国際海洋情報(2021年6月21日号)

1.BIMCO:海洋プラスチックごみを減らす運動を業界で主導

6月10日から17日までIMOで開催されていたMEPC 76では、海洋プラスチックごみ削減に関する議論が行われず、年末のMEPC 77まで先送りされたが、IMOにおける議論の遅延が、海洋プラスチックごみ削減のモメンタムを失わせないように、BIMCOは海運業界として、プラスチックごみを減らすには何ができるか?検討を続け、手始めに、ロンドン国際海運週間で、船舶からの生活排水(grey water)がマイクロプラスチックの排出源になっていないか、規制の役割や、船主・船舶運航者・船舶管理者・船員がどのような対策をとれるかについて議論を行う。スリランカで発生した MV X-Press Peal号事件では、約3兆個のプラスチック粒子(ヌードル)が海洋に流出し、世間の注目を集めているが、IMOにおいては、海洋プラスチックごみ問題に海運活動がどれだけ影響を与えているか、どのような解決策が考えられるかについてどのように議論を進め方ですら決めるのに時間がかかる見込みである。

原文

June 18, 2021, Offshore Energy


2.MEPC 76:13か国がCO₂1トン当たり100ドルの炭素課税に賛成

MEPC 76では、マーシャル諸島とソロモン諸島が提案した船舶からのCO₂排出量1トン当たり100ドル(VLSFO1トン当たり300ドルに相当)の炭素税を課税する案に対し、カカナダ・デンマーク・フィンランド・フランス・ドイツ・アイルランド・ポルトガル・オランダ・スウェーデン・ニュージーランド・ツバルの合計13か国が賛成意見を表明した。この炭素課税により、既存の化石燃料と代替燃料の価格差を縮小することによって、代替燃料の導入を促進し、炭素課税によって徴収された税収も代替燃料利用の促進に使用される。この提案は、10月に開催されるIMOのGHG作業部会でさらに議論されることとなる。

原文

June 18, 2021, Ship & Bunker


3.UNFCC SBsオンライン会合では実質的な進捗なし

例年はCOPとCOPの間に、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)の補助会合(SBs)が、事務局があるドイツのボンで開催されてきたが、昨年はパンデミックの関係で開催できなかったが、本年は、COP26の準備のために、5月31日から6月17日まで、オンラインで非公式(合意結果は非公式のもので何ら拘束力を持たない)形式で開催されたが、会議進行の技術的な問題もあり、ほとんどの重要事項について議論の進展が見られなかった。COP 26自体についても主催国の英国は、参加者のワクチン接種を保証して対面で開催すると約束したものの、実際にどうやって、対面の会合を開催するのか明確な説明がされなかった。途上国やNGOはCOP 26がオンラインで開催された場合、彼らの意見を十分に表明する機会が与えられないのではないかと危惧しているが、UNFCCC事務局は、オンライン会合となった場合でも、通常の対面の会合と同様に、オブザーバーの効果的な参加が保証されるとしているが、途上国におけるインターネット接続や世界各国の時差にどのように対応するかが課題となる。

原文
June 18, 2021, Carbon Brief

4.米議会がコンテナ船社に対し米国輸出貨物輸送の強制を検討

米国下院交通・インフラ委員会では、コンテナ海運会社が、米国からの農産品を積み込まずに、空のコンテナをアジア(中国)に送り返すことによって、米国の輸出事業者を不当に差別しているという非難が、共和党・民主党両党から上がっている。コンテナ船社の業界団体である世界海運協議会のCEOは同委員会で、「この問題の根本原因は米国が輸入する貨物の急増であり、このためアジア・米国間の輸出入貨物量の不均衡が2対1から3対1に達し、アジア発米国行きの運賃の方が、米国発アジア行きの運賃よりはるかに高いため、米国の輸出貨物を時間をかけて積載するより、迅速に空コンテナを送り返した方が、海運会社の利益につながるためである。」と証言した。超党派議員により提出された法案では、海運法を改正して、連邦海事委員会の権限を強化して、同委員会が海運会社に対し、米国発輸出貨物の受付を拒否することを禁止することができるようにすることが盛り込まれている。

原文
June 17, 2021, Insurance Marine News