サイバー攻撃で狙われる金融サービス
――地政学的環境の変化とDDoS攻撃の増加
- サイバー・軍事・地政学
- ロシア・中央アジア・旧ソ連諸国
笹川平和財団
上席フェロー
大澤 淳
モバイル決済が使えない
最近モバイル決済でトラブルを経験した読者の人もおられるだろう。朝の通勤途中にコーヒーを買おうと思ったらモバイルアプリが使えなかった[1]。お昼に支払いをしようとしたらモバイル決済で払えなかった[2]。電車に乗って出口で残高が足りなくてチャージをしようとしたら、交通系決済アプリにチャージできなかった[3]。こんな経験をしているはずだ。これらは、今月(2024年5月)に実際に発生したシステム障害である。小口の決済がモバイルに移行する中で、現金を持ち歩かない人も増え、このようなシステム障害は人々の生活に大きな影響を与えるようになってきている。
モバイル決済に支障を及ぼすシステム障害の原因は、①サーバーなどのハードウェア(機器)のトラブルによるもの、②システムのソフトウェアのトラブルによるもの、③サイバー攻撃や不正アクセスによるもの、に大別することができる。このうち、①は冗長性(予備のシステム機器)の確保で本来は防げるものだが、冗長構成が機能しない、復旧の手続きミスで障害の回復まで時間がかかるといった事案が起きている。②はシステムの更新時に発生することが多い。一番やっかいな問題となってきているのが、③のサイバー攻撃によるシステム障害の増加である。