国際海洋情報(2021年6月23日号)

1.UNESCO:Great Barrier Reefを危険にさらされている世界遺産とすることを提案

豪政府の反対を無視して、UNESCOの世界遺産委員会はGreat Barrier Reef(GBR)を危険にさらされている世界遺産に指定する案を発表した。GBRは2016,2017,2020年に大規模な白化減少に襲われ、豪の報告書によれば、2015年以来、GBRの状態は「ひどい」状況から「とてもひどい」状況となっており、サンゴ礁の崩壊は2009年から2014年の期間と比べても、より早く広範に進んでいる。世界遺産のリストに掲載されている、世界の29か所のすべてのサンゴ礁において白化は進んでいるが、炭素中立化目標を掲げないといった豪政府の気候温暖化に対する取り組みをUNESCOが問題視したため、今回GBRだけを「危機に瀕している」と評価した。UNESCOは気候変動問題について、全地球の問題で特定国の責任ではないと従来は位置づけてきたが、世界遺産の地域の個々の問題処理について、当該遺産を所管する国の責任とみなすようになってきている。今回の勧告では、「パリ協定に従って、気候変動の脅威からGBRを守るためには、あらゆるレベルにおけるより迅速な対応が求められる。」と指摘している。

原文

June 22, 2021, Science


2.世界最大のクルーズ事業者が新たな環境上の目標を発表

6月22日、世界最大のクルーズ事業者であるカーニバル社は、同社が運航するすべてのクルーズ・ブランドについて、対2008年実績比で、2030年までにCO₂排出量を40%削減し、2050年までに炭素中立を達成すると発表した。さらに、2021年末までに対2018年実績比で、使い捨てプラスチックごみの量を半減し、対2019年実績比で、食物廃棄量を2022年までに30%、2030年までに半減することも目標として発表した。また、2030年までに、全クルーズ船の75%に改良型排水処理システムを装備し、また全クルーズ船の60%に、着岸時に陸上電源から電力の供給を受けることができるような受電装備を設置するとも発表した。脱炭素化の手法としては、LNG燃料に加えて、バッテリー・燃料電池・バイオ燃料の使用も進め、2050年までにゼロエミッション船の建造も目指すとしている。同社は、2020年までの環境目標を既に2019年までに達成しており、2011年以来総船腹量が20%増加したにもかかわらず、総CO₂排気量について2011年をピークに減少させている。

原文

June 22, 2021, Carnival Corporation


3.英国気候変動委員会:気候変動対策の進捗状況報告書(2021)

英国気候変動委員会(CCC)が、英国政府の気候変動対策の進捗状況について英国議会に報告したところその概要は以下のとおり。①政府は2020年に歴史的な気候変動に関する目標を発表したが、実現のペースはとても遅い。②パンデミックに伴うロックダウンによって、英国における2020年のCO₂排出量は対前年比13%減少した。③このCO₂排出傾向を持続するためには、炭素中立戦略に裏付けられた政府の持続的なリーダーシップが必要となる。④このためには計画の決定を含むすべての政策について、政府の気候変動目標に合致しているかA Net Zero Testを実施する必要がある。⑤陸上交通・航空・水素・バイオマス・食料の各分野の遅延している計画を速やかに発表する必要がある。⑥発電部門・工業分野における脱炭素化・北海・泥炭・廃棄物からの熱回収などに関する計画を強化する必要がある。

原文

June 24, 2021, Climate Change Committee


4.BIMCO:今後5年間世界の船腹量の伸び率は鈍化し、新造船発注量も低調

HIS Markitの統計によれば、過去5年間は世界の船腹量は年間複合成長率(CAGR)で1.44%増加したが、今後5年間は増加率がやや鈍化して、基本的なシナリオでは年率1.25%隻数にして年間955隻増加する見込み。一方、低成長シナリオでは年率0.75%、高成長シナリオでは1.75%の成長がそれぞれ見込まれる。船種別にみると、LNG運搬船の成長率が最も高く、基本的なシナリオでも4.7%成長が見込まれ、ついでクルーズ船が4.2%、原油タンカーが3.7%と高い成長率が見込まれる。新造船発注量はコンテナ船の発注量は過去14年間の最高を記録しているが、全体でみると低調で、現在過去12年間で3番目に低い状況となっている。

原文

June 24, 2021, BIMCO