2015年
事業
事業実施者 | オックスフォード大学 学際的地域研究センター(英国) | 年数 | 2年継続事業の2年目(2/2) |
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形態 | 自主助成委託その他 | 事業費 | 18,500,000円 |
【講演内容】
マラーンルー氏は、中東のジェンダー、人権、イスラム法を専門としており、「イランにおける司法へのアクセスと女性参加」をテーマに発表を行いました。イランにおいて女性はどのように司法アクセスを捉えているのか、という問題意識を提示し、2008年から2012年にかけてマラーンルー氏自らが行ったイラン人女性へのインタビュー調査の結果を報告しました。そこでは、女性は自らの権利とは何かを理解しているものの、その権利が侵された時にどのように司法制度を利用すれば良いのか知らないことが分かったと述べました。また、イラン社会では、女性が提訴すべきでないという伝統的、文化的風習があることも、司法によって女性の権利が保護されていない原因だと指摘しました。
細谷氏は、イランの生命倫理学を専門としており、「イランにおける遺伝性疾患の予防をめぐる倫理的議論:障害者の人権の視点から」というテーマに、イランなど中東諸国で患者が多いサラセミア(地中海貧血)という遺伝子疾患病の予防政策について発表しました。細谷氏は、障害者の権利について、イランを含む中・低開発国では稀少医療資源を誰に投資するかという問題が生じ、自由や平等など先進国で議論されることが多い障害者の倫理的な権利を考慮する余裕がないと述べました。また、人工妊娠中絶も対策方法の一つだが、イランの法律では人工妊娠中絶の規定が非常に限定的で、障害を持って生まれてくる子供のことが考えられていないという問題も指摘しました。しかし近年、サラセミア患者団体が、患者同士の交流活動、予防政策のための教育活動を実施し、遺伝子疾患を持つ人が「病気は人生の終わりじゃない」というメッセージを発信しつつあるという新たな遺伝子疾患対策の可能性についても言及しました。