インド太平洋地域のディスインフォメーション研究シリーズ Vol.1
オーストラリアはディスインフォメーション(偽情報)にどう対処しているのか?
- サイバー・軍事・地政学
- オーストラリア・島嶼国
笹川平和財団 研究員
長迫 智子
インド太平洋地域のディスインフォメーション研究シリーズ掲載のお知らせ
この度、IINA(国際情報ネットワーク分析)では、笹川平和財団プロジェクト「インド太平洋地域の偽情報研究会」(2021年度~)において同地域のディスインフォメーション情勢について進めてきた調査研究と議論の成果を「インド太平洋地域のディスインフォメーション研究シリーズ」として連載いたします。IINA読者のご理解のお役にたてば幸甚です。
1.はじめに
近年、ディスインフォメーションという情報操作型のサイバー攻撃を利用した影響工作について、国際社会の関心が高まっている。2016年の米国大統領選を契機に、ディスインフォメーションを利用した選挙干渉が国際社会において広く認知された。各国事例では、ロシアが国家として関与していたことが指摘され、当初は、「西側の民主主義諸国」対「ロシア」という構図が強かった。しかし、同様の手法を中国も用いるようになり、2019年のオーストラリア連邦議会選挙やアジア各国の選挙で選挙干渉事例が続いたことで、ディスインフォメーションはもはや欧米だけの問題ではなくなってきている。
アジア太平洋地域では、欧米に対する情報操作型の攻撃とは異なった別の構図がある。そのため、欧米民主主義国とは異なるディスインフォメーション対策が同地域では採用されている。一方で、インド太平洋に位置しつつも、非アジア国家であるオーストラリアは、対中国を想定して欧州や米国の手法を混淆して取り入れており、アジア型とは異なった対策の方向性にある。