事業紹介

2007年
事業

ラオスにおける農業経済学の研究能力強化

事業内容
ラオスでは、国内総生産(GDP)の5割強を占める農業部門の近代化が経済開発の最重要課題のひとつです。そのためには灌漑などの技術面だけでなく、流通や税制などの諸側面からの研究も必要です。本事業は、ラオスの農業セクター近代化に必要な知的基盤の強化を目指し、ラオス国立大学の農学部と経済経営学部が行う農業経済学分野の共同研究を支援し、同分野の研究能力の強化を図ろうというものです。これまでの3年間に、両学部の若手教員20人を対象に、ワークショップ、事例調査研究、論文執筆、近隣国の視察研修などを行ってきました。
事例調査研究では、早稲田大学の弦間正彦教授、タイ・チュラロンコーン大学のミャ・タン教授、タイ・コンケン大学のピアンサック・パックディ教授らの指導の下、両学部の若手教員が需要供給関数などの計量経済学の手法を用いて、芳香植物、キャッサバ、サトウキビ、トウモロコシの4種類の農産品の栽培状況と生産性(2005、06年度)および流通システム(07年度)に関する調査研究を行いました。また06年度はベトナムと日本、07年度はタイで視察研修を実施しました。タイとベトナムでは対象農産品の生産、加工、管理システムや用途の多様化による付加価値の創造、協同組合や企業などとの連携による市場競争力の強化、日本では農業経済学の研究・教育の現状について視察を行いました。
事業最終年度である本年度は、一連の活動の結果を農産品別の報告書4本にまとめるとともに、08年3月、ビエンチャンで研究成果発表のための報告会を開催しました。国連食糧農業機関(FAO)など国際機関、ラオス国立農林研究所、ラオス国立経済研究所、メディアなど関係者44人が出席するなか、農産品別の地域別生産高、生産性、流通、需給関係の現状分析や政策提言の発表が行われました。研究の成果は、ラオス国立農林研究所が発行する学術誌や「ビエンチャン・タイムズ」でも紹介されました。 また、ラオス国立農林研究所の協力を得て、調査研究の成果をもとに農業経済学の教科書が作成されました。
事業開始当初は、教員の間で計量経済学の手法に対する戸惑いもみられましたが、3年間の活動を経て学術ジャーナルに掲載可能な高レベルの報告書を作成できるまでに至りました。また、一連の共同作業を通じ、海外の大学との関係も強化されました。ラオス国立大学と早稲田大学の間では近く協力の覚書が交わされ、早稲田大学博士課程への研究者の派遣が期待されています。さらにコンケン大学とは、農業経済分野の教員と学生の交換が計両されています。

事業実施者 Faculty of Agriculture, National University of Laos(ラオス国立大学農学部/ラオス) 年数 3年継続事業の3年目(3/3)
形態 自主助成委託その他 事業費 7,410,822円