国際海洋情報(2021年6月17日号)

1.コロナによる塩田港の機能不全により60万TEU以上のコンテナ輸送に影響

専門家の予測によれば、3週間にわたる塩田港における中国当局のコロナ感染拡大防止対策の徹底によって、少なくとも60万TEU以上のコンテナ輸送が影響を受け、加えて、30万TEUの輸出貨物を積載したコンテナが滞留していると考えられる。60万TEUという数は、Ever Given号が6日間スエズ運河を閉鎖したときに影響を受けたコンテナ量の2倍の規模となる。こうした状況を踏まえて、混乱を回避するために、世界の主要コンテナ船社の300便以上が既に塩田港を抜港している。塩田港の機能は70%程度まで回復しているが、6月中は引き続き抜港が続くとみられるため、滞留したコンテナの正常化にはまだ多くの時間がかかる見込み。このような南部中国の港湾の混乱によって、アジア=米国東岸/西岸間の運賃は対前年比少なくとも3倍となっている。

原文
June 17, 2021, Splash 247

2.マイクログリッド用に移動式洋上浮体式風力発電を開発

ノルウェーのOdfjell社やSiemensの子会社が移動式洋上風力発電施設(Mobile Offshore Wind Units: MPWUs)の開発で合意した。このMPWUsは短期間または期間限定で電力が必要な場所に必要な電力をマイクログリッドとして供給することを念頭において開発され、浮体式で必要に応じいつでもどこにでも移動が可能とする。ノルウェーの石油ガス事業者は、2030年までにCO₂を半減することを既に宣言しているが、この目的を実現するためには洋上掘削リグに再生可能エネルギーを供給する必要があるので、MPMUsを開発することとなった。北海の沿岸部から遠く離れた石油掘削リグに陸上から再生可能エネを送電するのは困難で、さらに、プラットフォーム上に炭素回収貯留(CCS)装置を設置するのは高価でかつリグ上に広いスペースが必要となり現実的でない。通常の洋上風力発電施設から給電を受けることは理論的に可能だが、既存の洋上風力発電施設整備計画では、2030年までにCO₂排出を半減するという石油ガス産業の野心的な目標を達成するのに間に合わない。

原文

Jun 18, 2021, The Maritime Executive


3.海運業界:IMO加盟国に対し、MEPC 77におけるIMRB合意を強く要請

国際海運会議所(ICS)・BIMCO等の国際海運業界団体は、6月18日共同声明を発表して、MEPC 76において継続協議となった、国際海事研究開発委員会(IMRB)について、IMO加盟国に対して、MEPC77における合意を強く要請したところその声明の概要は以下のとおり。①MEPC 76において、新たに設立されるIMRBが海運のための50億ドルの研究開発基金を運営するという提案に対して、より多くの国が賛意を表明したことを歓迎する。②しかし、今回の会合で合意が成立せず、継続協議となったことは残念である。③研究開発基金の構想はすでに3年間にわたって検討され、具体化し、すぐにでも合意され、2023年までに実施可能な唯一の提案である。④2050年までに海運から排出されるCO₂の量を半減させるというIMOの目標に加え、米国とEUは同年までに海運の脱炭素化を表明しており、この目標を達成するためには、太平洋・大西洋航路といった遠距離外航航海もできるゼロ炭素船を2030年までに導入する必要がある。⑤しかし、ゼロ炭素燃料を使用して外航航海を実現できる技術は現段階では確立されておらず、迅速な技術開発のためには現状の研究開発体制では不十分である。

原文
June 18, 2021, 国際海運会議所

4.EUエネルギー担当大臣会合:将来の水素輸入量の見通しについて紛糾

6月11日のEUエネルギー理事会(担当大臣会合)では、EUとしての「水素戦略」と炭素中立までの行程について議論が行われたところその概要は以下のとおり。①EUとしての法的拘束力を持つ「水素戦略」は本年後半には正式に決定される予定だが、提案に先立ち、EU各国はそれぞれの水素戦略を説明したうえで、EUの戦略について各国の立場を説明した。②エストニア・仏・ハンガリー・ポーランドの大臣は、EU域内の太陽光・風力発電事業者の支援を得て、水素をEU域外から輸入することに明確に反対し、EU域内で水素を生産することに重点を置くべきと表明した。③EUは歴史的に、ロシアや中東諸国から多くのエネルギーを輸入してきたが、上記諸国は、水素をEU域外国やEEA諸国から輸入することによってさらなる新たな地政学的・技術的な依存関係を作るべきでないと主張した。④一方、独は水素を域外国から輸入するのに積極的で、豪政府との間で、水素連合の結成について、6月13日、予備的合意書に署名した。

原文

June 15, 2021, Euractiv