海洋に関する情報発信

【Ocean Newsletter】最新号

第425号(2018.04.20 発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センター教授の逸見泰久氏から、環境省が2017年3月に公表した「海洋生物レッドリスト」について、ご寄稿いただいた。同リストでは、魚類、サンゴ類、甲殻類、軟体動物(頭足類)、その他無脊椎動物の5分類群の56種が絶滅危惧種に指定された。すでに陸域と陸水域の野生動物については、3,634種の動植物が絶滅危惧種に指定されているのと比較すると、その数は少ない。その背景に、沖合に生息する哺乳類や貝類、さらに水産庁が資源管理しているクロマグロや大型鯨類など94種が評価対象になっていないことや、生息情報に関するデータが大幅に不足しているという海洋生物独自の問題があるとされる。海洋生物から多くの恩恵を受けているわれわれ一人ひとりに、海洋生物レッドリストの問題点と今後の課題について熟考を求める論稿である。
◆1995年に世界初の北極無動力横断(犬ぞりとカヌー)を成功させ、女性冒険家としても知られる早稲田大学教授の高野孝子氏から、海とともに暮らすグリーンランドとヤップ島の人々に影響を与えている気候変動に伴う海面上昇の問題について、ご寄稿いただいた。いきいきとした筆致で伝えられるこれらの島々の海の環境変化を前に、われわれに何ができるのか、これまた考えさせられる論稿である。「海が変わってきている」ことを日々の暮らしの中で実感する彼らは、それが工業国に暮らすわれわれの活動がもたらしていることを知っているという。それを思うと、「温暖化を止めてくれ。われわれを助けてほしい」との彼らの言葉が胸に痛い。
◆第10回海洋立国推進功労者表彰を受賞した富山高等専門学校名誉教授の遠藤 真氏からは、10年前から始まった富山、鳥羽、広島、大島および弓削の5つの高専と(一社)日本船主協会や(一社)全日本船舶職員協会、全日本海員組合、国際船員労務協会といった海事関連団体が連携して取り組んできた海事人材育成プロジェクトについて、ご寄稿いただいた。四方を海に囲まれた日本にとって、生命線ともいえる海運を担う海事人材の育成は喫緊の課題である。グローバル化と技術革新に対応できる海事技術者の育成のために、海事技術者に必要な資質の涵養、海事技術者に不可欠な知識・技能の育成、海事技術者を育成し得る質の高い海事教育システムの実現に取り組んだ高専・商船学科における地道な努力に拍手を送るとともに、今後の継続的な展開と発展に期待したい。 (坂元茂樹)

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