかりではなく、EU・日・韓・中といった漁業国も加盟している。北極海の大部分は、加・露・米・ノルウェー・デンマーク(グリーンランド)の領海となっているが、北極海の中央部分には、地中海より広大な280万㎢の公海が存在し、1年間の大部分の期間、氷におおわれているため、現状では商業漁業は行われていないが、今後北極海の温暖化が進めば、商業漁業が可能となる可能性があり、この国際協定は問題が実際に発生する前に、無規制な漁業をあらかじめ予防するための国際協定である。本協定は、2018年に署名され、有効期限が発効から16年と定められているが、延長が可能となっている。
原文
June 23, 2021, High North News
2.豪:燃料保障法が成立
豪議会は、石油精製産業を保護し、石油価格を安定化し、雇用を保全するために、燃料保障法案(Fuel Security Bill)2021を承認した。この法律の中心となるのは、燃料輸入事業者と精製事業者に対して、石油・ディーゼル・ジェット燃料について、2022年7月から最低保有義務(MSO)を課し、安定した価格で輸送産業に使用される燃料を確保することを目的としている。さらに石油精製事業者に対して、安定化価格で販売したときに赤字となった際の補償として、燃料保証サービス料(Fuel Security Service Payment: FSSP)の支払いを2027年6月まで保証して、安定した石油精製事業の継続を図る。基幹輸送事業者向けに7月から生産される製品からFSSPの支払いを開始する。このFSSPの支払いによって、石油精製事業で働く1250人の雇用を守るほか、関連する建設作業でさらに1750人の雇用を新たに創出する。
原文
June 29, 2021, 豪議会
3.イケア財団・ロックフェラー財団が途上国における再エネ開発に10億ドル
持続可能な開発目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」を2030年までに達成するため、政府・産業界・金融機関が、「エネルギー協約」を進める作業の一環として、国連は、6月21日から25日にかけて、オンラインで「エネルギーに関する閣僚フォーラム」を開催した。このフォーラム開催にあたり、IKEA財団とロックフェラー財団は、途上国の国民が再生可能エネルギーを利用できるようにするため10億ドルを共同で拠出した。また、ケニア・マラウィ・オランダの3か国は、途上国の国民がクリーンなエネルギーで食事を作れるようコンソーシアムを結成した。Googleは2030年までに同社の全世界の拠点で使用するエネルギーを脱炭素化することを再確認した。
原文
June 26, 2021, UNDESA
4.インド株の拡大で船員交代の状況は悪化の一途
世界海事フォーラムによれば、インド変異株に対応した船員の移動制限の世界的な拡大の影響を受けて、船上で交代ができずにいる船員の比率は、5 月は 5.8%だったのが、6 月は 7.4%に悪化し、今後さらに悪化する見通しである。国際海運会議所(ICS)は全世界で約 20 万人の船員が船上で交代できないか、あるいは、新たに乗務ができずに陸上で待機を余儀なくされている。この結果、ILO の海事労働条約では、最大継続勤務期間が11 か月なのにもかかわらず、最長で 20 か月も継続勤務している船員もいる。ICS によれば、最も影響を受けているのはインド人船員だが、約 90 万人の船員の出身国ではワクチンを製造しておらず、ワクチン接種を受けられるまでは、これらの船員の移動制限が続く可能性がある。一方で、この状況を打開しようとする努力は続いており、1月には、700以上の組織が、船員の福祉と船員交代を促進するための Neptune 宣言に署名し、これまで 60 か国が船員を基幹的労働者に認定し、12 か国が船員に対するワクチンの優先接種を開始し、米・蘭・ベルギーの港湾では、国籍にかかわらず、寄港する外航船舶の船員に対するワクチン接種を開始している。
原文
June 26, 2021, AP News