国際海洋情報(2021年6月16日号)

1.米国:BOEMとUSACEが洋上風力発電推進で連携

米国海洋エネルギー管理局(BOEM)と米国の公共事業を担当する米国陸軍工兵隊(USACE)は、2030年までに洋上風力発電能力を30GWまで引き上げるというバイデン政権の目標を達成するために、連邦管理の大陸棚(Outer Continental Shelf: OCS)における洋上風力発電事業の計画と再検討について協力していくことに合意した。この合意により、BOEMは洋上風力発電事業を評価するにあたっての、追加的な科学的・技術的知見についてUSACEから支援を受けることができるようになる。具体的には、まずヴァージニア州沖の商業的洋上風力発電事業と北カリフォルニア州沖のKitty Hawk事業についてUSACEの協力を得ることとなる。今回の協力は「国内と海外における気候変動危機への対処」という大統領令(第14008号)に基づき、内務省と国防総省が協議した結果、成立した。

原文

June 14, 2021, BOEM


2.欧州委員会とWTPが2050年までの水上交通のゼロエミッション化で連携

水上技術プラットフォーム(Waterborne Technology Platform: WTP)は、船級協会・造船事業者・舶用工業事業者・インフラ関係事業者・水運事業者・大学/研究機関・EU加盟国・EU関係機関などの水上交通関係者が継続的に協議を行うために設けられた技術的なプラットフォームだが、2050年までの水上交通のゼロエミッション化を目的として、2030年までにすべての種類の船舶/輸送事業についてゼロエミッション化の方策を示すため、WTPと欧州委員会は、共同計画パートナーシップを結成する覚書について6月15日に合意し、6月23日の欧州研究開発デーに覚書の署名が行われることとなった。このパートナーシップの結成によって、非欧州の企業によって現在寡占されている、船舶の環境技術関連の市場にEU企業が再参入するためのEU企業の競争力の強化を目指す。

原文

June 14, 2021, Marin


3.EUエネルギー大臣会合:TEN-E規則の改定について妥協が成立

欧州理事会エネルギー大臣会合は、6月11日、欧州の複数国間を跨ぐエネルギーのネットワーク(TEN-E)規則の見直しについて、妥協が成立した。新たなTEN-E規則は、EUの2050炭素中立目標を達成するために、EUの国境をまたぐエネルギーインフラの近代化と脱炭素化を図るとともに、市場の統合・競争力・供給力の確保することを目的としている。新たなTEN-E規則においては、11の優先的な事業と3つの優先的なテーマが選定され、これらの共通利益事業(Projects of Common Interest: PCIs)は、2021年から2027年予算年度のConnecting Europe Facilityから予算が支出される。改訂された規則では、支援を受けられるインフラの種類について、脱炭素化の観点から、洋上風力発電の送電網・水素関連インフラやスマートグリッドなどの新たな事業を追加している。また、新たな天然ガスと石油関連の事業に対する支援は停止し、すべての事業について強制力のある持続可能性基準の導入を義務付けた。

原文
June 11, 2021, European Council

4.マースク:化石燃料だけを燃料とする船舶の新規建造はしないことを表明

マースクの海洋・物流担当のCEOがマースクの今後の新船建造戦略について表明しているところその概要は以下のとおり。①2050年までの炭素中立を達成するために、化石燃料だけを燃料とする船舶は今後建造せず、最低でも化石燃料と代替燃料を共に利用できる機関を持った船舶を建造する。②LNGについてはあくまで化石燃料であり、過渡期の燃料にすぎず、メタノールも炭素を含んでいるが、LNGより良い燃料とみなしており、メタノールを燃料とする船舶を既に発注したところ。③マースクが当初脱炭素化を宣言したときには、それを実現する燃料はなかったが、今では、再生可能エネルギーから生産されたグリーンなメタノールやアンモニアという選択肢があり、完全に脱炭素化したサプライチェーンを構築する道筋が見える。④すべての船舶が、こうした新たな脱炭素燃料を採用するためには、マースクが運航する世界的なネットワークにこうした燃料を十分に供給しなくてはいけないという現実的な問題を解決する必要がある。⑤燃料の価格については、当初は割高になるものの、新たな燃料が普及し、生産量が拡大すれば解決されるだろう。

原文
June 15, 2021, Seatrade Maritime News