国際海洋情報(2021年6月15日号)

1.国連:イエメン沖のFSOからの油漏出防止対策について進展なし

イエメンのホデイダ港の沖60㎞のところに錨泊しているVLCCを改造して1988年から浮体式原油貯蔵積出設備(FSO)として使用されているSafer号はイエメンの国営石油会社が所有していたが、110万バレルの原油を積載したまま、2015年以来一切の必要な保守管理がされておらず、2016年には船級も失い、2020年には機関室が浸水して、緊急修理が行われたが、消火施設は作動せず、爆発を防止するための不活性ガス発生装置も作動しない状況で、いつ爆発し、大規模な油濁事故を引き起こしてもおかしくない状況にある。油濁事故が発生すれば、その規模は1989年に発生したエクソンヴァルデス号の油濁事故の4倍の規模となり、ホデイダ港の閉鎖が余儀なくされ、食料や燃料の輸入が制限され、漁場の半分も損害を受ける見込みで、5年間にわたり合計3.5億ドルの経済損失が発生することが予想されている。IMOが中心となって専門家を派遣し、船の現状調査と必要な修繕・油漏出措置を緊急に講じる必要があるが、フーシ派が政治的な取引材料として、IMOの調査への協力を拒んでおり、過去10日間、関係者の間で集中討議が実施されたが、解決策を見いだすことができなかった。

原文

June 14, 2021, Offshore Energy


2.北海に代替船舶燃料供給ハブの建設計画

デンマーク政府は、北海のボーンホルム島をバルト海を通航する船舶の代替燃料供給基地にする構想を打ち出していたが、これを受けて、Orsted/Wartsila/Bureau Veritas等の企業によるボーンホルム船舶燃料ハブ・コンソーシアムが結成され、バルト海全体の洋上風力発電施設で発電される再生可能電力からグリーンアンモニアなどの持続可能な船舶代替燃料を同島で生産する経済的採算性と、同島沖を通航する6万隻以上の船舶に十分な持続可能な船舶燃料を供給できるか検討することとなった。デンマーク政府は、今年に入ってから、北海に大規模な人工島を建設して、北海周辺の洋上風力発電施設で発電された電力を集約・配電するエネルギーハブを建設する構想を打ち出しているが、ホーンホルム島を2番目のエネルギーハブとすることを予測している。

原文

Jun 14, 2021, The Maritime Executive


3.先進国はCOP26までにより詳細な脱炭素計画と途上国支援策を示す必要

6月13に終了したG7首脳会合は、地球温暖化の最前線で天然災害の危機に瀕している最貧国に対する新たな資金援助計画に合意することができず、環境団体の事前の期待を裏切る結果に終わった。石炭火力発電に対する新規融資の停止は合意されたものの、天然ガスを含むすべての化石燃料を対象とするものとはならなかった。COP26は、2015年にパリ協定が合意されて以来最も重要な会議で、気温上昇を1.5℃以内に抑制するための最後の機会だが、議長国の英国にとってCOP26まで丁度20週しか残されていない。パリ協定でフランスの首席代表を務め、現在、欧州気候基金の代表を務めるTubiana氏は、「先進国は自国の炭素中立目標をどのように達成するか具体的な計画を示したうえで、途上国の気候変動対策に対する追加支援を打ち出すことが、COP26で途上国の支持を得るために不可欠である。」と語っている。

原文

June 14, 2021, The Guardian


4.MEPC76:僅差で短期的なCO₂削減策に合意

現在開催中のMEPC76では、6月14日、短期的なCO₂削減対策について投票が実施され、僅差で骨抜きの(water down)対策が合意された。環境NGOは、合意された対策では、海運から現在排出されている年間10億トンのCO₂は2030年までにさらに最大で16%増えると示唆している。MEPCでは妥協として、輸送単位当たりのCO₂排出量(carbon intensity)を、2023年から2026年までの間、年間2%づつ削減することも合意されたが、拘束力がないため、英・米・EUは合意内容を強く批判した。マーシャル諸島等が提案している1トン当たり100ドルの燃料課税を導入するなどの、中期的な対策については、残りの会期で検討されることとなる。米国は現在議会で独自の海運脱炭素化に関する法律を審議中だが、EUも海運を排出権取引制度に取り込む検討を続けており、EU次第で、中国と米国も同様に排出権取引制度に海運を取り込むことを検討している。

原文

June 15, 2021, Splash 247