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[ワークショップ全文⑤] 「地域社会の多様性とムスリムコミュニティーに関するワークショップ」
~ミャンマーでの調査結果を事例に~」(2017年3月28日開催)【斎藤紋子氏報告4/4】

2000.04.01

最後にヒンドゥー教の寺院に行った時の写真もありますが、最後にボータタウン・パゴダというところに行って、ここで仏教の歴史を聞き、このパゴダの歴史を聞きというようなこともしたということです。おそらく一番初めにヒンドゥー寺院に行っているので、ここでもヒンドゥー教の司祭の話を聞きというようなことで、ボータタウン・パゴダだけ場所的には離れていたようですが、それ以外はけっこう近いところ、一つの通り沿いに集中していたところを選んで回って、説明をして、お互いに理解を深めるというようなことをしたとそうです。  相互理解はもちろんですけれども、イスラームに対する誤解を払拭する必要があるということで、Peace Cultivation Networkというのはムスリムが主催している団体ですけれども、ここはこういった活動を積極的にやっていきたいというふうに言っていました。

これ以外に、ムスリムの人たちがどのような生活をしているのかが今までの説明だと分かりにくいと思いますので、写真を中心に紹介させていただきます。まず礼拝ですけれども、これはマンダレーのモスクの写真です。日が暮れてしまって、外からはあまり写らなかったので、中に飾ってあった、植民地時代に建てられたモスクの絵を映しました。周りはビルが建ってしまっていますけど、今もこういった外観の、マンダレーのダウンタウンにあるモスクになります。

ここは男性しか礼拝ができないので、私は写真だけ撮らせてもらったんですが、基本的に礼拝の時間は男性だけやってきます。体を清めて、足、手を洗って、顔を洗って、その後、礼拝が始まります。これは夕方6時前後の礼拝だったと思いますが、このぐらいの人数、ダウンタウンであることもあって、結構な人数が集まっていたと思います。

左上は普通に礼拝しているところですが、左下は、この礼拝の部屋の隣に、足が痛いとか、腰が痛いとかで下に座れない人のために椅子が用意されていたり、ちょっと遅れてきて中に入るのを遠慮する人はここで一緒に礼拝をするような場所が設けられています。人数が多ければ、もちろんこちらでも普通の礼拝をするのですが、一応、椅子などが置かれているので、どんな人が来ても対応できるような感じになっています。ここも第二次世界大戦中に焼けたので建て直したと言われているモスクになります。

もう一つ、先ほど言った、女性の礼拝ができるモスクは、ヤンゴンにあります。インドの最後の皇帝がヤンゴンに連れてこられたのですが、その皇帝が祀られているモスクということで、観光地化をねらって、ミャンマー政府はここの管理委員会に普通の役人をどんどん送り込んでいるのですが、観光地化だけは阻止したいとムスリムが頑張っているようなモスクです。観光客が行けば、もちろん見せてくれますし、観光が駄目だと言っているわけではないのですが、ヤンゴン管区域の政府に接収されるのだけは嫌ということで、普通のモスクとしての機能を保っているという感じです。

先ほど言ったように、人数が多いので、男性はこの上の部分、こちらで礼拝をします。女性は、ここの地下で礼拝をするという形になっています。女性が礼拝できるモスクは限られているので、わざわざこういうところに出てこられる、車のあるような人、もしくはバスを乗り継いででも移動できる人しか来られないのですが、金曜礼拝ともなるとそれなりの人数が集まります。  それから、こちらのモスクでは、男性は貧しい人もけっこう来ていて、ダウンタウンに近いので、「もし食べたければ、ご飯も出しますよ」と、ご飯を提供しています。こちらに字が書いてあるのは、今日の寄付は誰々ですよと書いてあるものが貼ってあります。男性中心ですけども、ここでご飯を食べられるようになっています。かたや、一方には喫茶店もあって、モスクでご飯を食べない人はここの喫茶店でお茶を飲むなり、何か食べるなりできることになっています。

それから、一般の子供たちの様子です。ここは、暮らしている人たちの中でムスリムが多い地域ということで、ダウンタウンから少しだけ離れたところで撮影をさせてもらいました。ムスリムがたくさん住んでいますけれども、仏教徒も一緒に住んでいますので、子供たちは、放課後、ムスリムも仏教徒も一緒に遊ぶということです。それから、あまりたくさんはありませんが、このように女性のスカーフを売っていたり、ムスリム用のカレンダーが売っていたりとか、そういったムスリム用品も売っているお店も、これはたまたまこの地域のモスクがあるんですが、モスクの近くにあります。

そのお店の向かい側の通りにモスクがありまして、ここにかなりの子供が通って、アラビア語学校、コーラン学校が夜に開かれることになっています。こんな感じで、子供たちがたくさん集まって、低い机で、バーッと集まって座ると。近くでこういった子供たちを少人数で集めて教えていると、コーランを教える時に礼拝の仕方なんかも教えなければいけないのですが、そうすると、「普通の家で集団礼拝している、けしからん」という話になってしまうため、普通の家ではできないので、結局、こういったモスクなどの大きい場所があるところに子供たちが集まってきています。集まったら集まったで文句を言われるのではないかというふうに危惧をしながらも、個人宅ではできないので、こういったところで学校を開いて、アラビア語の学習、コーランの学習をしているということです。

右下を見ていただくと分かると思いますが、小さい子供のサンダルがたくさん並べてありますが、すごくいっぱいいます。ここの学校は校舎がここだけでなくて、モスクの中なので、部屋をいっぱい分けているのですけれども、トータルで800人ぐらいの子供が集まり、帰りもみんなで注意しながら、「端っこに寄って、車が来るよ、危ないよ」なんていうことを言いながら帰しているということです。

こんな感じで、右の下は帰るところですけれども、ばらばらと子供がいっぱい出てきて、親も迎えに来るというような感じで、かなりたくさんの子供たちが勉強しているということが分かりました。

最後になんですけれども、2011年に民主化されて、いろいろなことが前向きに動いているというふうに言われるミャンマーですけれども、宗教という面、もちろん民族対立も含めてですけれども、宗教による違いを乗り越えて、国民の一員としてミャンマー社会に暮らせるというふうに、実はムスリムは考えていたのですが、実際にはそううまいことはいかずに、さまざまな問題が生まれていて、実際には以前よりも緊張感が増しているような状態にあります。

ただし、いろいろ言いましたけれども、仏教徒が全員反ムスリムということではもちろんありませんので、先ほどの、多宗教間での相互理解を深める催し物などに参加してくれるお坊さんもいますし、スピーチをしてくれるお坊さんもいます。そういった人たちと協力して、これから良い社会を作っていきたいと強く思っているのが多くのムスリムで、これまであまり政治には関われなかったということもあり、関わってきていないムスリムも多いのですが、やはり今後、自分たちがより良い生活をしていくためにどうしたらいいかというのを少しずつ考える人が増えてきているのではないかと言っています。

今後、共存に向けてどうすべきかというのは、あまりここでは触れていませんが、ヤカイン州のロヒンギャの件を含めて、現政権がどうしていくかと。一筋縄ではいかないので、スーチーさんが何もコメントを出さないとか、いろいろ報道にはありますが、コメントが出せない状況にあるというのはムスリムも実は理解をしています。うまく落とし所を見つけていくというのは簡単にはできないと思いますが、現政権の対応にも注目していくべきかなと思っております。

以上になります。ありがとうございました。



>ワークショップ全文⑥【日下部尚徳氏コメント】