国際海洋情報(2021年6月9日号)

1.全員ワクチン接種・事前PCR検査陰性のクルーズ船から感染者発生

乗客・乗員全員がワクチン接種を受けた最初の北米地域のクルーズ船として、カリブ海のセント・マーチン島から周遊クルーズを6月6日に再開したCelebrity Cruise社のクルーズ船で、船室を共有していた乗客2人が陽性と判定された。すべての乗客は下船前の検査として抗原検査を受けるが、この2名の乗客は無症状で、医療チームの監視のもと隔離されており、同船は予定とおり残りの1日間航海を続けセント・マーチン島に帰港する予定。船内における接触調査が実施され、濃厚接触者に対しては追加検査がされる。同船の650人の乗員と約600人の乗客全員は乗船前にワクチン接種を済ませ、乗船前72時間以内に実施されたPCR検査の陰性証明を提示することが求められていた。すべての大規模クルーズ事業者はこの夏、米国発のクルーズ事業を再開すべく準備を進め、今回陽性者を出したCelebrity Cruise社も、米国疾病管理予防センター(CDC)のガイドラインに従って、すべての乗員と95%の乗客のワクチン接種を済ませて、一番船が6月26日にフロリダのフォート・ローダーデールから出港する準備が整っている。

原文

June 10, 2021, The New York Times


2.デンマーク:グリーンランド等が北極評議会で主体的な役割を果たすことを容認

グリーンランドとフェロー諸島はデンマーク王国の自治領だが、外交と防衛については、デンマークが一義的に責任を負ってきた。6月10日、デンマーク・グリーンランド・フェロー諸島の首脳が会談した結果、デンマークの首相は両自治領が北極評議会でこれまでより主体的な役割を果たすことに合意したと発表した。他の北欧諸国も外交・防衛面での連携を強化するために、両自治政府の代表が加わった新たな委員会を創設することに合意した。

原文

June 11, 2021, Reuters


3.先進国は途上国への金融支援を天然ガスから再生可能エネに転換すべき

持続可能な開発のための国際研究所(IISD)がStep Off the Gasと題して発表した報告書の概要は以下のとおり。①低・中所得国家が、先進国から受けているエネルギー関連の投融資の中で、天然ガス開発事業は風力・太陽光などの再生可能エネルギー事業の4倍以上の資金を集めている。②このような天然ガス開発事業への投資は、途上国をCO₂多量排出型の経済構造として、これらの諸国の今後の経済や世界の気候変動リスクを高めている。③経済コスト的に見ても、再生可能エネルギーのコストは、天然ガスのコストに比べて、既にあるいは数年以内に割安となるので、天然ガス開発は必要なくなる。④再生可能エネルギーによって発電された電力の価格競争力も急速に高まり、電気ストーブなどの電化製品の改善によって、電気による効率的で炭素を排出しない調理が可能となっている。⑤途上国は、再生可能エネルギーで発電した電力を受け入れるために、既存の脆弱で不安定な送電網を改善するなどの、クリーンなエネルギー事業に対する、国際的な金融支援を必要としている。

原文

June 2021, International Institute for Sustainable Development


4.米国:北欧諸国主導の2050年までの海運脱炭素化イニシアティブに参加

ケリー気候変動問題大統領特使は、2050年までに海運の脱炭素化を目指す国際的な取り組みに米国も参加すると4月に表明したが、米国エネルギー省の関係者はロイター通信に対して、米国はデンマークとノルウェーと協力して、環境に優れた海事・エネルギー技術の開発を加速化すると表明した。具体的には、再生可能エネルギーから生産された水素・アンモニア・メタノールや改良されたバイオ燃料など、生産から燃焼まで一切CO₂を排出しないゼロエミッション燃料を燃料とする船舶を、2030年までに、外航船の5%(使用燃料量ベース)または最低200隻まで拡大する。デンマークのビジネス省の大臣は、船主が船を更新するときにゼロエミッション船を選択するのが普通の選択になることを目指すとも表明している。英・仏・星・韓・印等も情報共有の観点からこのイニシアティブに協力することを表明している。世界海事フォーラムとマースクもこの事業に別途参加している。

原文

June 11, 2021,Reuters