国際海洋情報(2021年6月8日号)

1.船級協会等関係23社がアンモニア代替燃料の共同研究グループを設立

IMOの脱炭素化目標達成に貢献するため、船舶代替燃料としてのアンモニアの共通の課題を研究するため、エネルギー・鉱物・電力・化学・港湾ターミナル・海運・造船・舶用工業・燃料供給・船級などの関連分野を代表する23社が6月11日覚書を締結した。23社のうち、わが国からは、日本海事協会・川崎汽船・三井E&Sマシナリー・日本シップヤード・NSユナイテッド・宇部興産・上野トランステック・伊藤忠エネックス・伊藤忠が参加している。共同研究は①NH₃燃料船の安全評価②NH₃給油の安全評価③NH₃燃料の仕様④NH₃製造に伴うCO₂発生量などについて研究するとともに、NH₃製造事業者・関連する国際機関・燃料供給港の港湾管理者/規制当局当とも意見交換を実施する予定。

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Jun 11, 2021, The Maritime Executive


2.全てのG7諸国の株式指標がパリ協定の目標を未達成

UN Global CompactとCDPがScience Based Targets Initiative (SBTi)のために作成したG7諸国のパリ協定目標達成状況を各国の株式指標に基づいて分析した報告書をG7首脳会合に合わせて、6月10日に発表したところその概要は以下のとおり。①すべてのG7諸国の株式指標が、パリ協定の2℃目標達成に必要な軌道を超えて(2.95℃)おり、4か国の指標は3℃を超えている。②SBTiに参加している企業の割合が多いほど、CO₂削減率が高い。(独のDAX 30では、指標に採用されている企業の71%がSBTiに参加しているため上昇見込み温度は2.2℃だが、反対に、加のSPTSX 60に採用されている企業の1%以下しかSBTiに参加していないため、上昇見込み温度は3.1℃となっている。)③SBTiに参加している企業は既に大幅なCO₂排出量の削減を実行しているが、それ以外のすべての企業もパリ協定の1.5℃目標達成に必要な軌道に沿って、迅速にCO₂排出削減に取り組む必要がある。

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June 9, 2021, UN Global Compact


3.EU:「気候変動対策社会基金」の創設を検討

欧州委員会は、7月に気候変動対策のパッケージを提案する予定だが、陸上交通と建物の暖房を排出権取引制度の対象に新たに組み込むことについては、一部の加盟国や欧州議会の議員から、ガソリンや暖房のための燃料の値上げを招いて、低所得の経済的に弱い階層の人々の打撃となるのではないかという懸念が表明されている。これに対し、欧州委員会で気候変動対策の責任者である副委員長は、6月9日、欧州経済社会委員会で、気候変動対策の強化の結果、家庭が燃料費の高騰等の影響を受ける場合には、「気候変動対策社会基金」を創設して、最も社会的に弱い人々が経済的な影響を受けないよう補償すると表明した。具体的には、陸上交通と建物の暖房を排出権取引制度の対象にすることによって得られる収入の一部を特別基金として、加盟国がエネルギー転換に伴って影響を受ける国民を救済するために使用できるようにする。

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June 10, 2021, Euractiv


4.ReCAAP ISC:5月月間報告書

標記報告書の概要は以下のとおり。①アジアでは、5月中に4件の武装強盗(1件は未遂)事件が発生した。公海上の海賊事件は発生しなかった。②4件中3件は、シンガポール海峡で、1件はインドのディウ沖合で発生した。③4件中3件は、CAT 4の事件で、賊は非武装で乗組員にもけががなかった。④CAT 3の1件は、シンガポール海峡を通航中のばら積み船で発生した。4人の賊が乗船し、機関室にいたところを当直の機関員に発見され、賊の一人は刃物で機関員を脅したが、危害を加えず、4人とも何も取らずに逃走した。⑤今年に入ってからの武装強盗事件の総件数は28件(うち2件は未遂)で、前年同期比で、45%の減少となった。

原文

June 11, 2021, ReCAAP ISC