国際海洋情報(2021年6月22日号)
1.米・加の海事関係者が海運脱炭素化のためのBlue Sky Marine Coalitionを結成
米国とカナダの船主・造船事業者・金融機関・船級協会・港湾管理者・政府機関・NGOsが、商業的に採算性が取れる水上物流の脱炭素化を達成するために、Blue Sky Marine Coalitionを結成した。創設メンバーには、米国船級協会(ABS)・米国船主協会・Citi Bank・ロイズ船級協会・シェル・ヴァルチラ・DNVなど24機関が含まれ、既存のGetting to Zero Coalitionとも情報共有を行う。活動としては、①船舶運航の効率性の計測②金融・用船③政策・規則・脱炭素化のためのインセンティブ④技術・インフラ・燃料の4分野にわたって活動を行う予定。
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June 22, 2021, Splash 247
2.MEPC 76:国際海事研究開発委員会と炭素課税に関する議論の概要
国際バンカー産業協会(IBIA)による標記報告の概要は以下のとおり。①GHG削減に関する短期的な対策については何とか合意したが、中長期対策としての国際海事研究開発委員会(IMRB)に関する提案と炭素課税に関する提案については進展が見られなかった。②IMRBについては先回会合で示された懸念を踏まえて、改訂された提案が提出されたものの、引き続き、資金の分配方法・委員会のgovernance・影響評価などについて懸念が表明された。③次に2025年から重油燃料に対して、CO₂排出量トン当たり100ドルを課税する提案については、多くの支持意見が表明されたが、IMRBと同じような懸念が表明され、次回会合で継続協議となった。④最後に今後の3段階の作業計画が合意されたが、それぞれの提案について、影響評価や実際のCO₂削減効果を検証するためには、膨大な作業が必要となる。
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June 18, 2021, IBIA
3.MEPC 76:船底防汚塗料のシブトリンの使用を禁止
2008年に「船舶の有害な防汚方法の規制に関する国際条約(AFS条約)」が発効して以来、有機スズ化合物(TBT)は船底防汚塗料として使用できなくなり、代わりにいくつかの新たな殺虫剤が導入されたが、シブトリンはその一つで、バイオファウリングが拡大するのを防ぐために船体に塗布されるようになった。しかし、2019年に、シブトリンは多くの海洋生物にとって、急激かつ慢性的な毒性があり、場合によってはTBTより毒性が高いという指摘がIMOで提起され、シブトリンは海底の土壌に累積して、海洋環境に長期間にわたって悪影響を及ぼすことが判明した。海運業界はシブトリンが禁止されるにあたって、既に船体に塗布されている防汚塗料の除去まで義務付けされることを危惧していたが、日本等によって実施された研究では、船底塗料の耐用期間である5年程度経過した残存塗料の中から、ほとんどシブトリンが検出されなかったことから、単純に新たな塗料を旧塗料の上から塗ればよいこととなった。
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June 18, 2021, BIMCO
4.新たな再生可能エネルギー発電施設の過半数は化石燃料の発電コストを下回る
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が発表した「2020年における再生可能エネルギー発電のコスト」に関する報告書によれば、再生可能エネルギー発電のコストが、技術革新で毎年大幅に低下しており、具体的には、集中型太陽光発電システムについては16%、陸上風力発電施設については13%、洋上風力発電施設については9%、太陽パネル発電については7%それぞれ対前年比で発電コストが低下している。この結果、再生可能エネルギー発電のコストは、既存の石炭火力発電所の発電コストを下回るようになり、2020年に新興国で導入された再生可能エネルギー発電施設だけでも、当該施設の耐用年数の期間中の合計で、1560億ドルのコストの節約をもたらすことになる。現在、石炭火力発電に依存している国においても、再生可能エネルギーへの転換によって、電力需要の増加に対応したうえで、発電コストを節約し、新たな雇用を生み、成長を加速し、気候変動にも対応することができる。
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June 22, 2021, IRENA