国際海洋情報(2021年6月24日号)
1.欧州議会がGHG削減目標に法的拘束力を持たせる法律を可決
欧州議会と欧州理事会は、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑制するため、2050年までの炭素中立に加えて、2030年までのCO₂削減目標を55%に引き上げることを既に4月に合意しているが、欧州議会は6月24日、賛成442・反対203・棄権51で正式に、上記の削減目標を加盟国に対して法的に義務づける法案を正式に可決した。この気候法は、今後数十年にわたって、EUの関連法令を拘束することとなる。可決を受けて、欧州委員会はまず7月14日に、この削減目標を達成するために、再生可能エネルギーの整備目標・EU排出権取引市場の改革・新車に対するより厳しいCO₂排出削減基準な度を含む一連の政策パッケージを提案する見込み。2030年までのCO₂削減目標を40%とするこれまでの低い削減目標に沿って、現状のほとんどのEUの法的規制は制定されているため、これらの規制を新たな高い目標に合わせて見直す必要がある。
原文
June 24, 2021, Reuters
2.EU内の天然ガス施設から多くのメタンが漏出・排気
NGOのClean Air Task Forceがオーストリア・チェコ・独・ハンガリー・伊・ポーランド・ルーマニアの200か所以上の石油・天然ガス施設を調査した結果、123か所の事業場で、現在EUとしては何の排出規制もない、CO₂より80倍も強力なGHGであるメタンが漏出または意図的に廃棄されていることが分かった。欧州委員会は、2021年に入ってから、石油・ガス関連事業者に、メタンの漏出量を計測・報告することと、漏出部分の派遣と修理を義務づける規則を新たに提案している。エネルギー業界では、天然ガス貯蔵タンク・LNGターミナル・パイプライン圧縮ステーション・石油ガス製造現場で、恒常的に意図的にメタンが排気され、漏出している。チェコ・ハンガリー・伊・ポーランド・ルーマニアでは調査対象となった施設の9割以上で、メタンの排気・漏出が確認されている。
原文
June 25, 2021, Euractiv
3.ナイジェリアが引き続き海上保険上最も高リスクの海域に認定される
国際海事局(IMB)の統計によれば、ギニア湾は船員にとって最も危険な海域で、昨年世界で海賊に誘拐された船員の総数の95%は同湾で発生した22件の海賊事件によって誘拐され、誘拐された船員はナイジェリア国内に連行されて、身代金交渉の対象となっている。ナイジェリアは、2021年に入ってから、約2億ドルを投じて、航空機・警備艇等を強化しているが、Lloydsなどの保険事業者が集まって、危険海域などを設定する権限を持つ「共同戦争委員会」は昨年の9月にギニア湾の危険海域(listed area)の範囲を拡大しており、範囲の拡大はあっても、ナイジェリア政府の警備強化措置によって、海賊の危険が明確に取り除かれない限り、ナイジェリア領海について、危険海域の取り消しや縮小は検討できないとしている。
原文
June 24, 2021, gCaptain (Bloomberg)
4.シベリアの地表面で 48℃を記録
先週米国西岸のフェニックスやソルトレークシティで猛暑が観測されたが、夏至の日に、欧州のコペルニクス衛星が、東シベリアのサハ共和国のベルホヤンスクの地表面の温度が 48℃(大気温は 30℃)まで上昇したのを観測した。地表温度がここまで上昇すれば、永久凍土を融解し、永久凍土中に含まれるメタンが大気中に放出されるだけでなく、東シベリアにおける建造物のほとんどは永久凍土上に建設されているので、永久凍土の融解による地表面の亀裂などによって建造物の基礎を破壊し、地滑りを発生させたりする。昨年夏もシベリアでは、これまでの最高となる 38℃の高温を記録し、大規模な山火事が発生して、記録的な量の CO₂が大気中に放出された。
原文
June 22, 2021, Gizmode