笹川中欧基金の歩み

ガイドライン

第2次ガイドライン(2001~2007)

1.日本と中欧諸国との相互交流の促進と人材育成

日本と中欧諸国(ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー)との間には、これまで太い交流のパイプは存在しなかった。そのため、互いに対する認識も「遠い国」というものに留まっていた。しかし、逆に、日本と中欧の間には交流を阻むような直接的な利害関係はない。今後、日本と中欧諸国は、それぞれに培ってきた人材や経験を共有し、さまざまな課題に協力して取り組む関係を築いてゆくことができるのではないだろうか。

これまで、笹川中欧基金の人物招へい事業では、中欧から日本に人物を招へいすることに力点が置かれてきた。中欧の優れた人材との人脈の形成が主たる目的とされたこの事業では、企業、環境、NPOなどといった毎年設定されるテーマに関わりのある人々が招へいされ、テーマにふさわしい訪問先を訪れるという形で、いわば一方通行の交流が行われてきた。この事業で中欧各国から日本に招かれた政治家、ジャーナリスト、NGOリーダー、学者、実業家の数はこれまでに 200名に上っている。それらの人々を核にユニークな人脈が形成され、中欧諸国の対日理解の促進にも貢献してきた。

こうした経験を踏まえ、交流事業をさらに有意義なものにするため、今後は、まず中期テーマを設定し、その下に毎年のテーマを定め、双方向の交流事業を行っていきたい。日本と中欧諸国の相互理解、関係強化に貢献しうる双方の人材を集め、一つのテーマを追求する「事業型交流」に力点を置き、「人脈形成の時代」から、今までに蓄積された「人脈の有効活用をする事業の時代」を目指していきたいと考える。

中期的テーマの候補としては、市民社会の形成とNGO、エコツーリズムとコミュニティ、東欧の民主化と市場経済への移行、文化多元主義論などが考えられる。また、中欧における日本研究、日本における中欧研究に支援を行ったり、研究者の交流を図っていくことも検討すべきだろう。こうした交流が、互いに違う価値観を知り、日本、中欧諸国のそれぞれが抱える課題の解決に参考になるような考え方を知る機会になることが期待されるからである。

2.21世紀の中欧諸国の役割

中欧諸国は、1989年の民主革命後10年経過した今、目標の「EU加盟」と「NATO加盟」、すなわちヨーロッパの一員となり、西側安全保障の枠組みに入って自らの安全を確保することにめどがついてきたところである。(チェコ、ハンガリー、ポーランドはすでにNATOへの加盟も果たしている。)民主革命前後から現在に至るまで、この地域は、西側からの支援を受けながら、独自の試行錯誤を繰り返し、多くのことを学んできた。

しかし、経済社会体制の移行が終了したわけではない。中欧諸国は、これからどのような社会・市場の構築をめざすのか、自らの進むべき道を模索していかなければならない。

中欧の東側には、旧共産圏諸国、いわゆる東側が存在する。西側と東側のそれぞれの価値観、考え方のバランスをとりつつ、これらの移行期諸国と協調していく道も同時に探っていかなければならない。

こうした現状を踏まえ、中欧基金は今後、次の二つの支援事業を行っていきたい。

まず第一は、協力型事業に対する支援である。中欧諸国が培った経験と人材を中欧全体で共有するための「地域内協力型事業」、移行期周辺諸国の抱える課題に中欧諸国の人材と経験を転用する「対周辺諸国経験移転型事業」に対する支援を行っていきたい。

第二は、「中欧諸国におけるグローバルな課題に対する取り組みと発信」に対する支援である。中欧諸国は、歴史的に東西の多様な文化が行き交うところに位置していたため、豊富な交流の経験を有している。国際社会の一員として、グローバルな課題に対してこの蓄積を活かしたユニークな貢献を行っていくことも今後の中欧諸国の役割である。そのための取り組みと情報発信に支援を行っていきたい。

3.市民社会形成におけるNGOの役割

共産主義崩壊後、民主革命をリードした人びとが中心となって草の根レベルで始めた社会的な活動が発展してできた中欧諸国のNGOが、民主化後の社会において果たしてきた役割は注目に値する。地方自治体と協力した教育面での貢献、環境問題への取り組みを始め、非営利法案の提言、スロバキアの選挙啓蒙キャンペーンなど、NGOは幅広い分野で重要な役割を果たしてきた。

その間、こうしたNGOは、西側の支援を受けながらも、独自の形態を築き上げてきた。中欧諸国においては、NGOと市民社会の関りのモデルが作られつつあるといってもよいだろう。

これからのNGOには、社会的ニーズに沿った活動を一段と強化し、市民社会の形成に貢献していくことが求められている。中欧基金は、そうした期待を担う NGOに対し、次の支援を行っていきたい。

第一は「NGOに関わる情報サービスを提供する事業」に対する支援、すなわち、NGOの組織運営や事業の実施に関する情報やノウハウを提供する事業に対する支援である。こうしたサービスが充実することによって、NGOがよりスムースに社会のニーズに対応できるようになることが期待される。

第二は「コミュニティ関連事業」である。NGOだけで、社会のニーズに対応していくには限界がある。このため、中欧のNGOは、地元市民、企業、自治体、などを巻き込んだ事業展開に取り組み始めている。NGOがイニシアティブをとりながら実施するこうした形での「コミュニティ関連事業」に支援を行っていく。

第三は「環境分野の事業」である。移行経済下で経済優先政策がとられてきた結果、環境分野への支援が減少している。中欧の環境NGOは、例えば上記のコミュニティ関連事業などユニークな事業を実施しており、他国のNGOの活動モデルにもなっている。また、環境問題は、周辺諸国と共同して対処する必要がある場合が多く、NGOの活動が対話のきっかけとなることも期待される。「環境分野の事業」のこのような意義を踏まえ、支援を行っていく。

第四は、「政策提言型事業」である。さまざまなニーズを持った人々と密接に対話を重ね、その意見を政策決定過程に反映させるNGOの活動は、市民側、行政側の意識改革を促すきっかけとなり、今後も中欧諸国における民主化に貢献していくものと考えられる。こうした活動の促進を図るべく「政策提言型事業」に対する支援を行っていく。

第1次ガイドライン(1991~2000)

  1. 移行期経済支援
  2. 第3セクター活動支援
  3. 人材育成

笹川中欧基金の歩み

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