国際海洋情報(2021年6月14日号)

1.G7:途上国の気候変動対策に年間1000億ドルの支援を再確認

先進国は2009年に途上国の気候変動対策に対して、2020年まで年間1000億円の支援を行うと約束していたが、実現できなかった。今回のG7サミットでも首脳は、公的資金と民間資金を併せて年間1000億円の支援を2025年まで継続することを確認した。また、米国の提案によって、途上国における石炭火力発電(炭素回収貯留技術を伴うものは除く)の段階的な撤廃について合意し、G7諸国は途上国における新たな石炭火力発電所建設に対する金融支援を停止するとともに、エネルギー転換のため28億ドルの支援を行うことで合意した。G7の合意とは別に、英・独・米3か国は、気候変動の影響を最も強く受ける脆弱な国の適応策についても多額の支援を実施することを確認した。途上国支援以外では、気候変動対策として、G7首脳は①気温上昇を1.5℃以内に抑制する。②このため、2050年までの炭素中立を達成し、③2030年までにCO₂排出量を半減し、④併せて、2030年までに日本の地表と海洋の3割を環境保護区に指定することに合意した。

原文

June 14, 2021, BBC


2.インドネシアで深刻化する海洋プラスチック汚染

最近の研究では、インドネシアは使い捨てプラスチックの大量消費と低いゴミ管理能力が相まって、中国に次ぐ世界第2位の海洋プラスチックごみ排出国となっている。インドネシアは、サンゴ礁をはじめとする世界有数の生物多様性の宝庫だが、過去数十年にわたって、プラスチックごみなどによって生物多様性が危機に瀕している。国連によれば、世界全体で年間800万トン余りのプラスチックごみが海洋に流れ込んでいるが、インドネシア科学研究院によれば、インドネシアからは毎年60万トンの海洋プラスチックごみが発生している。パンデミックによって発生する使い捨てマスクや他のプラスチック製の防護具が状況をさらに悪化させている。2017年に、同国は海洋プラスチックごみを2025年までに最大で7割減らす国家計画を立て、2018年には、ごみ処理のための新法を制定し、2020年には、ミニマーケットにおける使い捨てプラスチックの使用を禁止したものの、昔ながらの市場ではいまだに使い捨てレジ袋が広く使用されている。

原文

June 9, 2021, China Dialogue Ocean


3.制御不能な海運コストが全ての物価を押し上げる恐れ

Drewery Shippingによれば、40フィートコンテナを上海からロッテルダムまで輸送する運賃は10522ドルに達し、過去5年間の同期平均運賃より547%も高くなったが、このような海上輸送運賃の高騰はすべての工業製品・消費物資の価格を押し上げている。輸送需要の増加・コンテナの不足・港湾の混雑・船腹量と港湾労働者の不足などの要因が複合して、全てのコンテナ航路で必要な輸送力が不足している。直近の中国南部の港湾におけるコロナ感染の蔓延はさらに状況を悪化させている。特に長距離ルートの運賃の高騰が目立っており、上海からロッテルダムまでの運賃は上海から米国西岸までの運賃の67%増しとなっている。これまでは、海上輸送運賃が全体コストに占める割合は大きくなかったので、物価上昇への影響はほとんど無視されてきたが、HSBCホールディングスの試算では、海上輸送運賃が205%上昇すれば、欧州地域の生産者価格を2%押し上げる効果があるとされている。

原文
June 13, 2021, gCaptain (Bloomberg)

4.アジア諸国における新たなコロナ拡大が世界の海運・チップの供給を悪化

中国南部の世界でも最大の貿易量を誇る港湾におけるコロナ感染の拡大は、世界的なコンテナ海運のスケジュールに後れをもたらし、台湾やマレーシアの主要セミコンダクター積出港における感染の拡大は、コンピューターチップの世界的な不足をもたらし、自動車産業等の生産に影響を与えている。さらに、今週、米国と中国では物価が、過去10年来の記録となるほど上昇し、今後も物価上昇傾向が続けば、世界の経済成長にも影響を与えることとなる。昨年は、中国・台湾などのアジア諸国は欧米諸国に比べて、パンデミックの感染を制御し、経済的なダメージも少なかったが、ワクチン接種に関しては、欧米諸国に比べて、アジア諸国は大幅に遅れているため、タイやベトナムではこれまで最悪の感染の拡大に見舞われており、これらの諸国では行動規制などの措置が維持されているため、工業生産が影響を受け、消費者の消費も低調となっている。

原文

June 14, 2021, Hellenic Shipping News (Wall Street Journal)