国際海洋情報(2021年6月2日号)

1.地球温暖化により湖の生物多様性が大きく影響

2500種類の生物が生息する最大の湖であるバイカル湖を筆頭に、全世界で1.17億の湖があるが、河川と合わせて湖は面積的には、地球の表面積の1%を占めるに過ぎないが、生物の全種類の1割が生息する生物多様性の宝庫である。しかし、1970年以降、鳥類・魚類・両生類・爬虫類・哺乳類を含む脊椎動物の個体数は、湖の水の汲み上げ・汚染・侵略性生物・病気によって、83%も減少した。湖の表面の水温が5日以上、過去の平均水温より超過することを「湖の熱波」と呼び、最近になって発生した現象だが、今世紀末には、熱波の期間が3倍から12倍に長期化するとともに、平均水温より0.3℃から1.7℃も上昇することが予想される。特に赤道周辺の湖では1年中熱波状態に置かれる可能性があり、小規模な湖は小さくなり、そこに生息する生物とともに消滅する可能性がある。世界の393の湖を対象にした調査では、1981年から2017年の間に、湖の平均水温が10年ごとに0.39℃のペースで上昇しており、それに伴い水中酸素濃度も、表面付近で5%、マス・カワメンタイ・サケが生息する水深の深いところで19%低下しており、これらの魚類の生息に大きな影響を与えている。

原文

June 7, 2021, The Conversation


2.マースク:CO₂1トン当たり150ドルの炭素税の課税を提案

世界最大の船舶燃料の購入者であるマースクのCEOは、化石燃料と低炭素代替燃料の間の価格差を解消するため、船舶から排出されるCO₂1トン当たり150ドル(重油燃料1トン当たり450ドル)の炭素課税の導入を提案した。10日から開催されるIMOのMEPC76では、様々なCO₂削減策について討議される予定だが、CO₂削減に最も積極的なマーシャル諸島等の提案でもCO₂1トン当たり100ドルの炭素課税であるが、マースクの提案はこの提案を大幅に超える内容となっている。マーシャル諸島等の提案は多くの支持を受ける可能性は少なく、MEPCで短期的CO₂削減策としてさらなる進展が見られなければ、EU/ETSの海運への拡大適用など地域的な措置の導入可能性が高まり、EUで海運が排出権取引制度の対象になれば、英国・中国・シンガポール等も同様の措置の導入を検討していると報じられている。

原文

June 3, 2021, Ship & Bunker


3.EU: 再生可能エネ事業に対する国家助成の規制を緩和

EUにおいては、加盟国間の公正な競争の確保の観点から、企業に対する国家助成について厳しい規制が課されているが、EUの2050年炭素中立目標を達成するため、再生可能エネルギー事業については、国家助成に関する規制を緩和し、最大で100%国家助成をすることを可能とするため、今年末の承認を目指して「気候変動・エネルギー・環境分野における国家助成ガイドライン(EEAG)」の改正を検討中であると、6月7日、EUの競争政策担当コミッショナーが表明した。具体的にはクリーンな交通と建物のエネルギー効率の改善のためにEU加盟国が新たな助成制度を導入することと、生物多様性の保全について100%の国家助成を行うことを認める。天然ガスに関する新事業も2030年と2050年までのCO₂削減目標にかなう限り、今回の規制緩和の対象となる見込み。

原文

June 7, 2021, Reuters


4.米海軍の試験船が4421海里の自律運航に成功

米国防総省の2番目の自律運航(Ghost Fleet Overlord: GFO)試験船がメキシコ湾からパナマ運河を経由してカリフォルニアまで4421海里の自律運航に成功した(パナマ運河通航時は有人運航だったので、自律運航率は98%)。GFO計画は2019年9月に開始され、現在は、試験の第2段階で、政府が開発した指令管理システムとシステムを搭載する艦艇の統合に焦点を当てつつ、より複雑で難しい海軍の運用試験を行っている。第2段階の試験は2022年の前半に終了する予定で、その後2隻の試験船はすでに数隻の自律運航船を運用しているサンディエゴの海上開発船隊(Surface Development Squadron)に配属され、さらなる試験が行われる予定。海軍は2023年度から開始する大型無人海上船(Large Unmanned Surface Vehicle: LUSV)開発計画の一環として、さらに2隻を自律運航船に改装する予定。

原文

June 7, 2021, USNI News