国際海洋情報(2021年6月7日号)

1.英国の大型クルーズ船がスコットランドへの寄港を拒否される

英国では、コロナを含む健康保険政策はイングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドがそれぞれ独立した権限を持っているが、乗客約900人を乗船させた大型クルーズ船(MSC Virtusa)は、スコットランド寄港を含む7泊8日の英国内クルーズを実施する予定で、今週初めにイングランドのリバプール港を出港し、スコットランドのグリーノック港に9日に寄港する予定であったが、直前にスコットランド政府の判断で、スコットランドへの寄港が禁止された。同政府は、クルーズについてばかりでなく、より広い旅行制限の観点から、スコットランド内のすべての地域の感染警戒度がレベル1に下がるまでは、国内クルーズの再開は認めないと決定した。同船の定員は6000人を超すが、social-distancing(安全距離の確保)の観点から、乗船客数を900人以下に制限して出航していた。同船からのスコットランド人旅客の下船や同港における同船への新たな旅客の乗船も当然認められない。乗船中の旅客はすべて英国居住者で、全員ワクチン接種を終え、直前のPCR検査も全員陰性だった。

原文

June 9, 2021, BBC


2.比で全船員に対して7月から3か月でワクチン優先接種

比政府は、7月1日から、過去3年間に乗船実績がある約73万人の同国人船員に対して、7月1日からワクチンの優先接種を開始すると発表した。同優先接種は3か月以内に完了することを目的としている。同国内の一般国民に対するワクチン接種には中国製のワクチンが使用されるが、船員に対する接種にはファイザーかモデルナ製のワクチンが使用される見込み。中国・ロシア・インドもすでに自国民の船員に対するワクチン接種計画を発表している。

原文

June 9, 2021, Splash 247


3.コロナの感染拡大で中国南部での港湾における混乱が拡大

2週間前に塩田国際コンテナターミナル(YICT)から始まった港湾荷役の混乱は、コロナの感染の拡大により、珠江デルタ地域の蛇口や南沙といった港湾の荷役効率も大きく低下させている。マースク等のコンテナ海運会社によれば、塩田港や蛇口港がある深圳市、南沙港がある広州市におけるコロナ感染は拡大を続けており、コンテナ荷役の混乱が継続している。YICTにおいては地元当局が繰り返し実施する消毒や検疫によってコンテナの滞留が顕著となっており、港湾荷役効率は平常時の約3割の水準で、14日間程度のスケジュールの遅延が予測されている。

原文

June 8, 2021, gCaptain (The Loadstar)


4.エアバス:ほとんどの航空会社が2050年まではこれまでのジェットエンジンを使用

2月にエアバス社が欧州委員会の副委員長に、今後の航空機の脱炭素化の見通しについて説明した資料が、情報公開法に基づき、6月10日公開されたところその概要は以下のとおり。①2035年までに、最初の商業的なゼロエミッション航空機を開発する。②このゼロエミッション航空機は、2035年から主として地域航空や短距離の航空路線に使用される見込み。③中長距離路線については、2035年以降も少なくとも2050年までは、現在の高効率ガスタービンエンジンが改良を重ねて使用し続けられる見込み。ライバルのボーイング社も、2050年までに航空機燃料として大規模に水素を導入する可能性を否定している。一方、仏財務省は、現在のA320の後継機として、水素を燃料とする航空機を2033年から2035年までの間に実用化することを目指すとしているが、エアバス社はA320の大きさや航続距離、水素供給施設を世界中に整備しなくてはいけないことから、A320の後継機が水素を燃料とするのは困難で、経過的な低炭素化措置として、既存の機体で使用可能なバイオ燃料などの使用の促進など方が現実的な対策だとしている。

原文

June 10, 2021, Reuters