海洋安全保障情報旬報 2019年12月11日-12月20日

Contents

12月11日「ディエゴガルシア島問題に対する豪の立場―豪専門家論評」(The Interpreter, December 11, 2019)

 12月11日付の豪シンクタンクThe Lowy InstituteのウエブサイトThe Interpreterは、Australian National Universityの National Security College研究員David Brewsterの “Australia’s stance on Diego Garcia dispute is increasingly untenable”と題する論説を掲載し、ここで Brewsterはオーストラリアにとってのインド洋のチャゴス群島ディエゴガルシア島における米軍のプレゼンスの重要性を指摘し、チャゴス群島の主権問題について早急に解決を模索すべきとして、要旨以下のように述べている。
(1)インド洋の真ん中に位置するチャゴス群島内のディエゴガルシア島にある米軍基地は、世界で最も重要な米軍施設の1つであり、インド洋地域における米国のプレゼンスの要石でもある。同時に、この基地はほぼ50年間に亘ってインド洋地域におけるオーストラリアの戦略的態勢における不可欠の要素でもあった。しかしながら、同島の帰属を巡る紛争は、米軍の長期に亘る継続的なプレゼンスの将来に暗雲を投げかけている。この紛争に対するオーストラリアの立場は、益々現状にそぐわなくなってきており、再検討される必要がある。(2)ディエゴガルシア島は、約60の島嶼で構成されるチャゴス群島の1つである。チャゴス群島はモーリシャス独立の数年前にモーリシャスから分離された。1973年までにチャゴス群島から住民が退去させられ、ディエゴガルシア島は軍事利用のために米国に貸与された。英国は、「英領インド洋地域」(BIOT)として今や無人の同群島に対する施政権を維持している。モーリシャスは独立以来、同群島に対する主権を主張してきた。この主張は今や現実味を帯びてきている。国連総会は2019年5月に、2017年の国際司法裁判所(ICJ)によるモーリシャス支持の勧告的意見に関し、英国がモーリシャスに領土を返還する期限を設定することについて反対6票、賛成116票の圧倒的多数で可決した。オーストラリアは、英国を支持したほんの一握りの国の1つであった。国連が設定した期限は11月22日であったが予想通りロンドンからは公式の回答さえなく過ぎた。
(3)モーリシャスは、チャゴス群島の返還を要求し続けて行くであろう。国連における英国(そして米国)に対する伝統的な同盟国やパートナー諸国から支持がなかったことは驚くべきことで、この事実はモーリシャスの返還要求を一層勇気づけることになろう。モーリシャスは、これまで英国に圧力をかけるために節度ある外交に頼ってきたが、今後はやり方を変えるかもしれない。モーリシャスは今後、この問題に関して英国と米国を困惑させる戦術を駆使してくる可能性がある。こうした戦術には、退去させられた島民やその子孫を乗せた船舶をチャゴス群島に送り込む計画が含まれるが、これは阻止されることが必至であろう。こうした方法やその他の戦術は、いわゆる「法に基づく秩序」を標榜する英米両国に対して道義的な疑念をかき立てることになろう。
(4)オーストラリアは何十年にも亘ってチャゴス群島の主権に対する英国の立場、引いてはディエゴガルシア島における米軍基地の合法性を無条件に支持してきた。しかし、今後ともモーリシャスの主張を無視することができるかどうか、我々は自問すべきであろう。実際、紛争が未解決のまま長引けば長引くほど、モーリシャスの主張が一層確固たるものになりかねないという危険がある。しかし、予測し得る将来に亘ってディエゴガルシア島における米軍基地の存続を認めながら、モーリシャスの主張を大方受け入れる交渉による解決に到達する可能性があるかもしれない。
(5)チャゴス群島を巡る紛争は幾つかの個別の、しかし関連した問題―すなわち、公式の主権を巡る問題、観光事業と海洋資源のために群島周辺のEEZを開発する権利、訪問及び定住のための島民とその子孫の帰還の権利、そして最後に当然ながら、ディエゴガルシア島における米軍基地の継続的な運用問題―を内包している。しかしながら、ロンドンは、これらいずれの問題に関しても、モーリシャスと交渉することを拒否している。他方、ワシントンは、それは英国の問題であるという都合の良い見解をとっている。そうしたこともあって、モーリシャスは長い間、主権問題についてロンドンを説得することを重視してきた。しかし、主権は実質的な当事者でもある米国とは関わりのない問題である。もし米国が基地を必要としないのであれば、英国は、これほど長い間チャゴス群島に固執するであろうか。米国とその同盟国は、政治的規制のない、あるいは住民やその経済活動によって妨げられることのないディエゴガルシア島の継続的な軍事利用を望んでいる。
(6)モーリシャス政府は(以前の姿勢とは対照的に)今ではディエゴガルシア島から米国の退去を求めないことを明らかにしている。モーリシャスの一部高官は個人的に、モーリシャスはディエゴガルシア島とその幾つか周辺島嶼を除いた群島に対する主権を取り戻すことも考えられる、とさえ述べている。ポートルイスにおけるこうした柔軟な姿勢から見て、主権、経済的権利及びチャゴス島民に関する受容可能な新しい協定が実現できないとは思われない。インドはこの問題を解決する上で重要な役割を担っており、モーリシャスにおけるインドの政治的影響力を過小評価すべきではない。ニューデリーは長年に亘って、モーリシャスの主権主張を支持し、米国の軍事プレゼンスに反対してきた。しかしながら、インドも現在では米軍基地の価値を認識しており、しかも暗黙裏に同基地を利用していると言われる。したがって、受容可能な解決を実現することはインドの利益でもある。
(7)確かに、将来の協定は英国の施政権下にある無人の群島を無制限に使用できている米国とその同盟国にとっては完全なものではないかもしれない。しかし、植民地時代は間もなく終わるかもしれない。今が新たな協定を実現すべき時かもしれない。オーストラリアにとってディエゴガルシア島に基地を置くインド洋における米国の軍事プレゼンスは極めて重要である。もはや、問題を無視することは許される選択肢ではない。
記事参照:Australia’s stance on Diego Garcia dispute is increasingly untenable
 

12月12日「インド洋東部における地域間協力の必要性―米専門家論説」(The Interpreter, December 12, 2019)

 12月12日付の豪シンクタンクLowy Instituteが発行するウェブ誌The Interpreterは、米シンクタンクNational Bureau of Asian Researchの非常駐研究員Arzan Taraporeの“Strength in numbers in the eastern Indian Ocean”と題する論説を掲載し、ここでTaraporeはインド洋東部におけるインドの軍事的プレゼンスの相対的な軽さを指摘し、それを埋めるためにオーストラリアやインドネシアなどの国々との協力が必要だとして要旨以下のとおり述べている。
(1)インドはインド洋において最も有力な国家であるが、その広大なインド洋におけるプレゼンスには偏りがある。つまりその比重に関しては伝統的にインド洋の西側に重きが置かれてきた。それは、モーリシャスやモルディブなど島嶼国家とのつながり、東アフリカ沿岸諸国や中東沿岸諸国へのインド人労働者の移住(現在900万人にのぼる)を基盤とした人的つながりや経済的つながりによるものである。
(2)しかし、インドは現在、インド洋東部へのプレゼンスを拡大する必要がある。インドのNarendra Modi政権が唱えてきた「アクト・イースト政策」は、インド洋東部における経済的機会を求めるものであるが、それとは別に、インドはインド洋東部に安全保障上の利害を有している。インド洋東部におけるインドの軍事的プレゼンスには、アンダマン・ニコバル諸島の軍事施設や「任務ベースの展開」を通じたマラッカ海峡やアンダマン・ニコバル諸島周辺、およびベンガル湾内への海軍の配備などがある。こうしたプレゼンスの拡大を通してインドは同地域の海洋状況把握(以下、MDAと言う)を確立させてきた。
(3)しかしながら、インド洋東部におけるプレゼンスにも偏りがあり、スンダ海峡やロンボク海峡などのチョークポイントを含むインド洋南東部の大部分はカバーされていない。この海路は北東アジアへ向かうためにはマラッカ海峡ルートよりも遠回りだが、それでもなお発展可能性のある航路として重要である。そして、この海域におけるMDAの確立において、インドはオーストラリアと協力の余地がある。オーストラリアは同海域に近接しており、オーストラリア領のクリスマス島やココス諸島は、スンダ海峡やロンボク海峡の監視にとって有利な場所に位置する。
(4)オーストラリアに加えて、この海域のMDA構築にとって潜在力あるパートナーとしてインドネシアの存在がある。その地理的位置、そして経済力と軍事力とを考慮すればそれは自然のことであろう。インドとオーストラリアは日米豪印4ヵ国安全保障対話のメンバーであるが、インドもオーストラリアも必ずしもこの枠組みに拘束される必要はない。むしろそれを土台としてインドネシアとの協力を深め、より確固としたMDA能力の構築を目指すべきであろう。実際、インドとオーストラリア、インドとインドネシアの協力関係は近年ますます強まっている。
(5)インド、オーストラリア、インドネシアによる海洋問題での協力は、以下の3つの利益を生むであろう。第一に、海軍やMDA関連の資源を共同で提供することにより、その能力が個別のものをはるかに上回ることになる。第二に、3ヵ国が協力することによって、MDA活動の範囲をはるかに広げることができる。監視対象となった船舶の追跡なども引き継ぐことができるようになるだろう。第三に、共有された資源や施設は個別の国だけでなく協力関係にある国々にとっても重要であるため、それを破壊しようという潜在的侵略国の行動を抑止することにつながる。
(6)こうした協力関係の確立には数年を要するであろうが、MDAの共有のためにともに行動することは戦略的に価値のあるものである。同様の志向を持つ地域的パートナーは、インド洋東部においてこうした行動を追求するべきであろう。
記事参照:Strength in numbers in the eastern Indian Ocean

12月12日「フランスのインド太平洋戦略―仏専門家論説」(East Asia Forum, December 12, 2019)

 12月12日付の豪 Crawford School of Public Policy at the Australian National Universityのデジタル出版物であるEast Asia Forumは、仏French Institute of International Relations(IFRI)の上級研究員Françoise Nicolasの“France’s Indo-Pacific strategy: inclusive and principled”と題する論説を掲載し、ここでNicolasはフランスのインド太平洋戦略は、中国に敵対的なものではないとして要旨以下のように述べている。
(1)フランスが最近打ち出したインド太平洋戦略について、中国の解説者たちは中国の台頭を封じ込めるために米国の後に続いたとしてフランスを批判している。また、一部の西側の専門家は、フランスの動きが過去の壮大さを取り戻そうとする必死の、そして無駄な試みであり、この戦略は失敗する運命にあると考えてもいる。
(2)2008年版仏国防白書はフランスが西アフリカを越えてインド洋及び東アジア地域の全体に目を向けるべきと指摘した。また、同書2013年版はヨーロッパとアジアの間の通路であるインド洋が増々人目を引くようになり、フランスがこの地域の可能性のある機会をつかむべきであると再び強調した。
(3)フランスはインド太平洋地域に常在する大国である。両大洋に領土があるフランスには、この地域に160万人の市民と多くの課題が存在する。また、世界最大のフランスの排他的経済水域の90%以上はインド洋又は太平洋に位置する。
(4)「インド太平洋」という新しい概念に対するフランスの関心に新たな勢いをつけたのは、間違いなく中国の台頭、そして多国間主義と国際的なルールに基づく秩序に対する脅威として多くの人々に認識されているその強権的な自己主張である。2019年のアジア安全保障会議で、仏軍事相Florence Parlyはインド太平洋に共通する安全保障のための有用な繋がりと共同行動を発展させる必要性を強調した。仏海軍が南シナ海で航行の自由を行使するのはこのことを念頭に置いている。防衛の領域ではフランスの戦略はインド、オーストラリア、日本、マレーシア、シンガポールなどの国々との戦略的な協調と武器協定に基づいている。目的はフランスの領土とルールに基づく秩序を守ることの両方である。
(5)仏外務省文書は、インド太平洋を死活的に重要な地域としてさらなる説明を行っている。それは世界的な経済活動とほとんどの貿易ルートの中心だが、その経済的及び人口統計学的な重要性とエネルギーを含むその天然資源の豊富さから、気候変動と生物多様性の面でも重要である。仏インド太平洋戦略は、多国間協調主義と地域の様々な国や機関、特にオーストラリア、インド、日本及びASEANとの軍事的、経済的及び外交的協力に基づく包括的な戦略である。このような協力はすでに大部分が実施されているが、重要なのは、それをより深く、より構造化し、より体系的にすることである。
(6)フランスの観点から見ると、そのインド太平洋戦略の目的は、中国に敵対することでも封じ込めることでもない。仏インド太平洋戦略には反中国的な論調はないが、特に南シナ海におけるその航行の自由の防衛はそのように認識される可能性がある。この点で、フランスの構想は、恐らく日本の構想よりもインドやオーストラリアの構想に近いだろう。フランスが擁護するインド太平洋地域の包括的な構想は、中国への対立的なアプローチを行うことを拒否しているASEANが推進している構想と一致している。仏インド太平洋戦略は、対立的であり、過剰に軍事的な傾向がある米国の戦略とは大きくかけ離れたものである。最近の貿易紛争の場合のように、フランスは中国から来る脅威の現実について米国に同意するかもしれないが、米国の反応についてはまったくそうではない。
(7)広く定義されているインド太平洋地域に大きな関心をもつ国として、フランスは、この地域の安全保障と安定に新たな貢献をもたらす可能性があることは間違いない。
記事参照:France’s Indo-Pacific strategy: inclusive and principled

12月16日「島嶼国家をめぐるパラダイムシフトとオーストラリアの対応-豪専門家論説」(The Strategist, December 16, 2019)

 12月16日付の豪シンクタンクAustralian Strategic Policy InstituteのウェブサイトThe Strategistは、同シンクタンクフェローであるGraeme Dobellの“Framing the islands: of maps and minds”と題する論説を掲載し、ここでDobellは南太平洋の島嶼国家が太平洋に「点在する島々」から「島々の海」へパラダイムシフトしていくなか、オーストラリアはそれらの島嶼国を自らの付属物と見る立場から脱却し、島嶼国家が何を望むのかを対話を通じて把握する必要があるとして要旨以下のように述べている。
(1) 太平洋の島々を分ける境界はパラダイムシフトのイメージを示すものでもある。それは国連海洋法条約が規定する排他的経済水域200海里がもたらしたと言える。国連海洋法条約は、南太平洋のイメージを「点在する島々」から「島の海」に変える魔法の法となった。南太平洋は小さな島々が作り出す大きな海洋空間となった。「島の海」は南太平洋に関する欧州のイメージに変革を迫るものとなった。19世紀の帝国主義・植民地支配によって、オセアニアの無限の海洋空間に領域の概念が持ち込まれた。歴史の変遷の中で、今日、「島の海」には「ブルーパシフィック」という地域的枠組みが“Our Ocean”という発想に基づくソーシャルネットワークによって構築されつつある。Pacific Islands Forum事務局長のDame Meg Taylorはそのような地域的な枠組みに基づく南太平洋島嶼の政治と法を「グローバリゼーションのための戦略」「地域ガバナンスの構築」「地域政治共同体の構築」「地域外交圏の運営」を通じて太平洋地域主義の「政治的精通と適応性」を目指すものである述べている。
(2)太平洋島嶼国家群は自らの地域アイデンティティを重視しており、時には独自の価値観・規範・慣行を持つ政治的コミュニティとしての立ち位置を示し、グローバルプロセスの在り方を考察している。そのような「島の海」にオーストラリアはどのように関与すべきであろうか。覇権的アプローチは有りえない。感情的にオーストラリアやニュージーランドは南太平洋の島嶼国とは異なるとの思想もあるがオーストラリアもまた地域の国の1つであると考えるべきであろう。太平洋の島嶼国の多くはオーストラリアとニュージーランドに対してかなり寛大な姿勢を示している。太平洋島嶼諸国はオーストラリアとニュージーランドを「兄貴分」と表現し、太平洋島嶼国の利益に反する行動や対話において敬意を表さない態度に対しても家族の一員とみなす傾向がある。太平洋地域主義の将来のために必要なことは、オーストラリアがこの地域を「自らの付属物」とみなす先入観を乗り越えることである。そのような考え方は、オーストラリアがこの地域に抱く深層心理であり、南太平洋が共に発展するための戦略を否定しているのである。集団的太平洋アイデンティティが醸成される中で、オーストラリアが島嶼諸国と対話すべきは、どの程度の統合を望むか、そのためには何を必要としているか、を導き出すことである。
記事参照:Framing the islands: of maps and minds
 

12月17日「2020年の南シナ海はどうなるのか?―シンガポール・インド太平洋専門家論説」(East Asia Forum, December 17, 2019)

 12月17日付の豪 Crawford School of Public Policy at the Australian National Universityのデジタル出版物であるEASTASIAFORUMは、シンガポールのThe S. Rajaratnam School of International Studies(RSIS)の研究員Swee Lean Collin Kohの“A South China Sea cauldron in 2020?”と題する論説を掲載し、ここでKohは2020年の南シナ海の動向に関する予測について、要旨以下のとおり述べている。
(1)2019年の南シナ海における出来事が2020年の動向を示唆するものであったとしたら、それについて楽観的な予測を提供するものはほとんどなかったであろう。2016年には常設仲裁裁判所が南シナ海について裁定を下し、さらに2017年から18年にかけて、南シナ海における行動規範(以下、COCと言う)の策定に向かって前進してきたことから、南シナ海情勢の安定化の兆しがあった。しかし2019年7月と11月の、南沙諸島南部バンガード堆における中国とベトナムの膠着状態は、こうした観測を打ち砕いた。
(2)この問題をめぐっては、関係各国が対話に参加する意図を表明し続けた。こうした対話は、相互の信頼が醸成されたなかで行われるべきであろうが、2019年にそうした雰囲気はなかった。バンガード堆をめぐる膠着が明らかにしたのは、中国が対話を訴えつつも、南シナ海の利害を主張するのに軍事力や威嚇を用いるのに躊躇がないということと、さらに中国政府がその利益の主張を取り下げる可能性がほとんどないということであった。
(3)ベトナムの態度も強硬であった。2019年10月、ベトナムのダラットで第18回中ASEAN高級実務者会合が開催された。そこでベトナムは、バンガード堆におけるベトナムのエネルギー開発関連行動を妨害する中国の行動に強い不快感を表明したのである。これは中国に対してだけではなく、COC交渉の進展の停滞を望まない他のASEAN諸国に対する圧力でもあった。こうしたベトナムの姿勢は、2020年にASEANの議長国となるベトナムがその立場をどう利用するかを示唆するものであり、中国が表明した2021年までにCOCを完成させるという目標の達成を妨げかねないものであった。
(4)香港問題などの国内問題、およびアメリカとの貿易戦争の帰結としての経済的停滞などさまざまな課題を抱える中国は、2020年にはややおとなしくなるかもしれないが、しかし、中国が南シナ海などをめぐって軍事力やそれによる威嚇の利用を完全に停止する可能性は低い。最近の会合で、中国とベトナムは「意見の相違に適切に対処する」ことで合意したが、それは2014年に中国とベトナムが南シナ海で同じように対立して以降繰り返されたフレーズである。さらに中国海軍や中国海警は南シナ海において強力なプレゼンスを維持し、周辺海域において領土的主張をめぐって対立するASEANの国々の行動に警戒を続けている。
(5)COCが完成すれば、バンガード堆の場合のような事故が起こらなくなるという楽観的意見もあり、2020年はCOCをめぐる議論の進展に注目が集まっている。しかし、南シナ海の権利をめぐって関係各国がその利益の主張を取り下げる、あるいは譲歩する可能性が低い限りこの議論が遅滞なく進展することは考えにくい。
(6)域外の国家として、南シナ海をめぐってアメリカが持つ役割は大きい。アメリカはおそらく2020年も「自由の航行作戦(FONOPs)」の実施を継続するであろう。これによって、ASEANも中国も海の自由をめぐって容易に妥協すべきではないと考えるようになるであろう。中国とアメリカの軍事衝突を懸念する声もあろうが、これについてはあまり心配することはないと思われる。ただし、COCをめぐる交渉のスムースな進展については、あまり期待しないほうがいいかもしれない。どの国も議論の遅れを願っているわけではないが、南シナ海におけるそれぞれの利益について妥協できるか否かは、それとは別問題だからである。
記事参照:A South China Sea cauldron in 2020?

12月18日「グローバルな大国と北極圏:協力拡大か、対決か?―シンガポール外交専門家論説」(RSIS Commentary, December 18, 2019)

 12月18日付のシンガポールThe S. Rajaratnam School of International Studies (RSIS)のウェブサイトRSIS Commentaryは、元シンガポール外交官でRSIS客員上級研究員Viji Menonの“Global Powers and the Arctic: Growing Cooperation or Contestation?”と題する論説を掲載し、ここで Menonは、米国以外の北極圏諸国は、国が引き起こす緊張が地球温暖化の解決策を模索することを目的とした平和的協力を激しい競争に変えてしまう可能性が懸念されるとして要旨以下のように述べている。
(1)地球温暖化により、北極圏において商業活動及び軍事活動ができるようになるのと同時に、この地域に多くの開発と投資の可能性が生まれた。しかしまた、大国間の競争の可能性も高まっている。北極圏の国々の間にはそのような競争による緊張により、気候変動の影響に対処する平和的協力が損なわれるかもしれないという懸念がある。
(2)地球温暖化と北極圏の氷がとけることが将来に向けて加速すると予想される。そのため北極圏においてまだ発見されていない多くの石油と天然ガスや北極圏の鉱物の巨大な堆積物を採掘できるようになるだけでなく、大国の競争が起きる可能性もある。長い間北極にほとんど注意を払っていなかった米国は現在、北極におけるロシアと中国の軍事的意図を懸念して、彼らの活動に対抗するために積極的な役割を果たす意欲を示している。しかし、北極はこれまで平和的協力の場であったため、他の北極圏諸国は軍事問題に焦点をあてることに慎重である。
(3)専門家によると、ロシアの北極圏沿岸に沿った航路は特定の時期には既に容易に航行可能であり、ロシアは北極圏沿岸に一連の港を設立していると伝えられている。軍事的には、ソビエト時代に作られ放棄されていた軍事施設の一部を再建し、北極圏の自国領土に新しい施設と飛行場を配置した。中国は、経済力と海軍力の高まりにより、2013年に北極評議会にオブザーバーの地位を獲得して以来、北極圏での活動と関与を増加させてきた。中国は、2018年1月に白書の中で自国の北極戦略を発表し、自国を「北極近傍国家」であるとした。同白書は中国の利益を北極の天然資源の入手及び海上交通路(SLOC)の利用、石油・ガス・鉱物資源・その他の非化石エネルギーの開発、地域の漁業と観光であるとした。中国はそれらの事業を「北極圏の国々と共同で」行うと述べている。企業がインフラストラクチャを構築し、「北極圏シルクロード」を形成する北極海航路への道を開く商用試験航海の実施を奨励することも示した。
(4)米国は、Trump政権の下で北極圏をどのように取り扱うかを考えてきた。米国務長官Mike Pompeoは、2019年5月のフィンランドでの演説で、北極の富を共有することは歓迎したが、ロシアと中国の目的については疑問を呈した。中国に関しては、白書での「北極近傍国家」という主張に疑問を呈し、「米国と北極圏の国々は国家安全保障の野望ではなく経済的利益を反映した透明な中国の投資を歓迎している」と述べた。Pompeo長官はまた、ロシアが冷戦後に閉鎖された軍事基地を再開し、強力な北海艦隊を近代化したと非難した。長官は中国とロシアが北極圏を軍事的な対象としたため、この地域における米国の安全とプレゼンスを強化する必要があると述べた。このスピーチは「中国とロシアが米国の長期的な安全と繁栄への主要な挑戦」であることに焦点を当てた2019年6月公表の米国防総省北極戦略の前触れでもあった。太平洋と同様に、北極海での「航行の自由作戦」も議論されている。米国は最近、北極海での潜水艦の演習にも参加した。
(5)カナダ、スウェーデン、アイスランドなど北極圏の他の主要アクターは北極圏に対する米国のアプローチに批判的である。この地域における米国の関与を歓迎する一方で、彼らは中国に関する米国の懸念を共有しなかったことを示した。カナダは、この地域に積極的に貢献するために、他の北極圏諸国と建設的に協力するという中国の目標を歓迎している。スウェーデンの北極圏担当大使は、中国の「北極圏シルクロード」への投資計画は「非常に歓迎されている」と述べている。ロシアは、北極海航路に沿ったロシアの港湾インフラへの中国の投資に関心を持っている。デンマークはまた、米国のアプローチを支持しておらず、2019年初めのグリーンランドを購入するというTrump大統領の申し出(デンマークによって即座に拒否された)は問題を解決しなかった。グリーンランドはヨーロッパから北米への最短ルートがグリーンランドを経由するため、米国の弾道ミサイル早期警戒システムにとって戦略的に重要である。グリーンランドが米国にとって戦略的に重要であることとは別に、Trump大統領の申し出は「北極圏シルクロード」の一環としてのグリーンランドに対する中国の関心の高まりに対する反応だったという推測がある。ただし、デンマークでは安全保障に関する考慮事項を念頭に置いて米国の出方を注意深く見ている。
(6)北極圏で大国による商業活動と軍事活動が増加するにつれて、この地域で大国の競争が激化する可能性があることは明らかである。気候変動に対するTrump大統領の否定的態度とその悪影響は北極圏に対する米国の政策イニシアチブが過去の冷戦に似た激しい戦略的競争と際限のない論争にこの地域がさらされることを他のプレーヤーに確信させた。他の北極圏諸国は、米国が引き起こすそのような緊張が地球温暖化の解決策を模索し適応することを目的とした平和的協力から関心をそらしてしまう可能性があることを懸念している。
記事参照:Global Powers and the Arctic: Growing Cooperation or Contestation?

12月19日「ロシア企業による南シナ海での共同資源開発―豪専門家論説」(The Strategist, December 19, 2019)

 12月19日付の豪シンクタンクAustralian Strategic Policy InstituteウエブサイトThe Strategistは、同シンクタンク上級アナリストHuong Le Thuと研究インターンSunny Caoの“Russia’s growing interests in the South China Sea”と題する論説を掲載し、ここで両名は、ロシアが南シナ海の領土紛争において存在感を発揮することにより、そこでの国際情勢を複雑にしているとして要旨以下のように述べている。
(1)10月、フィリピンのRodrigo Duterte大統領は、ロシアへの2回目の公式訪問中に、モスクワに拠点を置くエネルギー会社Rosneftにフィリピンが南シナ海で権利主張を行っている海域で石油とガスの調査を行うよう招請した。この提案は、フィリピンの企業にも「ロシアの企業と一緒にロシアの石油とガスを調査する」ことを求めた、在フィリピンロシア大使Igor Khovaevによってやり取りされた。
(2)半国営のRosneftは、南シナ海での経験がないわけではない。2013年頃、Rosneftはベトナム沖のナムコンソン湾のブロック06.1でガス生産と調査の共同プロジェクトの運営担当者であり、2018年から同区域の2つの新しい油井の掘削を含む越排他的経済水域内の天然ガス開発計画を拡大するためベトナムとも協力している。しかし、他の南シナ海の権利主張国に対して中国が圧力を強めている中で、Rosneftの活動は最近北京の注目を集めている。ベトナムの排他的経済水域内にあるブロック06.1も、中国の「九段線」の範囲に含まれる。南シナ海の資源計画に関する北京の方針は、明確で一貫している。「中国政府の許可なしに、国、組織、会社又は個人は、中国の管轄下の海域で石油及びガスの調査、そして開発活動を実施することはできない」が、継続的な警告にもかかわらずRosneftはその活動を停止していない。
(3)南シナ海におけるロシアの存在は、競合する領土主張をめぐる中国とその近隣諸国との間の現在進行中の紛争を複雑にしている。ロシアは領土紛争に関与したり、いずれかの当事国の側についたりするつもりはないと述べている。中ロ関係はここしばらく良好になっており、今年すでにモスクワと北京は「協調的な包括的戦略パートナーシップ」に彼らの関係を格上げした。
(4)ロシアはまた、戦略的にも軍事的にも、ベトナムにとって重要な長期防衛パートナーである。両国は、2018年から2020年にかけて防衛協力協定を締結し、2019年から2023年に防衛協力を強化することに合意した。ロシアとベトナムはまた2012年に二国間関係を包括的な戦略パートナーシップに引き上げてもいる。ベトナムは、南シナ海における中国の活動に一貫して強く反対している唯一の権利主張国である。米国からの外交声明以外に、ハノイには同志であるASEAN諸国やより大きな国際社会からの支援がほとんどなく、北京による海洋権利の主張に対し単独で戦っているように見える。しかし、モスクワは領土紛争に関与しないという主張にもかかわらず、Rosneftを通じてベトナムと協力し続けることにより、ハノイへの支持を表明している。Rosneftが中国の強制の試みによっても引き止められないままであれば、他の国際商業石油会社が、紛争が多く存在するこの海域で共同事業に携わるための前例を作るかもしれない。
(5)Rosneftとのベトナムの共同計画に対する中国の反応は、この紛争海域における他の外国企業の関与に対する反応よりも攻撃的ではない。北京は、2017年と2018年にスペイン企業Repsolとの資源掘削プロジェクトを打ち切るようハノイに圧力をかけ、報道によると、もし調査が継続されれば、南沙諸島のベトナムの基地を攻撃すると脅迫した。中国は、Rosneftにその活動について警告しているが、報復するという脅しを行っていない。
(6)フィリピンがロシアと共同で資源調査を実施する場合、この領土紛争はさらに複雑さの度合いを深くすることになる。
記事参照:Russia’s growing interests in the South China Sea

12月19日「中国空母『山東』、『遼寧』との戦闘群編成か:台湾介入の外国部隊阻止が狙い-香港紙報道」(South China Morning Post, December 19, 2019)

 12月19日付の香港日刊英字紙South China Morning Post電子版は、“China’s aircraft carriers tipped to team up to target foreign forces aiding Taiwan”と題する記事を掲載し、中国は最新の国産空母「山東」と空母「遼寧」をもって戦闘群を編成、台湾有事に際して、介入してくる日米部隊を阻止することを狙っているとして要旨以下のように報じている。
(1)軍事雑誌や国防問題専門家によれば、中国の新空母「山東」は、戦時に台湾に接近しようとする外国軍を阻止するため僚艦「遼寧」と空母2隻を根幹とする戦闘群を形成するようである。独立を目指す台湾国軍を米国、あるいは日本の艦艇が援助に向かうのであれば、それら艦艇が台湾に到達するのを阻止するためにより強力な連携を生み出すよう、12月17日に就役した「山東」は単独で戦う代わりに「遼寧」と共同することになるだろうと同日『艦船知識』は報じている。
(2)「戦闘群の航空機の他の主要な任務はグァムを発進した米国の長距離爆撃機を阻止することである。これは米爆撃機が人民解放軍の上陸輸送部隊と潜水艦を目標とすることを阻止するためである」と『艦船知識』はいう。
(3)軍事専門家宋忠平は空母2隻を根幹とする戦闘群は人民解放軍がその作戦範囲を中国本土沿岸から台湾周辺海空域までの拡大を助けることになると指摘し、「台湾に接近する日米の部隊を阻止することは人民解放軍の主任務である。しかし、海空域において優勢を獲得するためには空母2隻の戦闘群だけでなく、戦略ロケット軍、水陸両用戦部隊、その他の軍種のような異なる戦闘部隊間の統合作戦について調整する必要がある」と述べている。
(4)宋忠平は、空母2隻を根幹とする戦闘群は人民解放軍に「より大きな盾」を提供し、人民解放軍が台湾に介入しようとする外国艦隊の排除を可能にするということに同意している。「しかし、空母2隻を根幹とする戦闘群は純粋に防衛的編成であり、地域の他国を攻撃するのには十分な打撃力ではない。特に米空母打撃群に対処する場合にはそうである」と宋忠平は言う。
(5)12月18日付の中国共産党機関紙人民日報に掲載された論説によれば、「山東」は台湾に加え、南シナ海の係争中の海域にも焦点を当てている。「『山東』空母戦闘群は南シナ海に派遣されることになろう。同部隊は外国艦艇と直接対峙する可能性が高い。『山東』は海空両域の支配を支配できるよう設計されている」と人民日報は報じている。空母2隻を根幹とする戦闘群はまた、人民解放軍が南シナ海における軍事的優勢を獲得するのを助けることになるだろうと宋忠平は述べている。
記事参照:China’s aircraft carriers tipped to team up to target foreign forces aiding Taiwan

【補遺】

旬報で抄訳紹介しなかった主な論調、シンクタンク報告書
(1) India must negotiate growing Chinese presence in Indo-Pacific region
https://indianexpress.com/article/opinion/columns/navigating-the-indo-pacific-6170525/
The Indian Express, December 17, 2019
Sujan R Chinoy, a former India’s ambassador to Japan and currently director general, Institute for Defence Studies and Analyses (IDSA), New Delhi
 12月17日、元駐日インド大使のSujan R Chinoyは、印日刊英字紙The Indian Express電子版に“India must negotiate growing Chinese presence in Indo-Pacific region”と題する論説を寄稿した。ここでChinoyは、①インドは中国のプレゼンスへの対抗として、米国や日本、その他のパートナーのインド洋地域でのプレゼンスを歓迎している、②インド太平洋の新たな構築の文脈には多くの矛盾があり、たとえば米国は国連海洋法条約を批准せずにその教義の多くを順守し、逆に中国は順守するよりも違反する方が多く、そして、米国はそのような同条約の教義に関して友好国にも敵にも同様に厳しい、③貿易と投資を通して中国と米国ほど相互に結びついているライバル国はなく、また、他のすべての国が米中両国との関係の網に結びついていることは今までなかったことである、④国家主義及び地域主義が高まり、多国間協調主義が低下してパワーの多極化が増大しており、分散によるリスク回避と多重の連携はすべての国にとって(対外行動あるいは外交政策の)ツールキットの一部である、⑤中国は、インド太平洋地域と4カ国安全保障対話(以下、the Quadと言う)の両方が中国の台頭を封じ込めるための米国の策略であるという疑いを抱いている、⑥しかし、ASEANの中心性は一帯一路と南シナ海行動規範草案を通じて好ましい結果を形成するためにASEAN諸国に圧力をかける好機でもあるため、中国の研究者や当局者は静観の構えを取り始めている、⑦インドは、どんな問題であっても中国との関係をうまく処理しなければならない。一方で日本との関係は安定したインド太平洋へのインドの構想の主要な要素であり、そして「アクト・イースト政策」(Act East Policy)の要石である、⑧インドは、この時点ではインド太平洋においてASEANの中心性を備えた開発中心の計画とthe Quadを中心に展開する安全保障の展望の間で二者択一をする必要はない。近い将来において両方ともある程度の重複を伴う平行の軌道のままになる可能性が高い、などの主張を述べている。
 
(2) Japan’s Indo-Pacific Strategy: Shaping a Hybrid Regional Order
https://warontherocks.com/2019/12/japans-indo-pacific-strategy-shaping-a-hybrid-regional-order/
War on The Rocks.com, December 19, 2019
Celine Pajon, Head of Japan Research at the Center for Asian Studies of the French Institute of International Relations (IFRI), Paris
 12月19日、French Institute of International RelationsのCeline Pajon日本研究部長は、米University of Texasのデジタル出版物であるWar on the Rockに“Japan’s Indo-Pacific Strategy: Shaping a Hybrid Regional Order ”と題する論説記事を発表した。ここでPajonは日本のインド太平洋戦略を取り上げ、日本は地政学的に中国を牽制しつつ、経済関与を深めていることから、第三者的には相反する目標を追求しているように見えるため、日本の真意を見極めるのは難しいと前置きしながら、インド太平洋における日本のアプローチは、最終的には良好な地域環境を形成し、外交・安全保障上の選択肢を拡大することによって戦略的な自立性を確保することを目指していると解説している。日本のインド太平洋アプローチは、自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)、ASEAN主導のメガFTAや地域機関への支援など重層的であるが、それはインド太平洋における将来のハイブリッドな地域秩序のプレビューを多くの点で提供するものであり、中米両大国の二極化が進む中、多様化した協力体制へと発展する可能性が高いと好意的に評している。
 
(3) The Role of the Arctic in Chinese Naval Strategy
https://jamestown.org/program/the-role-of-the-arctic-in-chinese-naval-strategy/
China Brief, The Jamestown Foundation, December 20, 2019
Ryan D. Martinson, a researcher in the China Maritime Studies Institute at the Naval War College
 12月20日、米Naval War College,China Maritime Studies Institute研究員 Ryan D. Martinsonは、米The Jamestown FoundationのウェブサイトChina Briefに“The Role of the Arctic in Chinese Naval Strategy”と題する論説を発表した。ここでMartinsonは、12月10日付けでChina Briefに掲載されたAnne-Marie Bradyの中国が北極地域に軍事力を展開する見通しに関する考察について、米国防総省が中国は北極における海軍行動の基礎を築いているかもしれないと主張する際の重要な文脈を提供するものと評価した上で、中国海軍は北極への野望を海軍戦略に組み込むことを正式に決定し、中国の科学者や技術者はすでにその野望を実現するための研究を行っており、これらの努力は今後数年間で加速されるはずだと指摘している。