Ocean Newsletter

【Ocean Newsletter】バックナンバー

第429号(2018.06.20 発行)

編集後記

同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

◆江戸後期の歌人熊谷直好が「大島の瀬戸のなるとのみつ汐にみだれて浮かぶあまのつり船」と歌った瀬戸内海は、美しい景観で知られ、人と自然が豊かに共生してきた多島海である。この閉鎖海域は、同時に日本最大の広域水先区でもある。その水先業務に携わる内海水先区水先人会副会長の増井 眞氏から、その実情と水先の将来についてご寄稿いただいた。水先人の供給源である外航船員の減少により後継者不足に悩むこの業界も、2007年の水先法の改正により等級別制度が導入され、新卒者でも3級水先人になれる仕組みに変わったとのこと。他方で、1級水先人になるためには2年以上の船長経験を有し、多くは50歳を超えて資格を取得する中で、女性水先人の入会や年齢層のばらつきに応じた就業形態の工夫や、水先法に基づく強制的制度の性格により不足しがちであった顧客に対するサービス業との意識の転換など、将来を見据えた「働き方改革」の取り組みをご一読いただきたい。
◆こうした新たな取り組みは、防災・減災の現場でも生じている。2004年に発生したスマトラ沖地震に伴う津波で、東南アジア諸国には大きな被害が生じたが、海岸林や砂丘が保全された地域とそうでない地域では被害に大きな差が生じたという。IUCN(国際自然保護連合)日本リエゾンオフィス・コーディネーターを務める古田尚也大正大学地域構想研究所教授に、最近注目を集めている「生態系を基盤とした防災・減災(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction: Eco-DRR)」についてご紹介いただいた。2012年にハリケーンサンディーによる高潮被害を受けたニューヨークでは、レジリエントな街づくりにあたって、Eco-DRR と類似の概念であるグリーンインフラを優先適用し、さまざまな取り組みを行っているという。2015年3月に開催された国連防災会議で採択された『仙台防災枠組2015-2030』でも生態系管理を防災、減災に活用するとの考えが盛り込まれており、こうした取り組みをわが国に取り入れる時期のように思える。
◆第10回海洋立国推進功労者表彰を受賞した新潟県立海洋高等学校の久保田郁夫前校長より、産官学連携による地域振興とキャリア教育推進の現場についてご紹介いただいた。水産を核にした地方創生を旗印に、豊かなカリキュラムを提供し、食品研究部が開発した魚醤「最後の一滴」の製造拡大やハラール認証の取得を目指し、最も認証の厳しいマレーシアで市場調査を行い、イスラム圏への市場拡大を進めていると聞くと、その実践的な職業教育に驚きを禁じ得ない。それを支える企業と学校との連携教育としてのCOOP教育に期待したい。 (坂元茂樹)

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