海洋情報旬報 2014年1月11日~20日

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111日「海南省漁業規制、海警局改編の遅れから実効性に疑問香港紙」(South China Morning Post, January 11, 2014)

香港紙、South China Morning Post111日付の報道で、海警局の組織改編が遅れており、海南省の漁業規制の実効性に疑問があるとして、要旨以下のように報道している。

(1) 北京は、統合された海警局の改編に苦慮していることから、南シナ海における新しい漁業規制の施行に苦労するであろう。海南省海洋漁業局の法律問題担当官は、海警局改編作業は未だ半分しか進んでいない、と語っている。海警局改編は20133月に承認されており、国営メディアによれば、海警(沿岸警備隊)は6月には運用可能になる計画であった。

(2) そのため、同担当官によれば、海警部隊(沿岸警備隊)が未だ海南省やその他の省に分散配備されていないために、南シナ海を哨戒する海洋法令執行部隊は依然として、中国海監と中国魚政が主体となっている。担当官は、「あまりに多くの要員が関係し、しかも官僚機構の改編と責任分担が絡み合って、統合はスムーズに進展していない」と指摘している。

(3) 更に、担当官は、北京が「海南省の管轄下にある海域」を明確に規定していないことを認め、「これまで、海南省管轄海域を規定する明確な線引きがなかった。全人代はこれまで、こうした線引きをしなかったし、海南省はそうしたことをする権限をもったいない」と語っている。では、哨戒部隊が哨戒海域の境界をどのようにして知るのかと問われて、「9断線」を参考にしているのかもしれない、と担当官は語った。

記事参照:
Enforcement of fishing rules in South China Sea thrown in doubt

113日「中国海洋法令執行機関、統合組織改革進まず―RSIS専門家論評」(RSIS Commentaries, January 13, 2014)

シンガポールのS.ラジャラトナム国際関係学院(RSIS)のZou Wentao 調査アナリストは、113日付けのRSIS Commentariesに、“Restructuring China’s Maritime Security: Lofty Ambition, Little Progress” と題する論説を寄稿し、中国の海洋法令執行機関が統合されてから半年以上経過したが、組織改編が進んでおらず、改革が実現するには今後数年かかるだろうとして、要旨以下のように述べている。

(1) 2012年の中国海洋発展報告書によれば、海洋問題を担当する政府機関は17以上あり、集権化された管理組織がなく、相互の連携と調整の欠如から種々の問題が生じていた。20133月に、全人代は、各種の海洋法令執行機関を1つの新組織、中国海警局、The China Coast Guard (CCG) に統合することを承認し、7月に海警局が発足した。しかしながら、この統合に関するその後の情報はほとんどない。中国は、新たに統合された海警局の巡視船が尖閣諸島哨戒のため厦門港を出航したとの日本の通信社の報道以降、一切の情報を遮断したようである。実際、北京はこの報道を「国家安全保障を脅かすもの」とし、それ以降、地方政府当局は、港湾や巡視船の情報保全を厳格にするよう求められ、海洋法令執行機関に関するあらゆる事項が秘密扱いになったようである。

(2) 事実、制服と巡視船の塗装が変わったこと以外、組織改編の進展に関する情報はほとんどない。幾つかの要因が進展を遅らせているようである。第1に、海洋における権益擁護のためのよく整備された効果的なシステムがないことである。中国の観点では、海洋監視と法令執行は2つに分けられる。1つは、海洋環境保護や島嶼防衛のように、海洋の利用を管理するために法令を執行する行政執行である。もう1つは、主として国連海洋法条約と1996年の外国艦船の海洋科学調査の管理に関する規則とに基づく、権限の執行である。権限の執行は、主として外国の艦船が目標だが、比較的未整備の分野である。権限の執行に当たっての詳細な規則がなく、各機関が独自のガイドラインに従っている。各海洋法令執行機関が統合されたことによって、権限の執行に当たってのより明確で統一された規則の整備が喫緊の課題となった。更に、中国の法令執行担当者は、他の機関と連携するために必要な効果的な調整機能を欠いていることを自覚している。調整には、海洋における事態に対応するための多様な選択肢、中国が管轄権を主張する海域から外国艦船を退去させるための法的手段、外交手段、交渉そして必要な場合、武力の行使といった、選択肢を増やすことが必要である。

(3) 2に、海洋監視要員にとって、異なった機関から集まった新しい同僚との協調の難しさがある。しかも、その結果、こうした協調を一層困難にしているのは、それぞれの役割に関する訓練がないために、一部の機関出身者が自らのこれまでの慣行に固執していることである。例えば、海警局の巡視船が尖閣諸島の哨戒に出動する時、旧海監、海巡そして漁政といった旧組織からの要員が、全て「中国海警」とプリントされたベストを着用して1隻の巡視船に混乗することになる。旧海巡の士官は、増大する任務の付加に不平を漏らし、新しい同僚との協同によるストレスを感じることになろう。

(4) 3に、法令執行任務を奪われた機関は、改編計画を全面的に支援することを躊躇っている。更に、中国のユニークな行政上の格付けも改編計画を困難にしている。例えば、国家海洋局の劉賜貴局長兼同局党組書記は、国土資源部の管轄下にある副部長級ポストである。同時に、劉賜貴局長は、新編された海警局の政治委員のポストも兼ねている。孟宏偉は、海洋局副局長で、海警局局長である。しかし、孟宏偉は、彼の経験と序列から公安部の部長級扱いの副部長でもある。海警局は、海洋局の管理下に置かれていると見られるが、同時に実際の海洋法令執行活動については、公安部の業務指導を受ける。明らかに、この海警局に対する二重の指揮系統は、改編課程を複雑なものにしている。

記事参照:
Restructuring China’s Maritime Security: Lofty Ambition, Little Progress

113日「近海における中国の課題―エリクソン論評」(The National Interest, January 13, 2014

米海軍大学のAndrew S. Erickson 准教授は、113日付の米誌(電子版)、The National Interestに、“China’s Near-Seas Challenges” と題する長文の論説を寄稿し、中国は軍事力増強の重点を「近海」に指向しているが、そこにおける中国の課題とアメリカの対応の在り方について、要旨以下のように論じている。

(1) 冷戦期、北京は、14カ国と陸上国境を接し、そのほとんど全ての国との国境紛争に悩まされた。その内、インドとブータンを除いて、陸上国境問題は解決した。これらの解決に当たっては、中国側の、特にロシアに対する大きな譲歩があった。陸上国境問題の大部分が解決したことで、中国は、ペルシャ帝国やローマ帝国以来、ランドパワーからシーパワーに転換する最初の大陸国家、より実態に近い表現をすれば、大陸国家と海洋国家の性格を併せ持つ国家への展望が開けた。今日、中国にとって、最も抗争が激しいのは、隣接する海上周縁である。両岸関係は別として、中国は、海上国境を接する8カ国と境界を巡る包括的な合意に達していない。島嶼と海上境界を巡る中国の未解決の領有権主張の大部分は近海にあり、またそこには重要な資源がある。従って、北京は、最新の軍事的能力を近海とその周辺の接近路に指向している。近海を越えて軍事大国と戦うことは中国にとって未だ困難で、北京は、アメリカがこの数十年間に発展させてきたような、海外における同盟国、基地、後方支援拠点そして防衛のための強力なネットワークを持っていない。

(2) 中国の軍事的発展を明確に理解するためには、距離というレンズを通して見る必要がある。部隊を展開し、兵力を投射する中国の能力は、徐々に消えていく波に似ている。中国が遠隔の地で起こした唯一の波は、アデン湾への海賊対処部隊の派遣であった。中国は急速に軍事力を建設しているが、それは不均衡なものでもある。その能力は各軍種に分割されており、リアルタイムの調整能力に限界がある。中国は、近海における権益を強化するため、近海におけるアメリカとその同盟国あるいは友好国の軍事力の活動を規制し、有事介入の可能性を減らそうとしている。北京は、外国の軍事プラットホームを脅威に晒す能力を開発することによって、まず外国の軍事力が中国にとって死活的な領域に介入することを抑止するとともに、台北、東京、マニラ、ハノイ及びその他の域内国に対して、ワシントンの支援が期待もできないし、間に合いもしないと思い込ませようとしている。そのため、中国軍は、物理的方法によって体系的に外国の軍事プラットホームの行動を制約しようとしている。中国は、多方向巡航ミサイル攻撃、対艦弾道ミサイル (ASBM)、対衛星攻撃システムそして航法衛星の分野で、飛躍的発展を遂げつつある。これらの成果は、近海における領有権紛争を解決しようとする政治的決意と相まって、外国軍事力の(近海からの)「締め出し」能力の強化に繋がり、地域の安定が損なわれることになろう。

(3) 中国のASBM、東風21D (DF-21D) は、初期実戦可能状態にあり、既に少数が配備されている。ASBMは、中国が開発し、配備してきた最新兵器の1つに過ぎないが、出現しつつある戦略的所要に対応するために、新たなシステムの開発を目指してその防衛産業基盤を動員する北京の能力を象徴するものである。中国のASBM開発努力は少なくとも、アメリカの海軍力に対して中国が無力を実感した、1995-1996年の台湾海峡危機にまで遡るが、開発を加速させたのは、19995月にベルグラードの中国大使館が米軍機に誤爆された事件であった。中国は同じ5月に、全般的な技術的劣勢にある中国がアメリカのような最高レベルの軍事力に対して不釣り合いな効果を与えるシステム、「暗殺者の棍棒 (“assassin’s mace”) 」の開発に巨額の資金を投入し始めた。国内の広範な産業基盤を動員するASBM開発によって、中国は、ASBMを支援するインフラ分野でも長足の進歩を続けるであろう。DF-21DC4ISR(指揮・統制・通信・コンピューター・情報・監視・偵察)インフラは既に、空母攻撃を支援するのに十分なレベルにある。増強されつつあるASBM能力は、北京が抑止力を強化することを狙いとして、特定の能力について(未だ完全に透明とはいえないが、見せ付けるために)「透明性」を高めようとしている軍事能力の1つと見られる。しかし、中国は、DF-21Dが初期生産、配備及び実戦可能の域に十分達していることを誇示するためには、精密なプログラムに基づく実験を実施していなければならない。この実験には、洋上への各種の飛翔実験が必要だが、恐らく失敗を恐れて、未だ実施されていない。いずれにしても、アメリカは、戦力投射能力の中核である、空母攻撃群が直接的脅威に晒されるようになった。アメリカの意思決定者は既に、有事において、中国がASBMの使用を決意すれば、1隻あるいはそれ以上の空母が破壊あるいは行動不能に陥る可能性に直面している。

(4) 中国が増強しつつある軍事能力の重点を近海においていることは、グローバル・コモンズの重要な領域における安定と国際的な規範を危うくしている。北京は、旧ソ連のように世界規模で軍事的プレゼンスを追求しているわけではないが、近海及びその上空を、中国の利益が既存の世界的に合法な安全保障や資源管理に関する規範に優越する領域にしようとしている。北京は、中国の歴史的な屈辱をはらし、隣国の意思を自らに従わせる大国として再び台頭するために、この領域を利用することを望んでいる。北京は、協調を主張しながら、係争領域における資源の共同開発の前提条件として、当該領域に対する中国の主権を承認するよう求めている。しかも、中国の海洋法令執行能力は、急速に拡充され、現在、海警局に統合されつつある。実際、アメリカは、域内に展開する戦力の大部分が海軍艦艇であるため、中国の政府公船による領有権主張に海軍力で対処しなければならないという問題に直面している。このことは、既に一触即発的な状況にある問題を更にエスカレートさせるリスクを冒すのか、あるいは中国の近隣諸国に対する高圧的な行動を黙認するのか、という難しい二者択一をワシントンに迫っている。中国の近隣諸国における海上法令執行能力の育成は、エスカレーションのリスクを軽減しながら、中国の威嚇効果を押さえ込む上で効果があろう。

(5) アメリカや中国の多くの近隣諸国から見れば、北京は、地域の緊張激化に懸念を表明するが、他方で緊張緩和ために常に相手の国に譲歩を要求する。中国の指導者は、少なくとも部分的には、中国の華々しい台頭とそれに伴う期待感によって高揚した、国内からの圧力に晒されている。明日にはもっと強くなるというのに、何故今日、妥協しなければならないのかというわけである。中国国民も指導者も、今日の中国がどれほど強力であるかというだけでなく、将来的にどれ程強くなるかということをも考慮して、それに相応しい扱いをするよう暗に求めているのである。中国は、過去2世紀の間、侵略と屈辱に対して脆弱であった。従って、中国国民が、こうした屈辱の歴史を2度と繰り返さないようにと決意して、この何十年も過ごしてきたことは理解できる。しかしながら、中国の大国への野望は理解できるとしても、その実現は、世界に何を要求するかではなく、世界に何を与えられるかによって決まるであろう。中国が大国として認知されるには、互恵関係と「責任ある利害関係者 (a “responsible stakeholder”) 」という認識を受け入れることが必要である。大国には、大きな責任が伴うのである。恐らく、中国の経済成長の減速は国民の期待感を妥当なものにし、それによって中国の指導者も、死活的な近海においても建設的なアプローチをとることができるようになろう。しかし、そのようになるまでは、この地域の平和を維持できるのはアメリカの安全保障能力と域内各国とのパートナーシップだけであり、そして域内の平和こそ、中国をも含む、全てのアジア太平洋諸国の繁栄を可能にするのである。

(6) 北京は今、大国の地位にあり、そしてこの地域での歴史的に優越した地位を回復するとともに、グローバル化した世界においてこれまでにない影響力を確保する可能性を持っている。しかし今後を見通せば、恐らく10年以内に、そしてアメリカが国力と影響力においてこれまでの優位を維持している間に、中国の成長が大幅に減速し、中国の国内問題が深刻化することはほぼ確実である。時間は、中国にとってよりも、アジア太平洋地域におけるアメリカのアプローチと全体的な態勢にとって遙かに有利に働いているようである。結局、このことは、北京がワシントンに圧力をかけるよりも、むしろ自らの方向を修正することによって、太平洋を挟む2つの大国が「競争的共存 (a “competitive coexistence”) 」を実現するための基礎になるかもしれない。アメリカにとって重要なことは、その同盟国あるいは中国に対して信頼を失うことになる、一方的に譲歩することなく、現在の脆弱性の窓を閉じることである。そうでなければ、最悪の場合、北京に、武力による威嚇あるいは実際の行使による現状変更を許すことになりかねない。

記事参照:
China’s Near-Seas Challenges

114日「インド、西岸沖の『危険海域』指定解除を要請インド沿岸警備隊司令官」(The Hindu, January 14, 2014)

インド沿岸警備隊のタプリヤル (VADM Anurag Thapliyal) 司令官は114日、IMOが公表している現在の「危険海域 (“high risk area”)」の指定リストからインド西岸沖を外すよう求めた。同司令官は、海上保安庁との合同訓練後の記者会見で、過去2年間、インド西岸沖での海賊襲撃事案が全く発生していないため、海運省を通じて関係国際機関に対し、「危険海域」を現在の東経度78度から以前の東経65度に戻すよう要請している、と語った。その上で、同司令官は、インドの要請は正当なものであるが、船舶運航国の意見を考慮しなければならないことから、実現には時間がかかる、と述べた。

記事参照:
Indian coast should be outside piracy high risk listing: Coast Guard DG

114日「中国海洋石油、南シナ海で操業開始」(UPI, January 15, 2014)

中国国営、中国海洋石油総公司 (CNOOC) 114日、南シナ海に面した珠江河口の天然ガス田、The Liuhua 19-5で生産を開始したと発表した。同社によれば、このガス田は、2014年後半に最大生産量、日量2,900万立方フィートに達する。CNOOCは、珠江河口のガス田開発を同社の最優先リストの1つとしている。

記事参照:
China starts gas production offshore

114日「米海軍、空母『レーガン』の横須賀配備発表」(U.S. Navy NNS, January 14, 2014)

米海軍は114日、サンディエゴを母港とする、空母、USS Ronald Reagan (CVN 76)を、USS George Washington (CVN 73) に代えて、横須賀に配備する、と発表した。これに伴って、USS Theodore Roosevelt (CVN 71) が東岸のノホークからサンディエゴの第3艦隊に配備される。USS George Washington (CVN 73) は、バージニアに帰還し、その後ニューポートで中期オーバーホールに入る。実際の交代時期については発表されていないが、2015年になると見られている。空母が交代しても搭載航空団は変更されず、厚木航空基地に前方展開しているCarrier Air Wing 5がそのまま残留する。また、サンディエゴと横須賀の基地施設にも変更がない。

記事参照:
Navy Aircraft Carrier Moves Underscore Pacific Rebalance Strategy

115日「ベトナム海軍、ロシアから購入の潜水艦1番艦就役」(Naval Technology.com, January 17, and Thanh Nien News.com, January 19, 2014)

ベトナムがロシアから取得した、Project 636 M Varshavyanka級(Kilo改級)潜水艦の1番艦、HQ 182 Hanoi115日、カムラン湾基地で正式に就役した。同艦は20131231にカムラン湾基地に移送され、18日にベトナム領海で初めての試運転を行った。ベトナムは、2009年にロシアとの間で、6隻のKilo級潜水艦を約20億米ドルで購入し、改修する契約を結んだ。現在、2番艦、HQ-183 Ho Chi Minh City117日にロシアでの海上公試を終えており、4月までにベトナムに回航されると見られる。また、ロシアからの報道によれば、3番艦、HQ-184 Hai Phong2014年末までに回航されると見られる。契約では、ロシアは、2016年までに全6隻を引き渡すことになっている。

Project 636 M Varshavyanka級(Kilo改級)潜水艦は、排水量3,100トン、潜航速度20ノット、潜航深度300メートルで、乗員は52人である。兵装は、533ミリ魚雷発射管6本、Kalibr 3M54(または3M-54 Klub)巡航ミサイル及び機雷で、この潜水艦は、比較的浅い海域で主として対潜及び対水上艦任務を遂行する。また、一般的な偵察、哨戒任務にも使われる。

記事参照:
Vietnam Navy commissions first Project 636M Varshavyanka-class submarine

Vietnam’s second Russian submarine completes testing
Photo: Vietnam’s and navy’s flags fly on the conning tower of the HQ-182 Hanoi, the first of the six submarines

116日「フィリピン、南シナ海で操業の自国漁民を保護する用意あり」(Philstar.com, January 16, 2014)

フィリピン政府は、中国の漁業規制を無視して、西フィリピン海(南シナ海)で操業する自国漁民を保護する用意があることを明らかにした。カズミン国防相は116日、中国の規制を無視するとして、「我々は、自国漁民を保護する能力を持っている。我々は、自国管轄海域でのかかる規制を認めない。自国の管轄海域で操業するのに、何故、他国の許可を得なければならないのか。政府から漁民保護を命じられれば、我々はそうする用意がある」と語った。同国防相はまた、防空識別圏 (ADIZ) に次いで、今後は漁業規制、アメリカのような大国はこうした中国の高圧的で侵略的な行為に対抗すべきだ、と強調した。

記事参照:
Troops ready to secure Pinoy fishermen amid China rules

117日「海南省の南シナ海漁業規制に関する新条例―米専門家論評」(China Brief, The Jamestown Foundation, January 17, 2014)

米国防大学国家戦略研究所のIsaac Kardon特任研究員は、117日付のWeb誌、China Briefに、“Hainan Revises Fishing Regulations in South China Sea: New Language, Old Ambiguities” と題する論説を寄稿し、海南省の新たな漁業規制について、要旨以下のように述べている。

(1) 海南省の人民代表大会常務委員会は20131129日、中国漁業法の実施条例の改正を承認した。以前の同省の漁業条例とは違い、新しい漁業条例は「外国人及び外国船舶」の漁業活動に海南省政府の事前許可を義務づけており、同条例は201417日より施行された。以前の条例と中国漁業法と比較すると、新しい条例は、中国の海洋管轄権の拡大や外国船舶に対する新たな規制が設けられたことよりも、中国のEEZにおける実効支配を強化する狙いが強いことが分かる。海南省の条例は1993年に制定され、2008年に改定された。その後、中国政府の漁業法に従った条例の改定が続いてきたものの、漁業法を超える法的効力は持たないと、専門家は指摘する。今回最も問題になっている第35条(外国人および外国船舶に対して漁業を制限する条項)においても、旧条例と中央政府の法制に比べて新しいものではない。第35条で使われた表現は、2004年に制定された中国政府漁業法の第8条と類似している。新条例はその規定が示す「外国船舶」をより詳細に特定している。

(2) 新条例において注目すべき変化は幾つか存在する。第1に、旧条例の第31条が規定していた西沙諸島および中沙諸島周辺の保護海域における漁業の1年間モラトリアムに関する言及が見当たらない。第2に、海南省の管轄海域内における外国船舶の活動を原則的に許可する、「中国国務院の関連機関」に関する記述が曖昧となった。旧条例では、漁業部の管轄局(漁業・港湾)の事前許可が規定されていた。第3に、旧条例の第39条と中国漁業法第46条では、規定に違反した場合、漁獲量、違法行為による所得等の没収等を明記し、罰金や中国の刑法に従う起訴等が規定されていた。新条例の第9条は漁船、装備および貨物を検査するために海南省職員の権限を定めているが、没収に関しては言及していない。漁業法執行機関による関与のみが、刑事手続を開始するための要因として示されている。このように、幾つかの事項が省略され、曖昧さが残されているため、今後の実際の執行にあたって、その都度判断が示されるであろう。

(3) 今回の改定の大きな動因は、未確定であった広大な海域を海南省管轄の下に置くことにある。漁業資源の枯渇、海洋汚染、乱獲の横行そして深海漁業の開発を図る国家計画等が、海南省の漁業法における更なる改革と合理化を正当化する要因である。しかしながら、新条例には、地方政府による国家政策の施行とその範囲を定めた明確な記述は見当たらない。中国政府は、今回の改正が実質的な変更をもたらすものではないという見解を示している。新華通信は、新条例が200万平方キロメートルに及ぶ周辺海域を自国領海と定めていることを明らかにした。同海域に対して比較的に明確な記述が存在する公式文書は、第12次海南省海洋保護5カ年計画(海南省海洋安全局、201277日)が唯一のものであり、同文書では南シナ海の3分の2が中国領海であると主張している。該当海域は、ベトナム、ピリフィン、マレーシア、インドネシア、ブルネイが自国のEEZを主張している海域と重複している。

(4) 新条例の中身が中国漁業法の施行に変化をもたらすものでないとはいえ、当該海域における中国の偵察、監視機能の強化を主張する声が強まりつつある。更には、同条例が執行の対象とする海域が周辺諸国との紛争海域と重複していることも懸念材料である。新条例によるもう1つの懸念は、中国の海洋境界を管理する政府組織間の役割分担において混乱をもたらす可能性である。1998年施行された中国のEEZと大陸棚に関する法律は、沿岸基線から最大の領有権を主張しているが、南沙諸島に関しては明確に規定されておらず、また9段線の正確な境界も明記されていない。今回の新条例が中国の海洋法令執行機関の一部、または全般の活動強化に繋がる場合は、中国がどこまでの海域を規制範囲としているかが明らかになり、中国が南シナ海で主張する管轄権の範囲を明確することになろう。いずれにしても、このような漸進的な管轄権の浸食拡大は、中国の国内機関によって規制が強められる海域に主権を主張するその他の国との軋轢を益々増すことになろう。

記事参照:
Hainan Revises Fishing Regulations in South China Sea: New Language, Old Ambiguities

118日「仏海軍、海賊母船解放、海自協力」(EUNAVFOR, Somalia, January 20, 2014)

EU艦隊旗艦のフランス海軍強襲揚陸艦、FS Siroco118日、海上自衛隊派遣部隊の対潜哨戒機と護衛艦「さみだれ」搭載ヘリの協力を得て、海賊の母船として使われていたダウ船の乗組員を解放し、5人の海賊容疑者を拘束した。この5人は、117日にアデン湾で原油タンカーを襲撃したグループと見られている。襲撃は、タンカーに添乗していた民間武装警備員によって撃退され、襲撃した小型ボートは近くにいた母船に向かって逃亡した。FS Sirocoは、海自の協力を得て、ダウ船の位置を特定し、現場海域に向かい、艦載ヘリを発進させた。ヘリ搭乗の臨検チームは、ダウ船の海賊容疑者が各種装備を海中に投棄するのを視認した。これは、2014年の最初の襲撃事案であった。

記事参照:
First Pirate Attack In 2014 In The Gulf Of Aden Resulted In Apprehension Of Suspects By EU Naval Force

Photo: On January 18, 2014, the French EU Naval Force (EU NAVFOR) Somalia Operation Atalanta flagship FS Siroco in cooperation with Japanese assets released the crew of a Dhow that was suspected to have been used as pirate mother-ship.

119日「ロシア、北極海を睨み海軍力増強」(Fool.com, January 19, 2014)

ロシア海軍は、米海軍の戦闘艦艇283隻に対して、208隻と劣勢だが、ロシアは現在、この差を急速に埋めつつある。

ロシア海軍のビクトル・ブルスク副司令官がこのほどロシアのメディアに語ったところによれば、ロシアは、2014年だけで40隻の艦艇を新造する。米海軍は35隻である。同副司令官によれば、新造艦艇の大部分は水上艦艇だが、BoreySSBNVarshavyanka級ディーゼル潜水艦各1隻が建造される。また、最新型の捜索救難艦、Igor Belousovが建造され、潜水艦救難態勢が強化される。新造だけでなく、「モスボール(防錆保管)」中のKirov級誘導ミサイル原子力巡洋艦、Admiral Nakhimovが現在、改装工事を急いでおり、また3隻のSSNも改装中である。更に、ロシアでは初めての原子力空母建造の計画をあるという。

何故、ロシアは建艦ペースを加速しているか。プーチン大統領は201312月、ロシアの「防衛計画の最優先課題」の1つは北極海へのロシアの影響力を強化することである、と語った。ここにヒントがある。実際、ロシアの新造艦艇の多くは、北極での任務遂行に従事することになるかもしれない。前ロシア北方艦隊司令官によれば、もしロシアが原子力空母を建造することになれば、SSBN支援のために北極海に展開すべきである、と語っている。ロシアはまた、1月初め、Tu-142Il-38偵察・対潜哨戒機による北極海哨戒飛行を大幅に増大させる、と発表している。

記事参照:
Russia Builds a New Navy to Dominate the Arctic Ocean