Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第440号(2018.12.05 発行)

MELの取り組み ─ 東京五輪を見据えて

[KEYWORDS]水産エコラベル/持続的利用/東京2020オリパラのレガシー
(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会会長◆垣添直也

水産エコラベルが誕生してから40年余。今や世界には140を超えるラベルが乱立する。
かつて「世界に冠たる」とその存在を誇示した日本の水産業は、世界の流れとなった水産物の持続的利用に関しては大きく出遅れた。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催は、日本社会において持続可能な考えと行動が共有できるまたとない機会である。
MELは「日本発の世界に認められる水産エコラベル」として持続的社会定着に貢献できることを願っている。

「長い旅」の始まりから水産エコラベルの時代へ

1972年は人類にとって節目の年であった。ローマクラブが「成長の限界」(副題=人類の危機)と言うレポートを世に問うたのはこの年の5月である。一方、国連を舞台にした地球問題への取り組みも進んでおり、6月にスウェーデンのストックホルムで第1回国連人間環境会議が開催された。この会議は、前文7項と26の原則からなる『人間環境宣言(ストックホルム宣言)』を採択した。この中に、「再生可能な資源を生み出す地球の能力の維持、回復、向上」が謳われた。この1972年から始まった「長い旅」は、ゆっくりではあったが着実に歩を進め、10年後の1982年に国連海洋法条約の採択、さらに10年後の1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議でアジェンダ21を採択、そして1995年には国際連合食糧農業機関(FAO)総会における「責任ある漁業に関する行動規範」採択に辿り着く。この流れの中、ヨーロッパにおいて1997年にWWFとユニリーバ社の支援の下、MSC(Marine Stewardship Council)が水産エコラベルの旗を掲げ水産物の持続的利用の時代の扉を開いた。
FAOは、1995年の「責任ある漁業に関する行動規範」から遅れること10年、2005年に開催された水産委員会において『水産エコラベルに関するガイドライン』を採択した。このガイドライン採択をきっかけとして、世界は一気に水産エコラベルの時代に入って行くことになる。そして今や、水産エコラベルは世界で140以上が競う、乱立とも言える状態となっている。
水産エコラベルの乱立は利用者である事業者、あるいは消費者にとって混乱や不経済を招く元となる。そこで、ヨーロッパで、2013年に水産エコラベルの信頼性確保と普及・改善を目的とする国際的プラットホームとしてGSSI(Global Sustainable Seafood Initiative)が設立され、国際基準の開発およびこの基準に沿って各認証スキームに承認を与える活動を開始した。

「日本発の世界に認められる水産エコラベル」をつくる

日本では、FAOのガイドライン採択を受けて2007年に有識者による検討を経てマリン・エコラベル・ジャパンが一般社団法人大日本水産会内に設立され、漁業認証と流通加工認証を開始した。水産エコラベルに関する素地が全くと言って良いほどなかった日本において、苦労の末、活動開始から9年間で28の漁業と46の流通加工事業者の認証を行ったが、その活動は充分な社会の認知を得るに至らず存在感は甚だ心許ないものであった。
2016年5月に開催された自民党水産政策小委員会(当時)において、大日本水産会と水産庁に対し、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020オリパラ)への対応と水産物輸出拡大への貢献ができる仕組みへの改革が要請された。直ちに、有識者検討会が組織され、海外の先進事例を調査した結果、世界の信頼を得るためには国際標準化が避けて通れないことが答申された。大日本水産会と水産庁はマリン・エコラベル・ジャパンを大日本水産会から独立させることを決定し、受け皿としての一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会を2016年12月に設立、旧組織による認証者を引き継いで活動を開始した。以来1年10か月、マリン・エコラベル・ジャパン協議会(略称:MEL協議会)は、試行錯誤の上、立ち位置を「日本発の世界に認められる水産エコラベル」と定め、自らの変革を世界に訴え国際標準化の壁に挑戦することとした。
MELは生産段階認証(漁業と養殖)、流通加工段階認証の規格と審査の手引き、審査シートの開発と並行してスキームオーナーとして自らのガバナンスおよび管理体制を整えるとともに審査機関の決定、審査機関に対する要求事項作成等に取り組むことになる。国際標準化を目指すMELとしては、まず自らの自律と自立の基礎を固め、認証機関、認証取得者の実態を把握した上でGSSIへの承認を申請することが求められた。
MELの国際標準化=「世界に認められる」をイメージ図で示すと次のようになる。

■世界に認められる=MELが目指す国際標準化
内側の青線の枠に囲まれた部分が旧組織として日本国内で完結していた仕組みであり、外側の茶色の線の部分は、MELがGSSIの承認を得ることと、MELから指名された審査機関がその審査能力について国際認定を得ることにより国際標準化の条件が整うことを示している。現在、世界の主要水産エコラベルのうちMSCを含む6つのスキームが既にGSSIの承認を得ている。

東京2020オリパラをテコに日本の水産物の素晴らしさを世界に発信する

■MELのロゴマーク
MEL協議会が商標登録しているロゴマークの使用は、認証取得者に対して管理規定に基づき許諾する。

世界の動きから大きく遅れてスタートした日本の水産エコラベル制度であったが、2017年には日本政府の主要水産政策に位置付けられ、東京2020オリパラのレガシーのひとつとして日本社会への定着に向け動き出した。
MELでは、日本の水産業の特長は多様性(自然、生物、産業、食文化)にあると考えている。この特長と持続的利用への多方面からの取組みを磨きつつ世界に発信するとともに、東京2020オリパラを機会として認証取得者と協働して世界の人々に日本の水産物の素晴らしさを実感してもらい、帰国後もMELのロゴマークを通して日本の水産物の消費を積極的にリードするファンとなっていただくことを願っている。
MELは水産エコラベル認証の運営主体として、まず国際標準化の第一歩であるGSSIの承認を東京2020オリパラ開会の1年前の2019年春までに取得することに全力を挙げる。並行して、認証機関である(公社)日本水産資源保護協会の国際認定取得、認証機関の複数化、審査員の育成、認証取得者への支援等々、国際標準の水産エコラベルとしてふさわしい行動をとることで、生産者、流通加工事業者、消費者そして何より社会のお役にたてる水産エコラベルを作り上げ、そのことを通して日本の水産業の新たな発展に資することを期している。
水産エコラベルは人類が「長い旅」を通して生み出した叡智の結晶である。 自らと人類の未来のために、ご一緒に着実に前に進もうではありませんか。(了)

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